87 / 92
第五章 領地の拡大
第87話 失言貴族ウッカリーノ男爵(五章最終話)
しおりを挟む
二人の王都貴族が、俺に近づいてきた。
二人とも仕立ての良い貴族服を身にまとい、歩く姿もどことなく洒落ている。
一人は癖のある黒髪に口髭を生やした優しそうな中年男性。
もう一人は、金髪をおかっぱにした若い男性だ。
二人ともすらっとしていて、立ち姿すら洗練された雰囲気を醸し出している。
口髭の中年貴族が、社交的な笑みを浮かべながら俺に挨拶した。
「エトワール伯爵。初めてお目にかかります。私は、ブッフォン男爵と申します。普段は王都に住んでおりますが、今は南部に足を伸ばしております」
「ブッフォン男爵。丁寧なご挨拶ありがとうございます。以後よしなに」
ブッフォン男爵の紳士的な挨拶に、俺も紳士的に挨拶を返す。
続いて若い金髪オカッパ貴族が口を開いた。
「やー! エトワール伯爵! 王都で噂になっていた人物ですね! へえ、没落したと聞いていたけど、元気なんですね! あっ! 僕はウッカリーノ男爵です。よろしく!」
「……」
なんか、今、スゴイ失礼なことを言われた気がする。
えっと、没落したとか言っていた?
えっ? ケンカを売られたのか?
俺はウッカリーノ男爵をマジマジと見た。
だが、ウッカリーノ男爵は悪びれることなく、ニコニコ笑いながらワインをグビリと飲んでいる。
「いやあ、南部なんて田舎だから碌なものがないと思っていたのですが、ワインは美味しいし、食べ物も旨い! 田舎も捨てたものじゃないですね!」
「……」
えっと?
田舎と連発したよね?
南部を敵に回したいのかな?
プロレスでいうと、ゴングが鳴る前に殴られて、場外に放り出された感じなんだが……。
周りの南部貴族の面々もポカンとしている。
言われるはずのない悪口を言われたので、頭が追いつかないのだ。
ウッカリーノ男爵の隣にいるブッフォン男爵が額に手をあてて深くため息をついた。
「エトワール伯爵。ご同席の南部貴族の皆さん。誠に申し訳ない。ウッカリーノ男爵に悪気はないのですが……、口を滑らせる癖がありまして……」
「あ……、ああ! 失言が多い方なんですね? いますよね~、そういう方も~。ハハハ!」
俺はとっさにブッフォン男爵のフォローに乗っかる。
これは俺が主催した祝賀会だ。
ヘンテコな失言癖のある王都貴族にぶち壊されてはたまらない。
俺がブッフォン男爵のフォローに乗ったことで、周りの南部貴族も『まあ、しょうがないか……』、『いるよな。そういうヤツ』、『仕方ねえな……』という雰囲気になってきた。
フォロー役のブッフォン男爵が、さらに取りなす。
「ウッカリーノ男爵は、最近お父上の跡を継いだばかりでして、こういう場に慣れていないのです」
「まあ、そういうことでしたら仕方ないですね。私も父の後を急に継いで大変でしたから――」
「ああ! それそれ! お父上はギャンブル狂いで身を持ち崩したのでしょう? バカな貴族がいると噂になってましたよ! いや~エトワール伯爵もご苦労されてますね!」
俺とブッフォン男爵が何とか場を取り繕うべく二人で軌道修正を図っていると、ウッカリーノ男爵がぶち壊した。
――場が凍った。
ウッカリーノ男爵は、主催者の俺に思い切り恥をかかせたのだ。
誰も言葉を発さない中、ウッカリーノ男爵が景気良くワインを飲む音だけが場に響いた。
さすがに俺も気分が悪い……。
フォー辺境伯が、ため息をついてボソリとつぶやく。
「普通、言わないだろう……」
まあ、言わないよな。
失言癖のある人は、確かにいる。
このウッカリーノ男爵は極めつけだな。
俺は冷静になろうと、オレンジジュースに手を伸ばした。
爽やかな甘さが口の中に広がる。
少し気持ちが落ち着いてきたぞ。
考えてみると……、ウッカリーノ男爵の言葉には気になることがあった。
『没落した』
『噂になっていた』
王都の貴族社会で、我がエトワール伯爵家は、どのように思われているのだろうか?
これから南部では、あちこちで道普請が行われる。
道路事情が良くなるのだ。
王都から沢山商人がやって来るだろう。
その時に、我がエトワール伯爵家の王都での評判が悪かったらどうだろうか?
エトワールグラスや高級家具の売れ行きが悪くなるかもしれない。
南部では『エトワール製』がブランドとして定着しつつある。
このブランド力を王都周辺の商圏に広げたい。
王都でエトワール伯爵家がどのような評判なのか?
俺は知っておくべきだ。
思考を進めるうちに、俺はすっかり冷静さを取り戻した。
場を取り繕うのは止めて、この失言貴族ウッカリーノ男爵にしゃべらせよう。
俺は情報を得るべく、ウッカリーノ男爵に話を振る。
「最近の王都はいかがですか?」
失言貴族ウッカリーノ男爵にしゃべらせまいと、ブッフォン男爵がズイッと前に出て話そうとする。
「そうですな。治安は良く、大変過ごしやすいです。国王陛下と宰相閣下のご威光――」
「ぶはは! ブッフォン男爵! 国王陛下と宰相閣下は、エトワール伯爵を追い出した張本人じゃないですか!」
無敵だな、ウッカリーノ男爵。
ブッフォン男爵は額に手をあて苦り切った顔をしている。
まあ、ブッフォン男爵としては、口を手で塞いで黙らせたいだろうな。
だが、俺はウッカリーノ男爵の話を聞きたいぞ!
ウッカリーノ男爵は、べらべらと話し出した。
「国王陛下といえば面白い話があるのですよ。ほら、エトワール伯爵が王都から追い出されたでしょう? 次の日、ある貴族が王宮を訪れ国王陛下と面会したのですよ。すると……プププ!」
ぶっ込んで来たな。コイツ!
俺は何のことか察しがついたが、周りは何のことがわからない。
ブッフォン男爵が、真っ青になってウッカリーノ男爵を止めようとしている。
「ウッカリーノ男爵! 口を慎みたまえ!」
「いいじゃないですか。ここは王都から離れた南部の果てですよ? 国王陛下のお耳には入りませんよ」
俺は、止めようとするブッフォン男爵を無視して、ウッカリーノ男爵に先を促す。
「それで何があったのですか?」
「貴族が面会しようと部屋に入ると……何と! 黄金の玉座が、黄金の便座に変わっていたのですよ! 国王陛下が黄金の便座に座ってふんぞり返っていたのです! ブハハハ!」
「なるほど。なんとも不思議な事件があったものですね!」
俺はしれっと相づちを打つ。
まあ、犯人は俺だが。
しかし、黄金の便座に座ったのかよ。
周りの南部貴族は、エールを片手に馬鹿笑いだ。
自分の話がウケたことで、ウッカリーノ男爵は得意顔。
気の毒なのは、抑え役に回ろうとしているブッフォン男爵だ。
「ウッカリーノ男爵! 不敬ですよ! みなさん、この話は聞かなかったことにして下さい! いいですね! みなさんは、何も聞いていないのです!」
ブッフォン男爵は必死である。
ちょっと気の毒だな。
話題を変えてやろう。
「ウッカリーノ男爵は、どちらの派閥に所属しているのですか? 国王陛下とは立場を異にする派閥ですか?」
「いえいえ! 私の家はバリバリの国王派ですよ! でも、不思議なんですよね……。私が爵位を継いだら役職がなくなってしまって……。国王派なんですから、優遇してくれても良いと思うんですよね……」
ウッカリーノ男爵は、非常に悲しそうな顔をしてフルフルと首を振っているが……。
どうせ失言して役職を外されたんだろう!
失言に怒り、プルプルしている国王が目に浮かぶようだ。
そう考えると、ウッカリーノ男爵がイイ奴に思えてきた。
こいつを王宮に返り咲かせて、国王と宰相をイライラさせたら楽しいだろうな。
うん、ナイスアイデアだな!
「それで、ウッカリーノ男爵。我がエトワール伯爵家は、王都ではどのような評判なのでしょうか? 追放されたとか、没落したとか噂されているのでしょうか?」
「ええ。先代のご当主がギャンブル狂いで身を滅ぼし、幼い息子と娘は南部に追放された没落貴族だと噂されていますね。南部で野垂れ死ぬだろうと嘲笑されてますよ」
ハッキリ言うな。
俺は苦笑いで済ませている。
だが、俺が叙爵した準騎士爵たちが殺気を放ち始めた。
俺は片手を上げて、準騎士爵たちを抑える。
「なるほど。大変不名誉な噂ですね」
「ええ。でも、噂の出所は王宮らしいです。国王陛下と宰相閣下がおっしゃっていたのを宮廷に出仕する貴族が聞いて、社交界で噂が広まったようですね」
「ほほう……」
状況から考えると、我がエトワール伯爵家の評判が悪いのは、国王と宰相の情報操作かもしれない。
領地を没収されたのは、エトワール伯爵家の自業自得。
醜聞があったにも関わらず国王と宰相は代替地を与えた。
だが、不幸にして代替地の南部で幼い兄弟は死亡した。
ふむ。ヤツらの筋書きは、こんなところだろう。
噂を流すことで、自分の行いを正当化しようとしたな。
俺は、はらわたが煮えくり返ったが、ニッコリと社交的な笑みで本心を隠した。
「いやあ、大変良いお話を伺えました。ところで、ブッフォン男爵とウッカリーノ男爵にうかがいますが、我がエトワール伯爵領にいらしてみて印象はどうですか?」
青い顔をして黙っていたブッフォン男爵が、ここぞとばかりヨイショし始めた。
「いや、驚きました! 魔の森が広がる無人の土地と聞きましたが、見事開拓に成功されましたな! このブッフォン、感服いたしました!」
「ブッフォン男爵ありがとうございます。ちなみにブッフォン男爵は、国王派ですか?」
「私は中立派です。男爵など宮廷では下の階層ですから……」
「なるほど」
中立派というのがあるのだな。
ブッフォン男爵とは、つながりを持っておこう。
「ウッカリーノ男爵はいかがですか? エトワール伯爵領の印象をお聞かせ下さい」
「いやあ、良いところですよ! 食事は美味しいし、屋敷や調度品も大変良いご趣味です! 私も王都の屋敷に一点欲しいですな。あ、今は経済的にちょっと無理ですが。まあ、役職を得たら購入しますよ」
よし。この男は失言をするが、ウソは言わない。
エトワール伯爵領に好感を持ったのは事実だろう。
二人とも利用出来るな。
部屋の隅に控えていた執事のセバスチャンを呼ぶ。
「セバスチャン。ブッフォン男爵とウッカリーノ男爵に、一千万リーブルずつ礼金をお渡ししなさい」
「いっ!? 一千万リーブルでございますか!?」
「そうだ。お二方には大変興味深いお話をうかがった。お礼をしよう」
俺の申し出に失言王ウッカリーノ男爵が喜色を露わにする。
一方、年上のブッフォン男爵は、さすがに察しが良い。
ただ話しただけで一千万リーブルをもらえるわけがないとわかっている。
俺は優しい声で二人に仕事を依頼する。
「お二方にお願いがあるのです。王都にお帰りになったら、社交界で我がエトワール伯爵家の様子をお話しいただきたいのです。我が家の不名誉な噂が王都で飛び交っているのは困るのです」
「おお! そんなことならお安いご用ですよ! エトワール伯爵は元気! エトワール伯爵家は良いところだったと話しておきますよ!」
失言王ウッカリーノ男爵が請け負う。
軽いな。だが、扱いやすい。
一方、ブッフォン男爵は慎重に考えている。
「まあ、知り合いと話した時に、旅の様子を伝える範囲であれば……」
「それで結構です」
不自然に噂をばらまく必要はない。
失言王ウッカリーノ男爵がラウドスピーカーになって、大声で『エトワール伯爵家サイコー! 僕は一千万リーブルもらいましたー!』と騒ぎ立ててくれるだろう。
そして、落ち着いた雰囲気のブッフォン男爵が、ウッカリーノ男爵の言葉を裏付けることで信憑性が増す。
俺はさらに手を進める。
「ウッカリーノ男爵は国王派なのですから、何か王宮でお役職を得られると良いですね」
「エトワール伯爵もそう思いますか? まったくねえ。何で僕のように優秀な男が無役なんですかねぇ~」
失言するからだろう!
俺は心の中でツッコミを入れながら、顔に社交的な笑みを浮かべる。
「誰か影響力のある人物はいないのですか? その……お金を積めば、役職を斡旋してくれそうな人は……」
「それならジェニー伯爵ですね。あの人はワイロが大好きですから」
ジェニー伯爵ね。
ワイロなんてけしからんが、工作をする時は便利だ。
金さえ払えばやってくれるのだから。
「では、ジェニー伯爵に私から何か送っておきましょう。優秀なウッカリーノ男爵に何かお役職をと頼んでおきますよ」
「本当ですか!? エトワール伯爵! ありがとうございます!」
ブッフォン男爵は、ウッカリーノ男爵を微妙な目で見ている。
そりゃ、俺が何か企んでいるのはバレバレだよな。
ウッカリーノ男爵は喜んで離れていった。
ブッフォン男爵は、ジトッと俺を見て『ほどほどにして下さいよ』と小声で注意して離れていった。
俺は、失言王ウッカリーノ男爵を王宮に送り込んで、国王と宰相をイライラさせたいのだ。
ウッカリーノ男爵が失言して、国王と宰相がムキーっとなる姿を想像すると、心が晴れ晴れする。
黙って成り行きを見ていたジロンド子爵とフォー辺境伯が俺を囲む。
「エトワール伯爵。大丈夫なのか? あんなのに一千万も持たせて……」
「そうだぞ! それに王宮に送り込むなんて何を考えているんだ? もうちょっと気の利いたヤツがいるだろう」
俺は唐揚げをポイッと口に放り込む。
「南部の道路事情が整えば、南部と王都が直結されます。王都も我々の商圏になるのですよ。だから、エトワール伯爵家の悪い噂は払拭しなくてはなりません。一千万リーブルは、必要経費と割り切ります」
「むっ……確かに……」
「思い切ったな。じゃあ、ウッカリーノ男爵の野郎を王宮に送り込むのは?」
「あの人は良くも悪くも裏表がありません。王宮で見た物を、そのまま教えてくれますよ。それこそ国王や宰相が黙っていろと言っても『いや~黙っていろって、口止めされたんですけどね~』とか言ってポロリと失言するでしょう」
俺がウッカリーノ男爵の真似をすると二人は吹き出した。
「ふふ。確かにそうだね。なるほど、あんなヤツだからこそ使えるというわけか!」
「傑作だな! 国王陛下も宰相閣下も手を焼くだろうよ!」
「いやあー、大変でしょうねー」
俺は棒読みで返事をした。
今後は領地を開拓しつつ、南部諸侯と付き合い、王都の動静に目を配らなければならない。
なかなかに大変そうだ。
俺は居住まいを正して、二人の先輩貴族に対した。
「ジロンド子爵、フォー辺境伯。これからは王都との付き合いが増えると思います。どうかご支援をよろしくお願します」
「気軽に頼ってくれ!」
「一緒に儲けようぜ!」
二人とも仕立ての良い貴族服を身にまとい、歩く姿もどことなく洒落ている。
一人は癖のある黒髪に口髭を生やした優しそうな中年男性。
もう一人は、金髪をおかっぱにした若い男性だ。
二人ともすらっとしていて、立ち姿すら洗練された雰囲気を醸し出している。
口髭の中年貴族が、社交的な笑みを浮かべながら俺に挨拶した。
「エトワール伯爵。初めてお目にかかります。私は、ブッフォン男爵と申します。普段は王都に住んでおりますが、今は南部に足を伸ばしております」
「ブッフォン男爵。丁寧なご挨拶ありがとうございます。以後よしなに」
ブッフォン男爵の紳士的な挨拶に、俺も紳士的に挨拶を返す。
続いて若い金髪オカッパ貴族が口を開いた。
「やー! エトワール伯爵! 王都で噂になっていた人物ですね! へえ、没落したと聞いていたけど、元気なんですね! あっ! 僕はウッカリーノ男爵です。よろしく!」
「……」
なんか、今、スゴイ失礼なことを言われた気がする。
えっと、没落したとか言っていた?
えっ? ケンカを売られたのか?
俺はウッカリーノ男爵をマジマジと見た。
だが、ウッカリーノ男爵は悪びれることなく、ニコニコ笑いながらワインをグビリと飲んでいる。
「いやあ、南部なんて田舎だから碌なものがないと思っていたのですが、ワインは美味しいし、食べ物も旨い! 田舎も捨てたものじゃないですね!」
「……」
えっと?
田舎と連発したよね?
南部を敵に回したいのかな?
プロレスでいうと、ゴングが鳴る前に殴られて、場外に放り出された感じなんだが……。
周りの南部貴族の面々もポカンとしている。
言われるはずのない悪口を言われたので、頭が追いつかないのだ。
ウッカリーノ男爵の隣にいるブッフォン男爵が額に手をあてて深くため息をついた。
「エトワール伯爵。ご同席の南部貴族の皆さん。誠に申し訳ない。ウッカリーノ男爵に悪気はないのですが……、口を滑らせる癖がありまして……」
「あ……、ああ! 失言が多い方なんですね? いますよね~、そういう方も~。ハハハ!」
俺はとっさにブッフォン男爵のフォローに乗っかる。
これは俺が主催した祝賀会だ。
ヘンテコな失言癖のある王都貴族にぶち壊されてはたまらない。
俺がブッフォン男爵のフォローに乗ったことで、周りの南部貴族も『まあ、しょうがないか……』、『いるよな。そういうヤツ』、『仕方ねえな……』という雰囲気になってきた。
フォロー役のブッフォン男爵が、さらに取りなす。
「ウッカリーノ男爵は、最近お父上の跡を継いだばかりでして、こういう場に慣れていないのです」
「まあ、そういうことでしたら仕方ないですね。私も父の後を急に継いで大変でしたから――」
「ああ! それそれ! お父上はギャンブル狂いで身を持ち崩したのでしょう? バカな貴族がいると噂になってましたよ! いや~エトワール伯爵もご苦労されてますね!」
俺とブッフォン男爵が何とか場を取り繕うべく二人で軌道修正を図っていると、ウッカリーノ男爵がぶち壊した。
――場が凍った。
ウッカリーノ男爵は、主催者の俺に思い切り恥をかかせたのだ。
誰も言葉を発さない中、ウッカリーノ男爵が景気良くワインを飲む音だけが場に響いた。
さすがに俺も気分が悪い……。
フォー辺境伯が、ため息をついてボソリとつぶやく。
「普通、言わないだろう……」
まあ、言わないよな。
失言癖のある人は、確かにいる。
このウッカリーノ男爵は極めつけだな。
俺は冷静になろうと、オレンジジュースに手を伸ばした。
爽やかな甘さが口の中に広がる。
少し気持ちが落ち着いてきたぞ。
考えてみると……、ウッカリーノ男爵の言葉には気になることがあった。
『没落した』
『噂になっていた』
王都の貴族社会で、我がエトワール伯爵家は、どのように思われているのだろうか?
これから南部では、あちこちで道普請が行われる。
道路事情が良くなるのだ。
王都から沢山商人がやって来るだろう。
その時に、我がエトワール伯爵家の王都での評判が悪かったらどうだろうか?
エトワールグラスや高級家具の売れ行きが悪くなるかもしれない。
南部では『エトワール製』がブランドとして定着しつつある。
このブランド力を王都周辺の商圏に広げたい。
王都でエトワール伯爵家がどのような評判なのか?
俺は知っておくべきだ。
思考を進めるうちに、俺はすっかり冷静さを取り戻した。
場を取り繕うのは止めて、この失言貴族ウッカリーノ男爵にしゃべらせよう。
俺は情報を得るべく、ウッカリーノ男爵に話を振る。
「最近の王都はいかがですか?」
失言貴族ウッカリーノ男爵にしゃべらせまいと、ブッフォン男爵がズイッと前に出て話そうとする。
「そうですな。治安は良く、大変過ごしやすいです。国王陛下と宰相閣下のご威光――」
「ぶはは! ブッフォン男爵! 国王陛下と宰相閣下は、エトワール伯爵を追い出した張本人じゃないですか!」
無敵だな、ウッカリーノ男爵。
ブッフォン男爵は額に手をあて苦り切った顔をしている。
まあ、ブッフォン男爵としては、口を手で塞いで黙らせたいだろうな。
だが、俺はウッカリーノ男爵の話を聞きたいぞ!
ウッカリーノ男爵は、べらべらと話し出した。
「国王陛下といえば面白い話があるのですよ。ほら、エトワール伯爵が王都から追い出されたでしょう? 次の日、ある貴族が王宮を訪れ国王陛下と面会したのですよ。すると……プププ!」
ぶっ込んで来たな。コイツ!
俺は何のことか察しがついたが、周りは何のことがわからない。
ブッフォン男爵が、真っ青になってウッカリーノ男爵を止めようとしている。
「ウッカリーノ男爵! 口を慎みたまえ!」
「いいじゃないですか。ここは王都から離れた南部の果てですよ? 国王陛下のお耳には入りませんよ」
俺は、止めようとするブッフォン男爵を無視して、ウッカリーノ男爵に先を促す。
「それで何があったのですか?」
「貴族が面会しようと部屋に入ると……何と! 黄金の玉座が、黄金の便座に変わっていたのですよ! 国王陛下が黄金の便座に座ってふんぞり返っていたのです! ブハハハ!」
「なるほど。なんとも不思議な事件があったものですね!」
俺はしれっと相づちを打つ。
まあ、犯人は俺だが。
しかし、黄金の便座に座ったのかよ。
周りの南部貴族は、エールを片手に馬鹿笑いだ。
自分の話がウケたことで、ウッカリーノ男爵は得意顔。
気の毒なのは、抑え役に回ろうとしているブッフォン男爵だ。
「ウッカリーノ男爵! 不敬ですよ! みなさん、この話は聞かなかったことにして下さい! いいですね! みなさんは、何も聞いていないのです!」
ブッフォン男爵は必死である。
ちょっと気の毒だな。
話題を変えてやろう。
「ウッカリーノ男爵は、どちらの派閥に所属しているのですか? 国王陛下とは立場を異にする派閥ですか?」
「いえいえ! 私の家はバリバリの国王派ですよ! でも、不思議なんですよね……。私が爵位を継いだら役職がなくなってしまって……。国王派なんですから、優遇してくれても良いと思うんですよね……」
ウッカリーノ男爵は、非常に悲しそうな顔をしてフルフルと首を振っているが……。
どうせ失言して役職を外されたんだろう!
失言に怒り、プルプルしている国王が目に浮かぶようだ。
そう考えると、ウッカリーノ男爵がイイ奴に思えてきた。
こいつを王宮に返り咲かせて、国王と宰相をイライラさせたら楽しいだろうな。
うん、ナイスアイデアだな!
「それで、ウッカリーノ男爵。我がエトワール伯爵家は、王都ではどのような評判なのでしょうか? 追放されたとか、没落したとか噂されているのでしょうか?」
「ええ。先代のご当主がギャンブル狂いで身を滅ぼし、幼い息子と娘は南部に追放された没落貴族だと噂されていますね。南部で野垂れ死ぬだろうと嘲笑されてますよ」
ハッキリ言うな。
俺は苦笑いで済ませている。
だが、俺が叙爵した準騎士爵たちが殺気を放ち始めた。
俺は片手を上げて、準騎士爵たちを抑える。
「なるほど。大変不名誉な噂ですね」
「ええ。でも、噂の出所は王宮らしいです。国王陛下と宰相閣下がおっしゃっていたのを宮廷に出仕する貴族が聞いて、社交界で噂が広まったようですね」
「ほほう……」
状況から考えると、我がエトワール伯爵家の評判が悪いのは、国王と宰相の情報操作かもしれない。
領地を没収されたのは、エトワール伯爵家の自業自得。
醜聞があったにも関わらず国王と宰相は代替地を与えた。
だが、不幸にして代替地の南部で幼い兄弟は死亡した。
ふむ。ヤツらの筋書きは、こんなところだろう。
噂を流すことで、自分の行いを正当化しようとしたな。
俺は、はらわたが煮えくり返ったが、ニッコリと社交的な笑みで本心を隠した。
「いやあ、大変良いお話を伺えました。ところで、ブッフォン男爵とウッカリーノ男爵にうかがいますが、我がエトワール伯爵領にいらしてみて印象はどうですか?」
青い顔をして黙っていたブッフォン男爵が、ここぞとばかりヨイショし始めた。
「いや、驚きました! 魔の森が広がる無人の土地と聞きましたが、見事開拓に成功されましたな! このブッフォン、感服いたしました!」
「ブッフォン男爵ありがとうございます。ちなみにブッフォン男爵は、国王派ですか?」
「私は中立派です。男爵など宮廷では下の階層ですから……」
「なるほど」
中立派というのがあるのだな。
ブッフォン男爵とは、つながりを持っておこう。
「ウッカリーノ男爵はいかがですか? エトワール伯爵領の印象をお聞かせ下さい」
「いやあ、良いところですよ! 食事は美味しいし、屋敷や調度品も大変良いご趣味です! 私も王都の屋敷に一点欲しいですな。あ、今は経済的にちょっと無理ですが。まあ、役職を得たら購入しますよ」
よし。この男は失言をするが、ウソは言わない。
エトワール伯爵領に好感を持ったのは事実だろう。
二人とも利用出来るな。
部屋の隅に控えていた執事のセバスチャンを呼ぶ。
「セバスチャン。ブッフォン男爵とウッカリーノ男爵に、一千万リーブルずつ礼金をお渡ししなさい」
「いっ!? 一千万リーブルでございますか!?」
「そうだ。お二方には大変興味深いお話をうかがった。お礼をしよう」
俺の申し出に失言王ウッカリーノ男爵が喜色を露わにする。
一方、年上のブッフォン男爵は、さすがに察しが良い。
ただ話しただけで一千万リーブルをもらえるわけがないとわかっている。
俺は優しい声で二人に仕事を依頼する。
「お二方にお願いがあるのです。王都にお帰りになったら、社交界で我がエトワール伯爵家の様子をお話しいただきたいのです。我が家の不名誉な噂が王都で飛び交っているのは困るのです」
「おお! そんなことならお安いご用ですよ! エトワール伯爵は元気! エトワール伯爵家は良いところだったと話しておきますよ!」
失言王ウッカリーノ男爵が請け負う。
軽いな。だが、扱いやすい。
一方、ブッフォン男爵は慎重に考えている。
「まあ、知り合いと話した時に、旅の様子を伝える範囲であれば……」
「それで結構です」
不自然に噂をばらまく必要はない。
失言王ウッカリーノ男爵がラウドスピーカーになって、大声で『エトワール伯爵家サイコー! 僕は一千万リーブルもらいましたー!』と騒ぎ立ててくれるだろう。
そして、落ち着いた雰囲気のブッフォン男爵が、ウッカリーノ男爵の言葉を裏付けることで信憑性が増す。
俺はさらに手を進める。
「ウッカリーノ男爵は国王派なのですから、何か王宮でお役職を得られると良いですね」
「エトワール伯爵もそう思いますか? まったくねえ。何で僕のように優秀な男が無役なんですかねぇ~」
失言するからだろう!
俺は心の中でツッコミを入れながら、顔に社交的な笑みを浮かべる。
「誰か影響力のある人物はいないのですか? その……お金を積めば、役職を斡旋してくれそうな人は……」
「それならジェニー伯爵ですね。あの人はワイロが大好きですから」
ジェニー伯爵ね。
ワイロなんてけしからんが、工作をする時は便利だ。
金さえ払えばやってくれるのだから。
「では、ジェニー伯爵に私から何か送っておきましょう。優秀なウッカリーノ男爵に何かお役職をと頼んでおきますよ」
「本当ですか!? エトワール伯爵! ありがとうございます!」
ブッフォン男爵は、ウッカリーノ男爵を微妙な目で見ている。
そりゃ、俺が何か企んでいるのはバレバレだよな。
ウッカリーノ男爵は喜んで離れていった。
ブッフォン男爵は、ジトッと俺を見て『ほどほどにして下さいよ』と小声で注意して離れていった。
俺は、失言王ウッカリーノ男爵を王宮に送り込んで、国王と宰相をイライラさせたいのだ。
ウッカリーノ男爵が失言して、国王と宰相がムキーっとなる姿を想像すると、心が晴れ晴れする。
黙って成り行きを見ていたジロンド子爵とフォー辺境伯が俺を囲む。
「エトワール伯爵。大丈夫なのか? あんなのに一千万も持たせて……」
「そうだぞ! それに王宮に送り込むなんて何を考えているんだ? もうちょっと気の利いたヤツがいるだろう」
俺は唐揚げをポイッと口に放り込む。
「南部の道路事情が整えば、南部と王都が直結されます。王都も我々の商圏になるのですよ。だから、エトワール伯爵家の悪い噂は払拭しなくてはなりません。一千万リーブルは、必要経費と割り切ります」
「むっ……確かに……」
「思い切ったな。じゃあ、ウッカリーノ男爵の野郎を王宮に送り込むのは?」
「あの人は良くも悪くも裏表がありません。王宮で見た物を、そのまま教えてくれますよ。それこそ国王や宰相が黙っていろと言っても『いや~黙っていろって、口止めされたんですけどね~』とか言ってポロリと失言するでしょう」
俺がウッカリーノ男爵の真似をすると二人は吹き出した。
「ふふ。確かにそうだね。なるほど、あんなヤツだからこそ使えるというわけか!」
「傑作だな! 国王陛下も宰相閣下も手を焼くだろうよ!」
「いやあー、大変でしょうねー」
俺は棒読みで返事をした。
今後は領地を開拓しつつ、南部諸侯と付き合い、王都の動静に目を配らなければならない。
なかなかに大変そうだ。
俺は居住まいを正して、二人の先輩貴族に対した。
「ジロンド子爵、フォー辺境伯。これからは王都との付き合いが増えると思います。どうかご支援をよろしくお願します」
「気軽に頼ってくれ!」
「一緒に儲けようぜ!」
215
お気に入りに追加
3,682
あなたにおすすめの小説
【完結】神様と呼ばれた医師の異世界転生物語 ~胸を張って彼女と再会するために自分磨きの旅へ!~
川原源明
ファンタジー
秋津直人、85歳。
50年前に彼女の進藤茜を亡くして以来ずっと独身を貫いてきた。彼の傍らには彼女がなくなった日に出会った白い小さな子犬?の、ちび助がいた。
嘗ては、救命救急センターや外科で医師として活動し、多くの命を救って来た直人、人々に神様と呼ばれるようになっていたが、定年を迎えると同時に山を買いプライベートキャンプ場をつくり余生はほとんどここで過ごしていた。
彼女がなくなって50年目の命日の夜ちび助とキャンプを楽しんでいると意識が遠のき、気づけば辺りが真っ白な空間にいた。
白い空間では、創造神を名乗るネアという女性と、今までずっとそばに居たちび助が人の子の姿で土下座していた。ちび助の不注意で茜君が命を落とし、謝罪の意味を込めて、創造神ネアの創る世界に、茜君がすでに転移していることを教えてくれた。そして自分もその世界に転生させてもらえることになった。
胸を張って彼女と再会できるようにと、彼女が降り立つより30年前に転生するように創造神ネアに願った。
そして転生した直人は、新しい家庭でナットという名前を与えられ、ネア様と、阿修羅様から貰った加護と学生時代からやっていた格闘技や、仕事にしていた医術、そして趣味の物作りやサバイバル技術を活かし冒険者兼医師として旅にでるのであった。
まずは最強の称号を得よう!
地球では神様と呼ばれた医師の異世界転生物語
※元ヤンナース異世界生活 ヒロイン茜ちゃんの彼氏編
※医療現場の恋物語 馴れ初め編
左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!
武蔵野純平
ファンタジー
大手企業に勤める平凡なアラフォー会社員の米櫃亮二は、セクハラ上司に諫言し左遷されてしまう。左遷先の仕事は、移動販売スーパーの運転手だった。ある日、事故が起きてしまい米櫃亮二は、移動販売車ごと異世界に転生してしまう。転生すると亮二と移動販売車に不思議な力が与えられていた。亮二は転生先で出会った孤児たちを救おうと、貧乏孤児院を宿屋に改装し旅館経営を始める。
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる