上 下
78 / 92
第五章 領地の拡大

第78話 冒険者ギルドで開拓村の打ち合わせ

しおりを挟む
 夕食が終ると、俺は領主屋敷を抜け出した。
 南部貴族のおじさんたちは、これから飲み続ける。
 お付き合いをしていたらキリがないのだ。

 領主屋敷の差配を執事のセバスチャンに任せて、俺は護衛のシューさんと秘書のシフォンさんをともなって冒険者ギルドへ向かった。

 シューさんとシフォンさんはエルフだ。
 シューさんは、まな板。
 シフォンさんは、ご立派。
 エルフのデコボココンビだな。

 俺が自分の想像にクスリと笑うと、シューさんが振り返りギヌロと俺をにらんだ。

「ノエル。何か失礼なことを考えてない?」

「考えてない! 考えてないから!」

 危ない!
 読心術スキルでも持っているのかな?
 今後気をつけよう。

「ノエル。ありがとう」

 突然、シューさんが背中越しに礼を述べた。
 なんだろう?

「エルフの職人が作った家具が売れて、みんな喜んでいる」

 ああ! そのことか!
 感謝されれば、俺も嬉しい。

「エルフの長老も喜んでいましたよ。エルフ族全体が活気づいてます。本当にありがとうございます!」

 後ろを歩く秘書のシフォンさんだ。
 俺が、屋敷に滞在している南部貴族から注文を次々取るので、エルフの職人は大忙しだろう。

「それは良かったです。エルフの職人の腕が良いから売りやすいですよ。ただ、家具については先行売り切り型の商品です。次を考えないと」

「先行売り切り……なるほど! 南部貴族に一通り売ってしまえば、次の注文が入らなくなりますね」

 秘書のシフォンさんが、すぐに気が付いた。
 俺が屋敷で売っているエルフ製家具は高級家具だ。庶民向けじゃない。
 南部貴族に一通り売った後は、裕福な商人が買うくらいで、注文してくれる人がガクンと減る。

 王都など他のエリアに営業展開をするなら、パイプのある商人に頼まなければならない。
 マジックバッグを使っても、距離があるので輸送に時間がかかるから、輸送コストが高くなる。
 そうなれば、販売価格はさらに高額になるので、購入する人、ターゲットになる顧客は減るだろう。
 他のエリアへの展開は、南部全体の道普請が終って輸送コストを下げられるのを待つ……。

 俺は歩きながら、今後のマーケティング戦略について秘書のシフォンさんと話す。

「じゃあ、宿屋や庶民の家で使う家具をエルフが作るかといえば、それもねえ……」

「単価が安くなりますよね。無骨な実用本位の家具では、エルフの職人の強みをいかせませんね」

「それに人族の職人とぶつかるのは避けて欲しい。人族は、庶民向け。エルフは、高級品とすみ分けて欲しい」

「なるほど……。確かにその方が良さそうですね……」

「だから、エルフには次の商品を考えて欲しい。出来れば消耗品が良い。単価の高い消耗品がベストかな……」

 俺の言葉を、シューさんが拾った。

「家具じゃなくても良いの?」

「もちろん。売れる物なら何でも売る! より高く! より沢山! それがエトワールマインドだよ!」

「ふふ。ノエル、面白い。ねえ、今度マリーと一緒に試したいことがあるけど、マリーを借りて良い? 護衛はみーちゃんと変わる」

 妹のマリー?
 護衛をネコネコ騎士のみーちゃんと交代?

「ああ。護衛がついてくれるなら、構わないよ」

「じゃあ、上手くいったら報告する」

 シューさんが何か思いついたらしい。
 やらせてみよう。

 話しているうちに冒険者ギルドに到着した。
 我がエトワール伯爵領領都ベルメールの冒険者ギルドは忙しそうだ。
 ちょうど冒険者たちが戻ってくる時間にぶつかってしまったらしい。

 受付カウンターでは、スタッフのお姉さんが若い冒険者パーティーの依頼完了をさばいている。

「はい! 次! 早く持ってきて!」

「ホーンラビット五匹、討伐認定よろしく!」

「依頼完了! 買い取り価格は一万リーブル! ご苦労様! 明日もよろしく! 次!」

 すごい早口だ。
 新手のラップかと思った。
 人が足りないんだな。

 ホーンラビットの肉は、我が町ベルメールでは重要な食料だ。
 初心者冒険者でも狩れる魔物は貴重である。
 ありがたやありがたいや。

 俺は心の中で手を合わせる。

「あー、エトワール伯爵! こっちに来て!」

 階段から冒険者ギルド長にして姉御であるアミーさんが顔を出した。
 俺たちは冒険者をかき分けて階段にたどり着く。

「忙しいところすいません」

「いいのよ! あんたは領主じゃない。堂々としてなさいよ! 二階に上がって!」

 どうやら今日のアミーさんは、姉御モードらしい。
 まあ、これだけ忙しかったら、お澄ましモードではいられないよな。

 ギルド長の執務室に場所を移し打ち合わせを始める。
 実務的な話なので、大きなテーブルを四人で囲む。

 アミーさんは忙しい。
 俺はすぐに用件を告げた。

「アミーさん。先日、連絡した通りエトワール伯爵領を拡張します。魔の森を開拓するのです。そこで、どの辺りを開拓するか? 魔の森を残すか? それとも全体的に開拓するか? 冒険者ギルドの意見を聞かせて下さい」

 もうすぐ道普請が終る。
 リーダーたちを準騎士爵として取り立て領地を与えなくてはならない。
 村になりそうな場所を沢山用意しなくてはならないのだ。

「りょーかい。連絡をもらってからこれを作ってたのよ」

 アミーさんは、大きめの羊皮紙をテーブルに広げた。

「これは……地図!」

「そう。冒険者から情報を集めて作っておいたの。便利でしょ?」

「これは凄い!」

 地図は簡単なイラストや文字が書き込まれていて、地形や魔物の分布が一目でわかるようになっている。
 これなら俺が行ったことのない場所も何があるか分かるぞ!

 アミーさんが地図を指さしながら意見を述べ始めた。

「冒険者ギルドとしては、魔物の狩り場や薬草の採取場所として魔の森を残してもらいたいわ」

 ふむふむ。なるほど。
 こうして地図で見ると、領都ベルメールの近くに良い狩り場や薬草の採取場所があるのがわかる。

 俺は全体的にダーッと更地を作るイメージでいたが、領都と村を道路でつなぐスター型の方が良さそうだ。

「じゃあ、領都ベルメール近くでホーンラビットの絵が描いてある所と薬草の絵が描いてある所は『残し』ですね……」

「そうね……。村の立地なんだけど、冒険者の拠点になるようにして欲しいの。納屋で良いから寝泊まり出来るようにしてもらえると助かるのよ。村を拠点にして、さらに魔の森の奥を調べられるわ」

 魅力的な提案だな……。
 つまり前線基地の役割を持つ村が欲しいということだな。

 俺は考えながら地図をにらむ。

「なら、領都ベルメールから徒歩で一日の距離に村を作って道でつなげる。道はとりあえず歩ければ良いから道普請は気にしないと……」

「なら、南側に一つ。それからこことここ。西側にも欲しいわ」

 ジッと地図を見ていた秘書のシフォンさんが指をさす。

「この山沿いはどうでしょう? 山側にも魔の森が広がっていますよね?」

「斜面になるから、大規模に畑を広げるのは厳しいかな……」

「けど南側斜面なので、果物はなりますよ? オレンジやオリーブを植えて、小規模な畑を作れば生活は成り立ちます」

「ドライフルーツとオリーブオイルか……欲しいな!」

 そうか。
 新規に開拓する村の住人が食べることだけを考えていたが、商品作物を作らせることも考えないと。

「じゃあ、山の斜面に二つくらい。あとはこの大きな川の上流にも村を……」

「そこは荒れ地だから、イマイチかも」

「うーん……」

 俺たちが、あれこれと議論しているとシューさんがアドバイスをくれた。

「候補地はもっと多い方が良い。沢山の候補地から選ばせれば?」

「リーダーたちに選ばせるの?」

 俺は適材適所で配置していこうと思っていたが、シューさんの意見は違うようだ。

「魔の森の開拓は命がけ。魔物に襲われることもある。村人が不満を抑えなくちゃならないこともある。開拓村が軌道に乗るまでは苦労の連続」

「なるほど。それなら、本人に選ばせて悔いが残らないようにしろと?」

「そう」

 シューさんの意見には納得出来る。
 俺が『ここを開拓しろ!』と命令するより、リーダーたちに自分が開拓する領地を決めさせた方が良さそうだ。

「よし、わかった。じゃあ、開拓村の候補地をもっとだ!」

 俺たちは夜遅くまで、地図とにらめっこした。
 これも配下になるリーダーたちのためだ。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

追放王子の異世界開拓!~魔法と魔道具で、辺境領地でシコシコ内政します

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した王子・アンジェロは、隣国の陰謀によって追放される。しかし、その追放が、彼の真の才能を開花させた。彼は現代知識を活かして、内政で領地を発展させ、技術で戦争を制することを決意する。 アンジェロがまず手がけたのは、領地の開発だった。新しい技術を導入し、特産品を開発することで、領地の収入を飛躍的に向上させた。次にアンジェロは、現代の科学技術と異世界の魔法を組み合わせ、飛行機を開発する。飛行機の登場により、戦争は新たな局面を迎えることになった。 戦争が勃発すると、アンジェロは仲間たちと共に飛行機に乗って出撃する。追放された王子が突如参戦したことに驚嘆の声が上がる。同盟国であった隣国が裏切りピンチになるが、アンジェロの活躍によって勝利を収める。その後、陰謀の黒幕も明らかになり、アンジェロは新たな時代の幕開けを告げる。 アンジェロの歴史に残る勇姿が、異世界の人々の心に深く刻まれた。 ※書籍化、コミカライズのご相談をいただけます。

処理中です...