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第三章 ノエル南部に立つ!

第56話 部下に冷かされる領主とは俺のことだ!

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「アミーさん! 好きです!」

「坊やに用はないニャ!」

「頼むから止めてください……」

 冒険者ギルドの調査隊は五日間の調査を終えて帰っていった。
 フォー辺境伯の領都デバラスで会議を行い、我がエトワール伯爵領に冒険者ギルドを開設するか否かを審議するそうだ。

 我が領都ベルメール周辺の魔物の生息情報や薬草・鉱物資源などの情報は極秘で、俺にも教えてもらえなかった。

 調査隊責任者のアミーさんは、終始出来る女性風の振る舞いで、俺のハートにドストライクだった。
 色っぽくて仕事の出来るお姉さんなんて……最高じゃないか!

 だが、失敗もある。

 俺が色気づいたとエルフのシューさんとネコネコ騎士のみーちゃんが冷やかすのだ。
 今も俺の執務室に来て、小芝居を繰り広げている。

「あの! 俺はアミーさんに告白なんてしていませんよ!」

「告白はしてないけど、好意は寄せている」

「うっ……」

 シューさんの追求に俺は言葉が詰まる。
 恋というほどウブな思いではないが、確かに異性に対するトキメキを感じていた。
 長らく身近にいる異性が妹のマリーだけだったからかもしれない。

「ノエルは、胸が大きい女性が好きなの?」

「シューさん!」

「初めて会った時、私が胸の詰め物を外したら、とてもガッカリしていた」

「うっ……」

 俺はまたも言葉に詰まった。
 シューさんとみーちゃんが、ニヤニヤ笑いで近づいてくる。

 俺は執事のセバスチャンに助けを求める。

「セ……セバスチャン!」

「わたくしは、お茶の用意をいたしますね」

 セバスチャンは逃げ出した!

 シューさんとみーちゃんが左右から顔を近づけて、ウリウリ白状しろと迫ってくる。
 俺は仕方なしに答えた。

「大きいのが好きです」

「「おおー!」」

 二人が大げさに驚いて俺を冷やかす。
 俺は二人に冷や水を浴びせるべく、切り札を切った。

「ほら……幼くして母を亡くしたから……」

 これだ。
 母親と死別したからという理由の前では、胸が大きいだの小さいだのは下らない議論に成り下がる。
 俺は心の中で母に祈った。

(天国の母上、どうかお守りください)

 だが祈りは通じなかったようだ。
 二人は容赦なく俺を攻撃した。

「ノエルはマザコン」

「マザコンで巨乳好きニャ!」

「いや、ちょっとは同情してくださいよ……」

「その手には乗らない」

「マリーには内緒にしてあげるニャ!」

「それはどうも」

 俺は深くため息をついた。
 まあ、仕方ない。二人は俺とマリーの護衛で常に気を張っているのだ。
 そして領都ベルメールには、娯楽が何もない。
 となれば、俺を冷かして適度に緊張を解すくらいは許容しなくては。
 俺は領主で、兄で、娯楽なのだと割り切ろう。

 二人に冷かされていると、執事のセバスチャンが戻ってきて、笑顔で俺に声を掛けた。

「ノエル様。お客様です」

「客? 誰だろう?」

「ダークエルフのエクレールです」

「おお!」

 ダークエルフのエクレール!
 俺を狙った刺客だったダークエルフだ。
 妹が病気で困っていたが、どうなったのだろう?
 エリクサーは持たせたし、ここに来たということは病気が治ったのではないか?

 俺はエクレールに会うべく応接室へ向かった。
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