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第一章 王都から追放
第10話 襲撃
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「セバスチャン。荷物を運び込んで、マリーを馬車に乗せてくれ」
「ノエル様。かしこまりました」
執事のセバスチャンに指示して、俺は最後の作業に入った。
屋敷を解体するのだ。
大容量のマジックバッグを生産スキル【マルチクラフト】で生成したが、さすがに屋敷を丸ごと収納するのは無理だ。
そこで屋敷を木材の塊、石材の塊、レンガの塊という具合に、素材ごとに大きめのブロックを作ってマジックバッグに収納する。
俺は屋敷に手をかざして生産スキル【マルチクラフト】を発動した。
すると一メートル四方の正方形の木材のブロックを生成出来た。
マジックバッグを使うと、すんなり収納出来た。
「よし! 王と宰相には髪の毛一本たりとも渡さないぞ!」
俺たちがこの王都屋敷から出て行った後は、王と宰相が屋敷を接収するだろう。
だが、タダで丸ごと渡してやるほど、俺はお人好しじゃない。
せめてもの抵抗として、エトワール伯爵家の王都屋敷を更地にしてやる。
いや、抵抗というより、嫌がらせかな。
王と宰相が悔しがって地団駄を踏む姿を想像したら、ちょっと可笑しい。
俺が解体作業を続けていると、執事のセバスチャンとネコネコ騎士のみーちゃんがやって来た。
「ノエル様。マリー様は馬車でお休みになっております」
「わかった。ありがとう」
「ニャー! 屋敷を解体しているのニャ!」
「ああ、ささやかな嫌がらせだよ。王と宰相の言う通り王都から出て行ってやる。だが、屋敷は渡さない。渡すのは更地になった地面だけだ」
俺が悪い笑みを浮かべるとセバスチャンが頬を片側だけ引き上げて笑った。
「ふふ。国王陛下と宰相閣下は、さぞ驚かれるでしょう」
俺は黙々と作業を続けたが、みーちゃんが緊迫した声を出した。
「ノエル……。まだ、時間がかかるかニャ……?」
「ん? あとちょっと。十分もあれば終るよ。どうかした?」
「足音が近づいてるニャ……。十人はいるニャ……」
「えっ!?」
俺は思わず作業する手を止めた。
みーちゃんは、腰のサーベルに手を置いて敷地の外へ目を向けている。
帽子を脱いで頭の上の三角耳をピクピクと動かしているのは、足音をキャッチしているからだろう。
みーちゃんの目がキラリと光った。
「ガラの悪い男たちニャ……。手にしているのは……、剣、ナイフ、木製の棒ニャ」
執事のセバスチャンが小さく鋭い声を発する。
「ノエル様!」
「襲撃だな。王か? それとも宰相マザランの手引きか? 念入りだな」
チンピラに襲撃をさせて、俺とマリーを抹殺するつもりなのだろう。
エトワール伯爵家を完全に消滅させて、後腐れがないようにする。
下手人は、街のチンピラ。
犯人を捕まえ処刑して、実行犯の口封じを達成する。
これにて一件落着コースか……。
まったく、手回しが良い。
手回しの良さに腹が立つ。
いつか一発殴ってやろう。
俺は妙に冷静だった。
前世日本でも、この異世界に転生してからも荒事の経験はない。
自分の身に危機が迫っていると理解しているが、恐れはなかった。
恐怖より、王や宰相への怒りが強い。
俺たちエトワール伯爵家の理不尽な扱い。
陰湿な手口。
俺や妹のマリーは、まだ幼いのにも関わらず、まったく容赦をしない冷血さ。
全てに腹が立ち、怒りによってある種の開き直りが俺の心をしめていた。
(オマエらの思い通りにはいかないぞ!)
強い思いが、俺を奮い立たせた。
「セバスチャンは馬車へ! みーちゃんは時間を稼いでくれ! 少しで良い!」
「承知!」
セバスチャンが馬車へ走って行く。
みーちゃんが、俺に近づき小声で話しかける。
「始末するニャ? 十人程度なら、わけないニャ」
「いや、殺すのは不味い。殺しを理由に、俺たちを捕らえて処刑するかもしれない」
「面倒ニャ。じゃあ、適当に相手をするニャ。敷地には入れないニャ」
「頼む!」
みーちゃんは、つばの広い帽子をかぶると軽い足取りで王都屋敷の外へ向かった。
俺は屋敷の解体作業を再開し、ひたすら手を動かした。
あともう少し! というところで、敷地の外から男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「このネコ野郎! 死にやがれ!」
「ノエル様。かしこまりました」
執事のセバスチャンに指示して、俺は最後の作業に入った。
屋敷を解体するのだ。
大容量のマジックバッグを生産スキル【マルチクラフト】で生成したが、さすがに屋敷を丸ごと収納するのは無理だ。
そこで屋敷を木材の塊、石材の塊、レンガの塊という具合に、素材ごとに大きめのブロックを作ってマジックバッグに収納する。
俺は屋敷に手をかざして生産スキル【マルチクラフト】を発動した。
すると一メートル四方の正方形の木材のブロックを生成出来た。
マジックバッグを使うと、すんなり収納出来た。
「よし! 王と宰相には髪の毛一本たりとも渡さないぞ!」
俺たちがこの王都屋敷から出て行った後は、王と宰相が屋敷を接収するだろう。
だが、タダで丸ごと渡してやるほど、俺はお人好しじゃない。
せめてもの抵抗として、エトワール伯爵家の王都屋敷を更地にしてやる。
いや、抵抗というより、嫌がらせかな。
王と宰相が悔しがって地団駄を踏む姿を想像したら、ちょっと可笑しい。
俺が解体作業を続けていると、執事のセバスチャンとネコネコ騎士のみーちゃんがやって来た。
「ノエル様。マリー様は馬車でお休みになっております」
「わかった。ありがとう」
「ニャー! 屋敷を解体しているのニャ!」
「ああ、ささやかな嫌がらせだよ。王と宰相の言う通り王都から出て行ってやる。だが、屋敷は渡さない。渡すのは更地になった地面だけだ」
俺が悪い笑みを浮かべるとセバスチャンが頬を片側だけ引き上げて笑った。
「ふふ。国王陛下と宰相閣下は、さぞ驚かれるでしょう」
俺は黙々と作業を続けたが、みーちゃんが緊迫した声を出した。
「ノエル……。まだ、時間がかかるかニャ……?」
「ん? あとちょっと。十分もあれば終るよ。どうかした?」
「足音が近づいてるニャ……。十人はいるニャ……」
「えっ!?」
俺は思わず作業する手を止めた。
みーちゃんは、腰のサーベルに手を置いて敷地の外へ目を向けている。
帽子を脱いで頭の上の三角耳をピクピクと動かしているのは、足音をキャッチしているからだろう。
みーちゃんの目がキラリと光った。
「ガラの悪い男たちニャ……。手にしているのは……、剣、ナイフ、木製の棒ニャ」
執事のセバスチャンが小さく鋭い声を発する。
「ノエル様!」
「襲撃だな。王か? それとも宰相マザランの手引きか? 念入りだな」
チンピラに襲撃をさせて、俺とマリーを抹殺するつもりなのだろう。
エトワール伯爵家を完全に消滅させて、後腐れがないようにする。
下手人は、街のチンピラ。
犯人を捕まえ処刑して、実行犯の口封じを達成する。
これにて一件落着コースか……。
まったく、手回しが良い。
手回しの良さに腹が立つ。
いつか一発殴ってやろう。
俺は妙に冷静だった。
前世日本でも、この異世界に転生してからも荒事の経験はない。
自分の身に危機が迫っていると理解しているが、恐れはなかった。
恐怖より、王や宰相への怒りが強い。
俺たちエトワール伯爵家の理不尽な扱い。
陰湿な手口。
俺や妹のマリーは、まだ幼いのにも関わらず、まったく容赦をしない冷血さ。
全てに腹が立ち、怒りによってある種の開き直りが俺の心をしめていた。
(オマエらの思い通りにはいかないぞ!)
強い思いが、俺を奮い立たせた。
「セバスチャンは馬車へ! みーちゃんは時間を稼いでくれ! 少しで良い!」
「承知!」
セバスチャンが馬車へ走って行く。
みーちゃんが、俺に近づき小声で話しかける。
「始末するニャ? 十人程度なら、わけないニャ」
「いや、殺すのは不味い。殺しを理由に、俺たちを捕らえて処刑するかもしれない」
「面倒ニャ。じゃあ、適当に相手をするニャ。敷地には入れないニャ」
「頼む!」
みーちゃんは、つばの広い帽子をかぶると軽い足取りで王都屋敷の外へ向かった。
俺は屋敷の解体作業を再開し、ひたすら手を動かした。
あともう少し! というところで、敷地の外から男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「このネコ野郎! 死にやがれ!」
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