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第五章 冒険者パーティーひるがお
第79話 温泉へ~チェンジ・ザ・ワールド(五章最終話)
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――翌朝。
教会の自室で身支度を整えていると、ドアがノックされた。
「はい。どうぞ」
俺が声をかけると、シスター・エレナが入って来た。
「リョージさん。ソフィーちゃん。おはようございます」
「おはようございます」
「おはよーございまーす!」
シスター・エレナの顔を見ると、眉間にシワを寄せて悲しそうな表情だ。
「リョージさん。お疲れではないですか?」
「えっ……? 疲れてる……? 俺が?」
シスター・エレナが、俺に歩み寄りズイッと顔を寄せてきた。
美形のシスター・エレナと距離が近い。
ドキッとした。
「お顔の色が悪いし、目元もキツくなっています。働き過ぎです」
「そ……そうでしょうか?」
「はい。私は心配です。少し休まないといけません」
働き過ぎ?
そうかな?
俺が首をひねると、ソフィーが俺の服の裾を引いた。
「おとーさん。ソフィーも心配。夜、寝ている時、おとーさん、うーうー言ってる」
「えっ!? うなされているのか!? 本当に!?」
「ホントだよ! おとーさんが、うーうー言うから、ソフィーが隣に寝て頭を撫でてあげるの。そしたら、うーうーが止まるの」
「そうだったのか……。ソフィーありがとう」
「うん!」
心配かけてごめんな。
俺はソフィーの頭を優しくなでた。
ソフィーは気持ち良さそうに目を細める。
そうか……、寝ている時にうなされているのか……。
これは相当疲れているな。
知らぬ間にストレスが溜まっていたのだろう。
考えてみれば、ここのところ交渉ごとが続いた。
スタンピードをなんとかしようと奔走した。
ダンジョンに潜って魔物との戦闘もした。
自分では気が付かなかったが、プレッシャーがかかっていたのだろう。
これはシスター・エレナの言う通り、休みを取らなければダメだ。
「シスター・エレナ。ありがとうございます! どうやら疲れが溜まっているようです。ご忠告通り、今日はお休みにします」
「良かった! リョージさんは、頑張りすぎです。ノンビリすることも必要ですよ」
「そうですね、ノンビリ――そうだ! 疲れているから温泉に行きましょう!」
疲れたら温泉!
リラックスするなら温泉!
幸いなことに、開拓村には温泉がある。
移動販売車に乗っていけば、移動も苦にならない。
余裕で日帰り出来る。
俺の提案にシスター・エレナが手をパンと叩いて喜んだ。
「まあ、素敵ですね!」
「ソフィーも行く! 温泉好きっ!」
ソフィーもぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ。
「よしっ! じゃあ、朝ご飯を食べたら出発しよう!」
*
「うぅぅぅぅ……、しみるなぁぁぁぁ……」
俺は温泉につかり、腹の底から声を絞り出している。
温かい湯が気持ち良い。
エモラ村のマナ温泉は、白く濁った湯だ。
登別温泉や別府温泉と同じで、日本の温泉を思い起こさせる。
俺は手脚を伸ばし、浴場の縁に頭をもたれかける。
「最っ……高っ……だな……」
目を閉じて、じっくりと湯を堪能する。
温かさがジワジワと体の内側に染み込んでくる感覚を楽しみ、ゆっくりと息を吐き出す。
吸い込むと湯気で温められた柔らかい空気が肺へ届き、体内から温まり、血が巡り出すのがわかる。
「おお……」
手で湯をすくって、バシャリと顔にかける。
目が疲れていたのだろう。
眼窩の周りや額にジンワリと湯の温かさが伝わり、細かな筋肉がほぐれてゆく。
「甘露……」
湯にたゆたうと思わず言葉がこぼれた。
目を閉じてゆっくり息をしていると、女湯から声が聞こえてきた。
「それでね! おとーさんがね! わーってなってね!」
「まあまあ!」
女性は二人でもかしましい。
俺は目を閉じたまま、ちょっと遠くで聞こえる二人の声に耳を傾けた。
また、ソフィーがシスター・エレナの胸を触って叱られている。
俺はクスリと笑い内心『いいぞ! もっとやれ!』とソフィーを応援した。
スタンピード対策は、やれるだけやった。
俺だけでなく、領主のルーク・コーエン子爵も動いている。
ガイウスたち冒険者も、ダンジョンや魔の森の情報を冒険者ギルドへ抜かりなく伝えている。
きっとサイドクリークの町を守れるだろう。
「がんばったな……俺……」
俺は微笑み、ゆっくりと湯につかった。
教会の自室で身支度を整えていると、ドアがノックされた。
「はい。どうぞ」
俺が声をかけると、シスター・エレナが入って来た。
「リョージさん。ソフィーちゃん。おはようございます」
「おはようございます」
「おはよーございまーす!」
シスター・エレナの顔を見ると、眉間にシワを寄せて悲しそうな表情だ。
「リョージさん。お疲れではないですか?」
「えっ……? 疲れてる……? 俺が?」
シスター・エレナが、俺に歩み寄りズイッと顔を寄せてきた。
美形のシスター・エレナと距離が近い。
ドキッとした。
「お顔の色が悪いし、目元もキツくなっています。働き過ぎです」
「そ……そうでしょうか?」
「はい。私は心配です。少し休まないといけません」
働き過ぎ?
そうかな?
俺が首をひねると、ソフィーが俺の服の裾を引いた。
「おとーさん。ソフィーも心配。夜、寝ている時、おとーさん、うーうー言ってる」
「えっ!? うなされているのか!? 本当に!?」
「ホントだよ! おとーさんが、うーうー言うから、ソフィーが隣に寝て頭を撫でてあげるの。そしたら、うーうーが止まるの」
「そうだったのか……。ソフィーありがとう」
「うん!」
心配かけてごめんな。
俺はソフィーの頭を優しくなでた。
ソフィーは気持ち良さそうに目を細める。
そうか……、寝ている時にうなされているのか……。
これは相当疲れているな。
知らぬ間にストレスが溜まっていたのだろう。
考えてみれば、ここのところ交渉ごとが続いた。
スタンピードをなんとかしようと奔走した。
ダンジョンに潜って魔物との戦闘もした。
自分では気が付かなかったが、プレッシャーがかかっていたのだろう。
これはシスター・エレナの言う通り、休みを取らなければダメだ。
「シスター・エレナ。ありがとうございます! どうやら疲れが溜まっているようです。ご忠告通り、今日はお休みにします」
「良かった! リョージさんは、頑張りすぎです。ノンビリすることも必要ですよ」
「そうですね、ノンビリ――そうだ! 疲れているから温泉に行きましょう!」
疲れたら温泉!
リラックスするなら温泉!
幸いなことに、開拓村には温泉がある。
移動販売車に乗っていけば、移動も苦にならない。
余裕で日帰り出来る。
俺の提案にシスター・エレナが手をパンと叩いて喜んだ。
「まあ、素敵ですね!」
「ソフィーも行く! 温泉好きっ!」
ソフィーもぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ。
「よしっ! じゃあ、朝ご飯を食べたら出発しよう!」
*
「うぅぅぅぅ……、しみるなぁぁぁぁ……」
俺は温泉につかり、腹の底から声を絞り出している。
温かい湯が気持ち良い。
エモラ村のマナ温泉は、白く濁った湯だ。
登別温泉や別府温泉と同じで、日本の温泉を思い起こさせる。
俺は手脚を伸ばし、浴場の縁に頭をもたれかける。
「最っ……高っ……だな……」
目を閉じて、じっくりと湯を堪能する。
温かさがジワジワと体の内側に染み込んでくる感覚を楽しみ、ゆっくりと息を吐き出す。
吸い込むと湯気で温められた柔らかい空気が肺へ届き、体内から温まり、血が巡り出すのがわかる。
「おお……」
手で湯をすくって、バシャリと顔にかける。
目が疲れていたのだろう。
眼窩の周りや額にジンワリと湯の温かさが伝わり、細かな筋肉がほぐれてゆく。
「甘露……」
湯にたゆたうと思わず言葉がこぼれた。
目を閉じてゆっくり息をしていると、女湯から声が聞こえてきた。
「それでね! おとーさんがね! わーってなってね!」
「まあまあ!」
女性は二人でもかしましい。
俺は目を閉じたまま、ちょっと遠くで聞こえる二人の声に耳を傾けた。
また、ソフィーがシスター・エレナの胸を触って叱られている。
俺はクスリと笑い内心『いいぞ! もっとやれ!』とソフィーを応援した。
スタンピード対策は、やれるだけやった。
俺だけでなく、領主のルーク・コーエン子爵も動いている。
ガイウスたち冒険者も、ダンジョンや魔の森の情報を冒険者ギルドへ抜かりなく伝えている。
きっとサイドクリークの町を守れるだろう。
「がんばったな……俺……」
俺は微笑み、ゆっくりと湯につかった。
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