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第48話 エルフセーラーの破壊力

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 ■ 異世界転移二十八日目、拠点に戻って五日目

「リク……次の予定は何だっけ?」

「何だったかな……? マリンさんは、覚えてる?」

「何でしょう? 何か予定は入っていると思いますが、それが何なのか思い出せません。柴山さん?」

「えーと……。メモによると……」

 忙しい!
 とにかく忙しい!

 明日は拠点を出発して、領都ノースポールへ再び向かうのだが、予定が詰まっている。

 二回目の遠征は、俺たち四人だけではない。
 戦闘職の人、生産職の人、領都ノースポールへの移住を検討している人を連れて行くのだ。

 領都ノースポールへ同行する人たちを、俺のパーティーに組み入れて、魔物狩りに向かう。
 そして、俺が倒すことで、町に連れて行くメンバーをレベルアップさせているのだ。

 佐伯君たちのグループからも何人か連れて行く。

 佐伯君たちのグループは少し丸くなったようで、拠点内での衝突がなくなった。
 俺の話も少しは効果があったのかもしれない。

 ただ、建国することは、あきらめてない。
 遠征に成功した俺たちのパーティーを手本にして、複数のパーティーを東と西へ向かわせている。

 拠点から他国、ないしは他の領地へのルートを発見するのが第一目的。
 次に拠点の南にある神殿と同じ物がないか探すのが第二の目的だ。

 拠点の南にある神殿は、『南の神殿』と呼ぶことになった。
 最初は、『ミッツ神殿』と発見者の名前を冠する案が出たが、全力でお断りした。
 あまりにも照れくさい。

 柴山さんがノートにメモ書きした次の予定を読み上げる。

「次は生産職のレベルアップですね」

「あれ? 初日にやらなかったっけ?」

 初日に鍛冶師、裁縫師など、すぐに活躍してもらいたい人を中心に、魔物狩りに連れて行った。
 無事レベルアップをして、スキルで生産出来る物が大幅に増えた。

 俺は、鍛冶師に拳銃を作ってもらった。
 ステンレス製で軽く、オートマチック型の拳銃だ。

 もっとも拳銃といっても外側だけで、実弾は出ない。
 だが、俺が持てば魔法の弾丸を撃ち出すことが出来る。

 この拳銃は、俺専用の魔道具ということにした。
 本当は魔道具でも何でもなくて、単なる拳銃型のステンレスなのだが、スキルのカモフラージュ用にしている。
 おかげでスキル魔銃を大っぴらに使うことが出来るようになった。

 そんなわけで、道具、武器、防具、服を生産出来るジョブの人は、最優先でレベルアップさせたはずだ。

「別の人です。生産部門からの要請で、拠点に残る生産職もレベルアップさせてくれと。木工、建築関連、素材生産関連のジョブらしです」

「どんなジョブかは知らないけれど、また行こうか……」

「「「はあ……」」」

 パーティー編成の魔法は、最大で九人だ。
 俺、リク、マリンさん、柴山さん、それぞれが八人ずつ連れていけば、一番効率が良いが、それでは、パーティーの守りが手薄になってしまう。

 俺が攻撃している間に、別の魔物が襲ってくるかもしれないのだ。
 レベルアップで同行している八人が、別の魔物に倒されては元も子もない。

 結局、効率は落ちるが俺、リク、マリンさん、柴山さんのいつもの四人にレベルアップ希望者五人を同行させる形に落ち着いた。

 安全第一!

 俺たちは、生産職を引き連れ魔物を狩り、レベルアップをさせ拠点に戻ってきた。

「ありがとうございます! ミッツさんたちのおかげでレベルアップ出来ました!」
「これでニューアイテムを生産出来ますよ!」

「いや、がんばってください……」

 だが、俺たちは何度も狩りに出かけるので、いい加減疲れる。
 早く領都ノースポールへ向けて出発したい。

 そろそろ日が暮れそうだ。
 狩りは終わりにしよう。

 広場の方へ戻っているとリクが何かを見つけた。

「オイ……あれ何だ?」

「えっ……? あれは……、エルフの魔法使いティケさんだよな?」

「ティケさんですね。いつもと違う服を着ていますね」

「明らかにセーラー服ですが、見間違いでしょうか?」

 エルフの魔法使いティケさんが、セーラー服を着てスキップしている。
 それもミニスカセーラーと呼ばれるジャンルだ。

「エルフセーラーか……。新鮮だな!」

 リクはお気に入りのティケさんが、セーラー服を着てご満悦だが、良いのか……? これ……?

「あれ、新品じゃないですか?」

 マリンさんが、セーラー服は新品であると気が付いた。
 確かに生地がきれいだ。

「新品ということは、生産職の誰かが作ったのでしょうねぇ~。僕は良いのですが、貴重な布地を趣味的な物に費やすのは、いかがなものかと……」

 柴山さんの言う通りだ。

 エルフの魔法使いティケさんが、ミニスカセーラーでスキップするので、拠点の男性陣の視線を一身に集めている。
 しかし、ラッキースケベが起りそうで、起らない。

 おそらくスカートは風魔法で、ひるがえらないように押さえられているのだろう。
 魔力の無駄使いだ。

 拠点の男性陣の姿勢は、徐々に低くなり、女性陣の機嫌は徐々に悪くなる。

「誰だよ! あんなの作ったのは!」

「そりゃ、我知多さんだろう。裁縫師で初日にレベルアップに連れて行った」

 リクには心当たりがあるそうだ。
 視線を集めるエルフの魔法使いティケさんを引っ張って、俺たちは我知多さんの所へ向かった。

 我知多さんは、神殿の通路を住処にしていた。
 カーリーヘアーにヒゲもじゃの見るからに怪しい男だ。

「おお! ティケさん! セーラー服はどう?」

「とても良かった。視線を独り占め」

「じゃあ、次はこれを……エルフブルマー!」

 我知多さんは、クラッシックな紺色のブルマーを差し出す。
 どうやって作ったんだ……。

「我知多さん……」

 マリンさんが、汚物を見るような目で我知多さんを見る。

「いや、マリンさん。違うんだ! 違うんだよ!」

「違わないでしょう! 事情を知らない現地の人に、エロイの着させるな!」

「エルフセーラーはロマンなんだよ!」

 ダメだな、こいつは。
 マリンさんと我知多さんで、やり合っていたが、結局、セーラー服とブルマーはマリンさんに没収されてしまった。

「はあ、俺の力作が……」

 我知多さんが、がっくりとうなだれる。
 知らんがな!

 リクがイケメンなニヤニヤ笑いで、我知多さんの肩を叩いた。

「まあ、俺は楽しめたよ。エルフセーラーは、破壊力があるよな! また、町へ行くけど、何か欲しい物はあるか?」

 我知多さんの目が、ギラリと光る。

「出来ればレースとか、透け感のある素材を頼む。下着を作りたいのだ」

 俺は慌ててツッこむ。

「あんたのスキル構成は、どうなってるんだよ!」

 スキル下着生成とか、スキルスケスケとかか?
 ロクなスキルじゃないな。

 マリンさんが深くため息をついた。

「はあ……。まあ、下着が足りないのは事実だから、綿とか肌触りの良い素材を買ってきます。それで、普段使いの下着を生産して下さい」

「デザインは選べないぞ!」

「我知多さん! 実用重視でお願いします!」

「生活には潤いが必要なんだ!」

「誰のための潤いよ! 我知多さんが見たいだけでしょう!」

 ギャイギャイとマリンさんと我知多さんが、ケンカを続けた。
 まあ、こんなバカバカしいケンカが出来るのも、拠点が少し落ち着いて来たからだろう。

 明日の朝には、領都ノースポールへ向かう。
 まだ、課題は多いが少しずつ前進だ!

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◆作者より◆
お読みいただきありがとうございました!
ここまで第一章です。
お休みをいただいて、第二章は二月頃から、連載再開の予定です。
(蛮族転生や梅酒など他作品を書きます)
連載再開まで、お待ち下さいますようお願いいたします。
応援ありがとうございました!
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