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第17話 町を探して探索の旅7~神殿について
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「リスクが低い!? それは勇者の佐伯君たちがいるからか?」
リクが不機嫌な声を上げた。
リクは魔王ジックザハラットを相当警戒しているので、俺の判断に異議があるのだろう。
だが、俺はいたって普通に会話を続けた。
「佐伯君たちがいるのもあるけれど……。なんかさ。変だと思ったんだ。新しく見つけた神殿と、拠点の神殿って違うだろ?」
「違う……? そうか……?」
新しく見つけた神殿に、俺は違和感を覚えていた。
はっきりと言語化出来なかったのだけれど、森の中に入って木の葉を見て気が付いたのだ。
「新しく見つけた神殿は、中も外もきれいだろう? でも、拠点の神殿は、見た目が古かったし、枯れ葉や土埃が神殿の中に入っていた」
神殿のきれいさが全く違うのだ。
それに言葉には出さなかったが、拠点――転移した場所にあった神殿には人骨もあった。
人骨が誰なのかはわからない。
神殿の住人だったのか、それとも俺たちと同じように転移して来た人なのか。
だが、新しく見つけた神殿では人骨はなかった。
俺が二つの神殿の違いを指摘すると、三人とも二つの神殿の様子を思い出そうとしていた。
しばらくして、リクが口を開く。
「そう言えば、そうだな」
「なんで?」
「何でって言われても……何でだ?」
リクが口に手をあてて考え始めた。
いつものリクに戻っている。
黙って考えている姿もかっこいいぞ!
このイケメン野郎!
「それについては心当たりがあります」
一休みして復活した柴山さんが、アイテムボックスから本を取り出した。
日記とは違う本だ。
「これは神殿の案内書です。この本によれば、神殿には様々な機能があるようです。ええと……」
柴山さんがページをパラパラとめくる。
俺、リク、マリンさんの視線が、神殿の案内書に注がれる。
「あった! ここです! 『神殿の内外は、魔法で自動清掃を行う』、『経年劣化防止の魔法が建物の内外にかかっている』、『魔力は周囲から自動で取り込む』とあります」
ほうほう、そんな機能があるのか。
だったら、俺の推測が当たっているかもしれない。
俺は、推測を口にしてみた。
「それなら、日記に書いてあった『ジックザハラットが来る』って言うのは、かなり昔のことなんじゃないか?」
三人とも俺の推測がわからないとばかりに、首をかしげる。
柴山さんが俺に根拠を求めてきた
「かなり昔ですか……。ミッツさんは、なぜ、そう思われたのですか?」
「俺たちの拠点にあった神殿は、かなり古い感じだった。石自体にヒビが入っていたし、汚れも目立った」
「確かにそうですね」
「一方、新しく見つけた神殿は、新品って感じでかなりきれいだった」
「ええ。この案内書に書いてあるとおり、魔法で清掃をして、経年劣化を防止する魔法がかかっているからでしょう」
「ということは……。拠点の神殿は、その魔法の機能が故障していたんじゃないか? それで、時が経って神殿自体がボロになった……。だから、ジックザハラットについて書いてある日記は、かなり昔のことで、現在のことではない。どう? この推理? 名探偵?」
「「「……」」」
「えっ!? なんで、そこ黙るの!? 賞賛するところだろ!?」
「ミッツが、まともなことを話している……」
「明日は雨ですね……」
「雪じゃないですか……」
「オマエらヒドイぞ!」
三人からの俺への評価が明らかになった。
もう、泣きたい。
ガックリした俺をよそに、柴山さんが案内書の内容を要約して教えてくれた。
・ここの神殿は周辺の魔力を集める設備である。
・集められた魔力は、勇者を召喚する設備に送られていた。
・俺たちが転移した場所にあった神殿は、勇者を呼び込むための施設と思われる。
「――というわけで、僕たちは、ジックザハラットに対抗するための勇者召喚に巻き込まれてしまったのではないかと推察します」
それっきりみんな黙り込んだ。
まあ、そんなことなんじゃないかと思ってはいたけれど、日記や案内書というそれなりの根拠も示された。
誰も話そうとしないので、俺が柴山さんに話を振った。
「俺たちは神殿と呼んでいるけど、宗教施設じゃないんだな」
「いえ。宗教施設の側面もあるようです。集めた魔力を神に奉納して、勇者を召喚すると案内書にも、日記にも書いてあります」
「科学が進んでいるのだか、不思議世界なのか、よくわからないね。えっと……、じゃあ、新しく見つけた神殿は子機で、拠点にあった神殿が親機なのかな?」
「恐らくそうでしょう。この説明書によると、子機にあたる施設が八箇所あるそうです」
俺と柴山さんは、あれこれと神殿について話し合った。
俺は、俺が提示した推測について柴山さんの意見を聞いてみた。
「柴山さんは、どう思う?」
「可能性はあると思います。もちろん、断定は出来ませんが、確かに新たに発見した神殿と拠点にある神殿では様子が違います。もっと情報を集めたいですね。もし、ミッツさんの推測通りで、日記に書いてあることが、かなり昔のことだとしたら、ジックザハラットは、もういないかもしれません」
黙っていたリクが話に入ってきた。
「そうだな。現在のことか、過去のことか。ジックザハラットがいるのか、いないのか。もっと情報を集めないと……。引き続き町を探そう」
「マリンさんは?」
「そうねえ……。改めて、私たちが異世界転移したのが勇者召喚の影響だと聞かされてショックで……。でも、そこまで推測出来るようになってきたなら、日本に帰る方法が見つけられるかもしれない――と考えて、前向きに町を探しましょう!」
「よし! 決まりだ!」
俺たちは再び町を探すべく出発した。
新しく見つけた神殿には、置き手紙をした。
ひょっとしたら、拠点にいる誰かが、俺たちを探して、この神殿にたどり着くかもしれないからだ。
俺たちは、発見した神殿に別れを告げて、さらに南へ進んだ。
リクが不機嫌な声を上げた。
リクは魔王ジックザハラットを相当警戒しているので、俺の判断に異議があるのだろう。
だが、俺はいたって普通に会話を続けた。
「佐伯君たちがいるのもあるけれど……。なんかさ。変だと思ったんだ。新しく見つけた神殿と、拠点の神殿って違うだろ?」
「違う……? そうか……?」
新しく見つけた神殿に、俺は違和感を覚えていた。
はっきりと言語化出来なかったのだけれど、森の中に入って木の葉を見て気が付いたのだ。
「新しく見つけた神殿は、中も外もきれいだろう? でも、拠点の神殿は、見た目が古かったし、枯れ葉や土埃が神殿の中に入っていた」
神殿のきれいさが全く違うのだ。
それに言葉には出さなかったが、拠点――転移した場所にあった神殿には人骨もあった。
人骨が誰なのかはわからない。
神殿の住人だったのか、それとも俺たちと同じように転移して来た人なのか。
だが、新しく見つけた神殿では人骨はなかった。
俺が二つの神殿の違いを指摘すると、三人とも二つの神殿の様子を思い出そうとしていた。
しばらくして、リクが口を開く。
「そう言えば、そうだな」
「なんで?」
「何でって言われても……何でだ?」
リクが口に手をあてて考え始めた。
いつものリクに戻っている。
黙って考えている姿もかっこいいぞ!
このイケメン野郎!
「それについては心当たりがあります」
一休みして復活した柴山さんが、アイテムボックスから本を取り出した。
日記とは違う本だ。
「これは神殿の案内書です。この本によれば、神殿には様々な機能があるようです。ええと……」
柴山さんがページをパラパラとめくる。
俺、リク、マリンさんの視線が、神殿の案内書に注がれる。
「あった! ここです! 『神殿の内外は、魔法で自動清掃を行う』、『経年劣化防止の魔法が建物の内外にかかっている』、『魔力は周囲から自動で取り込む』とあります」
ほうほう、そんな機能があるのか。
だったら、俺の推測が当たっているかもしれない。
俺は、推測を口にしてみた。
「それなら、日記に書いてあった『ジックザハラットが来る』って言うのは、かなり昔のことなんじゃないか?」
三人とも俺の推測がわからないとばかりに、首をかしげる。
柴山さんが俺に根拠を求めてきた
「かなり昔ですか……。ミッツさんは、なぜ、そう思われたのですか?」
「俺たちの拠点にあった神殿は、かなり古い感じだった。石自体にヒビが入っていたし、汚れも目立った」
「確かにそうですね」
「一方、新しく見つけた神殿は、新品って感じでかなりきれいだった」
「ええ。この案内書に書いてあるとおり、魔法で清掃をして、経年劣化を防止する魔法がかかっているからでしょう」
「ということは……。拠点の神殿は、その魔法の機能が故障していたんじゃないか? それで、時が経って神殿自体がボロになった……。だから、ジックザハラットについて書いてある日記は、かなり昔のことで、現在のことではない。どう? この推理? 名探偵?」
「「「……」」」
「えっ!? なんで、そこ黙るの!? 賞賛するところだろ!?」
「ミッツが、まともなことを話している……」
「明日は雨ですね……」
「雪じゃないですか……」
「オマエらヒドイぞ!」
三人からの俺への評価が明らかになった。
もう、泣きたい。
ガックリした俺をよそに、柴山さんが案内書の内容を要約して教えてくれた。
・ここの神殿は周辺の魔力を集める設備である。
・集められた魔力は、勇者を召喚する設備に送られていた。
・俺たちが転移した場所にあった神殿は、勇者を呼び込むための施設と思われる。
「――というわけで、僕たちは、ジックザハラットに対抗するための勇者召喚に巻き込まれてしまったのではないかと推察します」
それっきりみんな黙り込んだ。
まあ、そんなことなんじゃないかと思ってはいたけれど、日記や案内書というそれなりの根拠も示された。
誰も話そうとしないので、俺が柴山さんに話を振った。
「俺たちは神殿と呼んでいるけど、宗教施設じゃないんだな」
「いえ。宗教施設の側面もあるようです。集めた魔力を神に奉納して、勇者を召喚すると案内書にも、日記にも書いてあります」
「科学が進んでいるのだか、不思議世界なのか、よくわからないね。えっと……、じゃあ、新しく見つけた神殿は子機で、拠点にあった神殿が親機なのかな?」
「恐らくそうでしょう。この説明書によると、子機にあたる施設が八箇所あるそうです」
俺と柴山さんは、あれこれと神殿について話し合った。
俺は、俺が提示した推測について柴山さんの意見を聞いてみた。
「柴山さんは、どう思う?」
「可能性はあると思います。もちろん、断定は出来ませんが、確かに新たに発見した神殿と拠点にある神殿では様子が違います。もっと情報を集めたいですね。もし、ミッツさんの推測通りで、日記に書いてあることが、かなり昔のことだとしたら、ジックザハラットは、もういないかもしれません」
黙っていたリクが話に入ってきた。
「そうだな。現在のことか、過去のことか。ジックザハラットがいるのか、いないのか。もっと情報を集めないと……。引き続き町を探そう」
「マリンさんは?」
「そうねえ……。改めて、私たちが異世界転移したのが勇者召喚の影響だと聞かされてショックで……。でも、そこまで推測出来るようになってきたなら、日本に帰る方法が見つけられるかもしれない――と考えて、前向きに町を探しましょう!」
「よし! 決まりだ!」
俺たちは再び町を探すべく出発した。
新しく見つけた神殿には、置き手紙をした。
ひょっとしたら、拠点にいる誰かが、俺たちを探して、この神殿にたどり着くかもしれないからだ。
俺たちは、発見した神殿に別れを告げて、さらに南へ進んだ。
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