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第一章 異世界と奴隷のサラと大儲け

第10話 商人ギルドにて、売れそうな物を聞き込み

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 商人ギルドは、教会から歩いて五分もかからない場所にあった。
 宝石商の店と教会の丁度中間くらい。

 この辺りはどうやら商業地区らしく、お店が多い。
 覚えておこう。

 商人ギルドは、地味で小さな建物だった。
 二階建てでコンビニくらいの大きさしかない。

 意外だな。
 もっとキンキラキンの成金趣味かと思ったら質素だ。

 木製のドアを開けて中に入る。
 商人ギルドの中は、陽が射して明るく、掃除が行き届いているのか清潔な印象だ。
 木製の事務テーブルが置いてあり、そこで年輩の女性が書類仕事をしている。
 客は誰もいない。

「いらっしゃいませ。ご用件をうかがいます」

 俺たちが建物に入ると年輩の女性はすぐに顔を上げ、品良く挨拶した。
 うーん、自然な微笑み、この女性出来るな。

「お忙しい所、すいません。私はミネヤマと申しまして、宝石商のイシルダさんと取引をさせて頂いた者です。商売について相談にのって欲しいのですが」

「かしこまりました。そちらにお掛けになってお待ちください」

 窓際の応接イスとテーブルに案内された。
 この応接イスとテーブルは、悪い物ではなさそうだが、かなり古い。
 どうやら、この商人ギルドは質素倹約の気風であるようだ。

 俺は応接イスに座ったが、サラは俺のすぐ横で直立している。
 まあ、サラは護衛だから、立っていた方が良いのかも。

 すぐに品の良い服を着た白髪の老人がやって来た。

「お待たせしました。商人ギルドのギルド長サンマルチノでございます」

「ミネヤマと申します」

「ミネヤマ様の事は、宝石商のイシルダからうかがっております。ご商売の相談との事ですが?」

 サンマルチノさんの口調は穏やかで、目元に笑みがある。
 どうやら歓迎されているようだ。

「ええ。私は外国の出身でして、外国から珍しい物を仕入れるツテがございます」

「ほうほう! それで高品質の宝石をイシルダに売却されたのですな?」

「そうです。それで他にも何か売れる物がないかと思いまして、教えていただきたいのですが」

「なるほど。そう言う事ならお役に立てると思います」

 商人ギルド長サンマルチノさんとの会話は弾んだ。
 サンマルチノさんは、引退した商人で、ご自身の店は息子さんが切り盛りしているそうだ。
 引退して暇なので、商人ギルドのギルド長をやっているらしい。

「ご覧の通り小さな建物ですからな。この年寄りと事務の二人で切り盛りしております」

 商人ギルドは、加盟している商人たちが会費を払って運営しているそうだ。
 それで質素倹約なんだな。
 余計な所に金を使わない。

 四十歳独身貴族は、社会経験が豊富なのだ。
 派手に金を使う組織や美人受付嬢をこれみよがしに配置する会社は、数年と待たず倒産する。

 その点、この商人ギルドは、好感が持てる。

 俺は自分のアイデアをギルド長サンマルチノに話してみた。
 この街の衣料品は高い。
 安いシャツやズボンを日本で買って、この世界で売るのはどうだろうか?
 悪くないアイデアだと思う。

 だが、ギルド長サンマルチノは、衣料品を売るアイデアに良い顔をしなかった。

「ミネヤマ様個人としては、それで良いかもしれませんが、この街の服屋が倒産してしまいます。それでは困ってしまいます。既存の商人と住み分ける形でのご商売をお願いします」

 うーん、なるほど。
 完全な自由競争と言う訳にはいかないようだ。
 まあ、確かにこの街で活動している商人を敵に回すのは得策じゃないだろう。
 服はダメだな。

 結局、宝石商のイシルダと取引したように、この街の商人に卸売りをする事で話がまとまった。

「どんな商品が欲しいかは、私が商人たちに聞いておきましょう」

「助かります。また六日後か、七日後に顔を出します」

「それまでにある程度商人たちの希望をまとめておきます。ところで……ご領地の方はどうなさるおつもりでしょうか?」

 ご領地?
 何の事だろう?

 俺が黙っていると商人ギルド長サンマルチノが前のめりになって話を続けた。

「冒険者ギルドから聞きましたが、ミネヤマ様は新しくみつかったダンジョンの入り口の近くにお住まいとか?」

「ええ。魔の森の中です」

「と言う事は、あの一帯をミネヤマ様が開拓されていると?」

 えーと……どう答えよう。
 ある日ドアを開けたら魔の森の中だった……それが真相なのだけれど……。

 俺はあいまいに返事をする。

「む……。うーん……。うん……」

「開拓した土地は、開拓した者が領主となります。ですので、ミネヤマ様のお住まい周囲の土地と新しいダンジョンの権利は、ミネヤマ様がお持ちになる事になるかと」

 えっ!?
 そうなの!?
 あの辺りは俺の領地になっちゃうの!?

 俺は考え込むふりをして、手で表情を隠し、下を向いた。

 四十歳独身貴族、異世界で領主になる!
 契約社員から大出世のビッグチャンス!

 金も、女も、名誉も手に出来る……。
 く、黒い欲望が……。

 いや、でも、待て! 待て!
 そう上手く行くか?

 俺はいかめしい表情を作って返事をする。

「どうでしょう。私の領地になるでしょうか?」

「ミネヤマ様は外国の貴族ですから、問題なく国に認められるでしょう」

 そ……そうか!
 俺の家の周りは、俺の領地で当確!
 やった!

 俺が内心小躍りをしていると商人ギルド長サンマルチノが、揉み手で擦り寄って来た。

「ミネヤマ様。ご領地でのご商売に、ぜひ我々も加わらせていただけませんか?」

 なるほど……商人ギルド長サンマルチノの狙いは、新しい領地の利権ですか……。
 うーん、どうだろうな。
 あまり沢山の人が関わると、人間関係も商売関係もゴチャゴチャしそうだ。
 俺は、はぐらかす事に決めた。

「さて、どうでしょう。領地と言っても、まだ、私一人が住んでいるだけですし」

「いえいえ。ダンジョンの入り口が見つかったと言う事は、将来そこに街が出来る事は間違いございません!」

「ふむ……」

 そう言う物なのか?
 どうもこの世界の事はまだわからないが……。
 とにかく俺の家がある場所は、意外と好立地なのだな。

「商人ギルドといたしましても、色々と融通を利かせますので……ぜひ……」

「お約束は出来ませんが、何かあったらご相談をさせていただきます」

 商人ギルド長サンマルチノが食い下がるが、日本人らしくあいまいな返事でかわした。
 まあ、商人ギルドには、まだ何もしてもらってないからね。
 何か約束してやる義務も義理も無い。

 四十歳独身貴族は、甘くないのだよ。

 話を切り上げて、商人ギルドを出ようとするとサンマルチノが一枚の羊皮紙を手渡して来た。

「こちらをどうぞお持ちください。ミネヤマ様が商人ギルドのお客様である旨が書いてございます。これを門番に見せていただければ、いつでも街へ出入り出来ます」

 おっ! 助かるな!
 早速、融通を利かせて来た。
 ここは素直に感謝しておこう。

「助かります。それでは、また寄らせて貰います」
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