上 下
6 / 42
第一章 冒険者から始めよう!

第6話 また、ワケあり風の面接者

しおりを挟む
 片山さんに褒められて、俺は機嫌良く面接を続けた。
 だが、良いと思える人は、なかなか現れなかった。

「片山さん。なかなか良い人がいなくて……。俺がわがままなのでしょうか?」

「いえ、そんなことはありません。冒険者パーティーは、長い時間を一緒に過ごしますから、相性の良い人と組んだ方が良いです」

「そうか……、そうですよね!」

「むしろ相性の悪い人を面接で弾いていると考えてください」

 そういう考え方もあるのか!
 俺は気を取り直して、次の冒険者さんの書類に目を通す。

(おやっ?)

 次の人は、住所が埼玉県だ。
 ここH市から電車で二時間かかる場所に住んでいる。

 これまで申し込んできた人は、同じH市の人や同じ沿線の人が多かった。
 俺は不思議に思い片山さんに聞いてみることにした。

「片山さん。次の人は、埼玉から来たみたいですよ。遠いですね」

「そうですね。彼女は住み込み希望ですよ。独身女性で住み込み希望は、珍しいですね」

「えっ!? 本当だ!」

 片山さんに指摘されて気が付いたが、住み込み希望と書いてある。

 年齢は二十三才。
 履歴書では一流大学を卒業して、一流企業に就職している。

 一流企業をやめて、冒険者に……。
 謎だな……。

「バトルジャンキーみたいな人でしょうか? 戦闘が好きで会社を辞めて冒険者になったとか?」

「どうでしょう……。会社を辞めた理由が聞きたいですね……」

「そうですね……。冒険者登録は……うわ! 一月一日だ!」

「初心者さんですね。けど、スキルは魅力的ですよ」

 ジョブは、『巫女』。
 スキルは、『回復魔法★3』だ。

 片山さんの言う通りスキル『回復魔法★3』は魅力的だ。

「回復魔法★3は、回復量が多く、MPの消費が抑えられています。長時間ダンジョンで活動出来ます」

「採用したい人材ですね……」

 次の面接者、今話していた女性が入室してきた。

「御手洗静香です。よろしくお願いします」

 御手洗さんは、きちんとビジネススーツを着てきた。
 面接に普段着で来る人が多かったのもあって、御手洗さんが物凄くちゃんとした人に見える。

 会話してみたが、話しぶりも落ち着いていて、特に問題はなさそうだ。

 俺は気になっていた点を質問してみた。

「差し障りなければ、会社を辞めた理由と冒険者になった理由を教えていただけますか?」

「はい。私は――」

 そこからは、スラスラと答えが返ってきた。

 ・デスクワークが合わなかった。
 ・学生時代スポーツをやっていたので、体を動かす方が好き。
 ・冒険者は体を動かす仕事なので、自分に向いていそう。
 ・住み込みをして将来の為に、お金を貯めたい。

 ごく自然なしゃべり方で、聞いていて『なるほど』と思える話だった。
 ただ、俺は違和感を覚えた。

(ああ、これは事前に用意していた答えだな……)

 あまりにも自然にスラスラと退職理由を話していたのが、逆に不自然なのだ。
 多分、本当の理由は他にあるのだろう。

 御手洗さんが退室すると、俺は軽くため息をついた。

「本当のことは、話してくれませんでしたね」

 片山さんも、書類をトントンと揃えながらうなずく。

「そうですね。退職理由は、話しづらいでしょうから仕方ないですね」

 御手洗さんの受け答えは、そつなく、話しぶりは落ち着いていた。
 俺なんかより、よほど仕事が出来るのだろう。

(冒険者より、元の会社の方が向いていると思うけど……)

 俺は御手洗さんの書類に『検討』と鉛筆で記入した。

 その日、夕方までかけて面接をしたが、クセのある人が多く、なかなか良い人に当たらなかった。

 俺は、少し引っかかりを覚えながらも、御手洗さんに合格通知を送った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。 しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。 『ハズレスキルだ!』 同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。 そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!

やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり 目覚めると20歳無職だった主人公。 転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。 ”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。 これではまともな生活ができない。 ――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう! こうして彼の転生生活が幕を開けた。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

処理中です...