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第十章 レッドアラート!

第295話 新たな銃

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 ホレックのおっちゃんについて行くと、実験工房の隣に木製の建物が出来ていた。
 中に入ると人族十人が働いている。彼らが操作しているのは、工作機械だ!

「工作機械か……出来たんだ!」

 俺は思わず声を上げた。

 それほど広くない建物の中には、手動式だが工作機械が並んでいた。

 薬莢や銃弾は手動式の金属プレス機で成形され、プレス機にかける金属板は、手動式の金属圧延機で造られている。

 リス族のキューが、胸を反らして説明を始めた。

「ご覧の通りテコの原理と金属ギヤを使って、人族の力でも動かせる工作機械を製作しました。以前、アンジェロ陛下がお話しになっていたので、研究していたのですよ」

「やるもんだね! まさか機械化されているとは思わなかったよ!」

「ありがとうございます! しかし、薬莢に火薬を詰めるのは、別の建屋で手作業で行っています。生産数は、一時間に十個、一日百個が限界です」

 銃弾の生産量を聞いて、俺は計算をしてみた。

「すると……工房の規模を大きくして、十倍の人数をかけたとしても、一日に銃弾千発。一月で銃弾三万発か……」

 俺は腕を組んで考え込んだ。
 一人で使うなら月三万発の銃弾は、十分だろう。
 しかし、地球世界の陸軍のように、歩兵全員にライフル銃を装備させて前線に投入した場合はどうだろうか?

 極論だが、一万の軍勢が三発撃ったら弾切れだ。
 ライフル銃は、ただの鈍器に早変わり。

 銃弾の生産量が足りない。

 では、全部隊にライフル銃を支給しないで、一部隊だけに支給するか?
 戦国時代の火縄銃のような運用方法?
 それとも一部隊に一人、スナイパーを配置するとか?

 俺が少ない弾丸で、どうライフル銃を運用するか悩んでいると、ホレックのおっちゃんがニヤリと笑った。

「タマが足りねえだろう?」

「そうだね……。俺のイメージする運用方法だと銃弾が足りない……」

「わかるぜ! 俺もキューも、アンジェロのにいちゃんが話してくれた『銃での戦い方』を、ちゃんと覚えていてよ。兵士一人が一時間で何十発と銃弾を放つんだろ? そうなりゃ、千発だろうが、一万発だろうが、すぐになくなっちまう」

 おや?
 ホレックのおっちゃんは、俺が指摘するまでもなく問題点を理解していた。
 リス族のキューが、ホレックのおっちゃんの隣に立ちおっちゃんと二人でニヤニヤ笑いながら話を続けた。

「そこで我々は考えました! 少ない銃弾でこの銃を生かす方法はないだろうかと! そこで、得た結論がこの銃弾です!」

 リス族のキューが、銃弾を取り出した。
 先ほど見せてもらった銃弾と少し違うのは、弾頭に模様が入っている。

「この模様は何だ?」

「撃ってみればわかります! さあ、アンジェロ陛下! 試射をどうぞ!」

 俺はリス族のキューにうながされ建屋の外に出た。荒地に射撃の的が設置されている。

 木製のテーブルと椅子が置いてあるので、椅子に座りライフルをテーブルにのせる形で構えた。

「撃つ!」

 俺は一言告げるとライフルの引き金を引いた。

 ダン!

 現代の火薬と種類が違うからだろうか、かなり大きな音と強いノックバックが起きた。

 だが、幸い銃弾は的に向かって真っ直ぐ飛んだ。

 銃弾は、的に命中すると同時に爆発を起こし、強烈な爆風を巻き上げた。

 その爆発は火薬の爆発とは異質なもので、俺は爆発の瞬間に魔力が動くのを感じた。

「えっ⁉︎」

 爆発はかなり大きく、的の周囲に盛られた土も吹き飛ばした。
 耳がキーンとする。

「これ……。爆裂魔法……?」

 俺は耳鳴りに顔をしかめながら、ホレックのおっちゃんとキューに向き直る。

 二人は耳を押さえていた手を下ろし、心底嬉しそうに笑った。

「どうだ!」
「弾頭の内部に火属性の魔石を詰め、弾頭をコーティングしたミスリルに爆裂魔法の魔法陣を刻んだのです!」

  なるほど、少ない銃弾数をカバーするために、一発の威力を高めたのか。それも、この異世界独自の方法、魔法を使って解決しやがった。これは予想外だ。

 俺は手の中にあるライフル銃を見つめつぶやいた。

「なるほど……。魔銃か!」
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