275 / 358
第十章 レッドアラート!
第275話 説明(肉体による)
しおりを挟む
なぜかは、知らないが……。
俺は祝勝会で、赤ら顔のベロイア貴族にからまれてしまった。
「まったく! 皆殺しにすれば良いものを! アンジェロ陛下は、甘い!」
赤ら顔の貴族は、そう言うと銀杯からワインをあおった。
俺の隣に座るベロイア国王カール三世が、慌てて赤ら顔の貴族を叱る。
「これ! スコーン伯爵! 行儀良くせんか!」
「何をおっしゃるのですか! 我らの国の行く末が、かかった話なのですぞ? 行儀良くなどしていられませんぞ!」
「しかしだな――」
「しかしもヘチマもありません! 攻めてきた連中を皆殺しにしておけば、後腐れがなかったのですよ! アンジェロ陛下! そこのところは、どうなのですか?」
俺が酔っ払いにからまれているのだが、護衛役の黒丸師匠は全く気にしていない。
すました顔でワインを飲んでいる。
俺の婚約者であるルーナ先生にいたっては、自分で持ち込んだフライドチキンとクリスマスケーキをパクつき、クリスマスを満喫中だ。
しょうがないなあ……。
俺は面倒だと思いながらも、スコーン伯爵の相手をすることにした。
グンマー連合王国総長として、威厳をもって答えた。
「スコーン伯爵。皆殺しというが、敵とはいえ十万を殺すのは、気が進まぬ」
「それは我がベロイアのことだからだ! 他人事だからじゃないですか?」
「そうではない。十万の内訳は、ロクな装備もない一般人だったのだ。命のやり取りを覚悟した騎士団相手ならともかく、一般人相手では、さすがに風聞が悪かろう」
「だーかーら! それが他人事だと言っているのですよ!」
スコーン伯爵のボルテージは、上がりっぱなしだ。
右手に持った銀杯に注がれたワインをちょいちょいやりながら、得意げに話している。
なんか腹が立ってきたな……。
「女性もいたのだぞ? 女兵士ではなく、一般人の女性だ!」
「それがナンです? 攻め込んで来たら、敵であることにかわりないでしょう?」
「いや、彼ら彼女らは、扇動されただけだ。それに、イチイチ敵を皆殺しにしていては、大陸北西部の労働力が激減する。飢饉が発生しかねん!」
「イヤイヤイヤ~。言い訳だな~。軍事支援に来た限りは、きっちり働いてくださいよ~」
「スコーン伯爵――」
いい加減にしろと言おうとしたら、スコーン伯爵は顔を俺に近づけて酒臭い息を吐きかけやがった。
「……」
どうやら、この赤ら顔の貴族――スコーン伯爵は、俺が現役の冒険者であり、今よりも小さな頃からあちこち遠征しては、居酒屋でどんちゃん騒ぎをしていたのを知らないらしい。
ダンジョン探索打ち上げの席で、強面冒険者にからまれるなんて日常茶飯事……。
俺は、『いたいけな少年王』ではないぞ。
この程度でビビって退くと思ったか?
そもそも、この人たちだけでは対処できないから、俺たちが軍事支援で出張ってきたのだ。
敵を追い払って、少なくとも直近の危機は回避してやったのだ。
敵に対してどんな対応をしようが、文句を言われる筋合いはない。
だいたい皆殺しにしろと気軽に言うが、十万人を目の前で見てみろ!
憎くもない相手を十万人も殺せるわけがない。
サイコパスかオマエは!
俺は近くにあったワインを勢いよく飲むと、酔っ払いのスコーン伯爵にケンカを吹っかけた。
「息がクセえよ」
「は……?」
俺の乱暴な言葉遣いをスコーン伯爵は、聞き間違えだと思ったのだろう。
きょとんとした顔で聞き返してきやがった。
「えーと……今、何ておっしゃったのです?」
俺はおもむろに立ち上がると、スコーン伯爵のアゴめがけてアッパーカットをぶちかました。
「息がクセえっつってんだ! このデコ助野郎!」
「グハッ!」
派手に吹っ飛ぶスコーン伯爵。
俺は祝勝会会場を見回して啖呵を切った。
「文句のあるヤツはかかってこい! 腰抜けでなければ、拳で語れ!」
すると次々にベロイア貴族が名乗りを上げた。
「ぬう! 腰抜け呼ばわりとは!」
「騎士の面目を潰すか!」
「許さぬ!」
俺が、まだ子供と侮ったな。
ベロイア貴族が、俺に向かって次々に突撃してきた。
俺は飛行魔法を発動して、横にジャンプすると壁を蹴って反動をつけた。
右手にベロイア貴族の頬をとらえる。
「ゲホッ!」
勢いが拳にのった。
イイ手応えが、右拳に伝わる。
一人のベロイア貴族が倒れると同時に、次の貴族が俺に蹴りをみまおうとした。
その貴族が蹴りの体勢の途中で、真横にすっ飛んだ。
黒丸師匠だ!
「おお! アンジェロ少年! ステゴロであるな! それがしも参戦するのである!」
言うが早いか、駆け寄ってきたベロイア貴族を、楽しそうにぶん殴った。
「うおおおお! ルーナ・ブラケット見参!」
そして両手にフライドチキンを握りしめたルーナ先生が、ベロイア貴族にフライングボディプレスをお見舞いした。
やられた貴族男性は、若干嬉しそうな気配を漂わせているのは、なぜだ?
この祭り好き師匠どもめ!
――この後、散々殴り倒した。
俺たちの説明(肉体による)に、納得してくれたベロイア貴族たちは、全員が直立不動で俺たちを見送ってくれた。
両国関係は前向きに改善されたと判断する!
俺は祝勝会で、赤ら顔のベロイア貴族にからまれてしまった。
「まったく! 皆殺しにすれば良いものを! アンジェロ陛下は、甘い!」
赤ら顔の貴族は、そう言うと銀杯からワインをあおった。
俺の隣に座るベロイア国王カール三世が、慌てて赤ら顔の貴族を叱る。
「これ! スコーン伯爵! 行儀良くせんか!」
「何をおっしゃるのですか! 我らの国の行く末が、かかった話なのですぞ? 行儀良くなどしていられませんぞ!」
「しかしだな――」
「しかしもヘチマもありません! 攻めてきた連中を皆殺しにしておけば、後腐れがなかったのですよ! アンジェロ陛下! そこのところは、どうなのですか?」
俺が酔っ払いにからまれているのだが、護衛役の黒丸師匠は全く気にしていない。
すました顔でワインを飲んでいる。
俺の婚約者であるルーナ先生にいたっては、自分で持ち込んだフライドチキンとクリスマスケーキをパクつき、クリスマスを満喫中だ。
しょうがないなあ……。
俺は面倒だと思いながらも、スコーン伯爵の相手をすることにした。
グンマー連合王国総長として、威厳をもって答えた。
「スコーン伯爵。皆殺しというが、敵とはいえ十万を殺すのは、気が進まぬ」
「それは我がベロイアのことだからだ! 他人事だからじゃないですか?」
「そうではない。十万の内訳は、ロクな装備もない一般人だったのだ。命のやり取りを覚悟した騎士団相手ならともかく、一般人相手では、さすがに風聞が悪かろう」
「だーかーら! それが他人事だと言っているのですよ!」
スコーン伯爵のボルテージは、上がりっぱなしだ。
右手に持った銀杯に注がれたワインをちょいちょいやりながら、得意げに話している。
なんか腹が立ってきたな……。
「女性もいたのだぞ? 女兵士ではなく、一般人の女性だ!」
「それがナンです? 攻め込んで来たら、敵であることにかわりないでしょう?」
「いや、彼ら彼女らは、扇動されただけだ。それに、イチイチ敵を皆殺しにしていては、大陸北西部の労働力が激減する。飢饉が発生しかねん!」
「イヤイヤイヤ~。言い訳だな~。軍事支援に来た限りは、きっちり働いてくださいよ~」
「スコーン伯爵――」
いい加減にしろと言おうとしたら、スコーン伯爵は顔を俺に近づけて酒臭い息を吐きかけやがった。
「……」
どうやら、この赤ら顔の貴族――スコーン伯爵は、俺が現役の冒険者であり、今よりも小さな頃からあちこち遠征しては、居酒屋でどんちゃん騒ぎをしていたのを知らないらしい。
ダンジョン探索打ち上げの席で、強面冒険者にからまれるなんて日常茶飯事……。
俺は、『いたいけな少年王』ではないぞ。
この程度でビビって退くと思ったか?
そもそも、この人たちだけでは対処できないから、俺たちが軍事支援で出張ってきたのだ。
敵を追い払って、少なくとも直近の危機は回避してやったのだ。
敵に対してどんな対応をしようが、文句を言われる筋合いはない。
だいたい皆殺しにしろと気軽に言うが、十万人を目の前で見てみろ!
憎くもない相手を十万人も殺せるわけがない。
サイコパスかオマエは!
俺は近くにあったワインを勢いよく飲むと、酔っ払いのスコーン伯爵にケンカを吹っかけた。
「息がクセえよ」
「は……?」
俺の乱暴な言葉遣いをスコーン伯爵は、聞き間違えだと思ったのだろう。
きょとんとした顔で聞き返してきやがった。
「えーと……今、何ておっしゃったのです?」
俺はおもむろに立ち上がると、スコーン伯爵のアゴめがけてアッパーカットをぶちかました。
「息がクセえっつってんだ! このデコ助野郎!」
「グハッ!」
派手に吹っ飛ぶスコーン伯爵。
俺は祝勝会会場を見回して啖呵を切った。
「文句のあるヤツはかかってこい! 腰抜けでなければ、拳で語れ!」
すると次々にベロイア貴族が名乗りを上げた。
「ぬう! 腰抜け呼ばわりとは!」
「騎士の面目を潰すか!」
「許さぬ!」
俺が、まだ子供と侮ったな。
ベロイア貴族が、俺に向かって次々に突撃してきた。
俺は飛行魔法を発動して、横にジャンプすると壁を蹴って反動をつけた。
右手にベロイア貴族の頬をとらえる。
「ゲホッ!」
勢いが拳にのった。
イイ手応えが、右拳に伝わる。
一人のベロイア貴族が倒れると同時に、次の貴族が俺に蹴りをみまおうとした。
その貴族が蹴りの体勢の途中で、真横にすっ飛んだ。
黒丸師匠だ!
「おお! アンジェロ少年! ステゴロであるな! それがしも参戦するのである!」
言うが早いか、駆け寄ってきたベロイア貴族を、楽しそうにぶん殴った。
「うおおおお! ルーナ・ブラケット見参!」
そして両手にフライドチキンを握りしめたルーナ先生が、ベロイア貴族にフライングボディプレスをお見舞いした。
やられた貴族男性は、若干嬉しそうな気配を漂わせているのは、なぜだ?
この祭り好き師匠どもめ!
――この後、散々殴り倒した。
俺たちの説明(肉体による)に、納得してくれたベロイア貴族たちは、全員が直立不動で俺たちを見送ってくれた。
両国関係は前向きに改善されたと判断する!
18
お気に入りに追加
4,057
あなたにおすすめの小説

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

元外科医の俺が異世界で何が出来るだろうか?~現代医療の技術で異世界チート無双~
冒険者ギルド酒場 チューイ
ファンタジー
魔法は奇跡の力。そんな魔法と現在医療の知識と技術を持った俺が異世界でチートする。神奈川県の大和市にある冒険者ギルド酒場の冒険者タカミの話を小説にしてみました。
俺の名前は、加山タカミ。48歳独身。現在、救命救急の医師として現役バリバリ最前線で馬車馬のごとく働いている。俺の両親は、俺が幼いころバスの転落事故で俺をかばって亡くなった。その時の無念を糧に猛勉強して医師になった。俺を育ててくれた、ばーちゃんとじーちゃんも既に亡くなってしまっている。つまり、俺は天涯孤独なわけだ。職場でも患者第一主義で同僚との付き合いは仕事以外にほとんどなかった。しかし、医師としての技量は他の医師と比較しても評価は高い。別に自分以外の人が嫌いというわけでもない。つまり、ボッチ時間が長かったのである意味コミ障気味になっている。今日も相変わらず忙しい日常を過ごしている。
そんなある日、俺は一人の少女を庇って事故にあう。そして、気が付いてみれば・・・
「俺、死んでるじゃん・・・」
目の前に現れたのは結構”チャラ”そうな自称 創造神。彼とのやり取りで俺は異世界に転生する事になった。
新たな家族と仲間と出会い、翻弄しながら異世界での生活を始める。しかし、医療水準の低い異世界。俺の新たな運命が始まった。
元外科医の加山タカミが持つ医療知識と技術で本来持つ宿命を異世界で発揮する。自分の宿命とは何か翻弄しながら異世界でチート無双する様子の物語。冒険者ギルド酒場 大和支部の冒険者の英雄譚。

転生したらスキル転生って・・・!?
ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。
〜あれ?ここは何処?〜
転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる