57 / 358
第三章 領地開発
第57話 エルフからのオファー
しおりを挟む
なぜ! そうなる!
俺の頭の中は『?』マークで一杯だった。
俺とルーナ先生が結婚する事になった。それは、なぜですか?
会議の場は混乱している。
事情を知っているエルフたちは手を叩いてルーナ先生を祝福しているが、じいやジョバンニは眉根を寄せて困惑顔だし、黒丸師匠やホレックのおっちゃんは口を開けてポカーンとしている。
「あの! ルーナ先生! 俺とルーナ先生が結婚するのですか?」
「そうだ」
「それは……なぜ?」
「嫌なのか!」
ルーナ先生がギロリと俺を睨んだ。
物凄い迫力……ドラゴンも裸足で逃げるとはこの事、いや、ドラゴンはもちろん裸足だが。
ルーナ先生と結婚するのは嫌ではない。
美人のハイエルフと結婚するなんて、異世界ロマンの塊だ。
嫌どころかむしろ望むところ。
それにルーナ先生は何気に面倒見が良いし、料理も上手だ。
尻には敷かれそうだが、良い奥さんになってくれると思う。
俺も今は十才だが、そのうち結婚に相応しい年齢になるだろう。
長命種のエルフ族はなかなか老化せず、いつまでも美しいそうだ……まあ、あれだ、楽しめるよ。
「嫌ではないですよ。ルーナ先生と結婚できるなら嬉しいですよ」
「そうか。そうか」
ルーナ先生の表情は変わらないが、喜んでいるのが丸わかりだ。
子供みたいにピョコピョコと左右に頭を揺らすのは止めて欲しい。
「ただ、突然の事で驚いています。事情をちゃんと説明して下さい」
「うむ。まずエルフ族全体として今回の件は非常に感謝している」
「奴隷だったマリー・ギルベンダさんを俺が買い取って、エルフの里に帰した事ですね?」
「そうだ。マリーのご両親は涙を流して喜んでおられた。これはギルベンダ家からアンジェロへの感謝の手紙だ」
ルーナ先生は、丸められた羊皮紙を差し出した。紐で閉じられ赤いロウで封がしてある。赤いロウには立派なデザインの紋章が押されていた。
「その紋章はギルベンダ家の家紋で、炎の精霊を表している」
家紋が押してあるって事は、この手紙はギルベンダ家からの公式な文章という事だ。
手紙を開いてみると丁寧な文章で今回の礼が述べられ、ギルベンダ家は俺に力添えをすると書かれていた。
手紙をじいに渡して他のメンバーにも見せろと指示する。
ただ、これだけでは、俺とルーナ先生が結婚する事情は読み取れない。
「ギルベンダ家が喜んでくれて良かったです。それから?」
「ギルベンダ家と私はエルフの里の長老会議に、この件を報告した」
「長老会議?」
「エルフの里の有力者の集まりで、エルフ族の意思決定機関だ。エルフ族の重要事項は長老会議で決められる」
ルーナ先生は淡々と報告しているが、随分と大事になったみたいだ。
「エルフが奴隷にされるのは、それだけ大変な事と……」
「そうだ。エルフの里には、大きな衝撃だった。長老会議では今回の事が話し合われた。私も参加した」
「ルーナ先生も?」
「当然だ。私も長老会議のメンバーだ。まあ出歩いてばかりでエルフの里にはいないが」
ルーナ先生はエルフの上位種ハイエルフだから、長老会議のメンバーなのは当然と言えば当然か。
ルーナ先生はさっきとは別の羊皮紙の手紙を俺に渡して来た。
「そして長老会議でこの手紙の内容が決定した。この手紙はエルフ族からアンジェロへの公式な通知であり契約となる」
受け取った羊皮紙の手紙は、ギルベンダ家からの手紙と同じくロウで封がしてある。今度は緑色のロウだ。風や木のモチーフの紋様がロウに押されている。
手紙を開き、二枚の手紙を一読する。
すぐにじいに手紙を回す。
「――これは!」
じいは驚き手紙を手に持ったまま凝視している。
じいの周りに他のメンバーが集まって来て、じいの手元の手紙を覗き込み次々と驚きの声をあげた。
「なんと!」
「ええ!」
ルーナ先生が説明を続ける。
「エルフの里は今回の件を解決するのに尽力したアンジェロに感謝し、『エルフの友』の称号を贈る事となった。この称号はあくまで名誉であって、何か報酬や特典が伴う物ではない」
「それがこの一枚目の手紙ですね」
「そうだ」
「重要なのは二枚目ですね」
「うむ。エルフの里からは、魔道具技術者四名をアンジェロ領に派遣する。またエルフ族はアンジェロ領で魔道具を開発・販売する事を認める。それと引き換えにアンジェロは今後『エルフの友人』として、人族領域において困難な状況のエルフ族を見つけた場合は、保護する事とする」
「じゃあ、ルーナ先生に同行して来たエルフたちは魔道具技術者ですか?」
「そうだ。好きに使うと良い」
これはデカイな。飛行機開発が一気に進む。
魔道具技術者四人はありがたい。
それに魔道具を専売しているエルフ族が、俺に対して魔道具の販売を許可した事も凄い事だ。
飛行機は売る気はないが、他の魔道具を開発出来たら領地の大きな収入源になる。
奴隷になっていたマリー・ギルベンダを救った恩が、何倍――いや、何十倍になって返って来た。
周りを見ると、じいやジョバンニはかなり興奮している。アンジェロ領が大いに発展する可能性が見えたからな。
さて、それはそれとして……。
「ルーナ先生。ここまではわかりました。それで手紙の続きの一文ですが……」
「私の口から話すのは恥ずかしい」
「じい! 読んで!」
「はっ! 『アンジェロ・フリージアは、ルーナ・ブラケットを妻とする』と書いてございます」
ルーナ先生は、両手を頬にあててイヤイヤしている。
だからさ。わかんないよ。
「あの発言をよろしいでしょうか?」
ルーナ先生が連れて来た四人のエルフの内、男性のエルフが手を上げた。
サラサラの銀髪ロングヘアの細身のイケメンだ。
「どうぞ」
「長老会議としては、人族領域でエルフ族が安全に活動出来るようにしたいと考えています。そこでアンジェロ様を味方につけ、今回マリー・ギルベンダを奴隷から開放されたお礼になる事を考えた結果、その手紙の内容になったのです」
「なるほど。魔道具開発販売の件と技術者派遣は、お礼としても、俺がエルフ族を保護する交換条件としてもわかるが、ルーナ先生との結婚は? ルーナ先生を好きにして良いよって意味ですか?」
「いやいや、好きにしてなんて――」
「ルーナ先生、ちょっと黙って!」
ルーナ先生、クネクネするのは止めて下さいよ……。
「ハハハ、まあご結婚されたらお好きになさればよろしいでしょう。アンジェロ様とルーナ・ブラケットの結婚は、いわゆる政略結婚ですね」
「ああ。そういう……。婚姻関係を結ぶことで友好を深める的な?」
「その通りです。これは私の聞いた話ですが……。長老会議ではルーナ・ブラケットがアンジェロ様に便宜を図ろうと、かなりがんばったそうですよ。ギルベンダ家も積極的に賛同し、全体としてはその手紙に書いてある内容でまとまっていたのですが反対派もおりまして」
「反対派?」
「そうです。人族が信用できないとか、そもそもエルフの里から外に出るのが間違っているとか。あくまで少数でしたが」
まあ、そういう主張をする人がいても仕方ないだろう。
現にマリーさんが奴隷にされていたのだから。
「そこで。その少数派を納得させる為に、あれこれ試行錯誤して出て来たのが、アンジェロ様とルーナ・ブラケットの結婚です」
「婚姻同盟みたいなものか」
この世界だと婚姻同盟は割とポピュラーな外交手段だ。
フリージア王国も隣国のニアランド王国と婚姻同盟を結んでいる。第一王子のポポ兄上の母君がニアランド王国の出身だ。
フリージア王国とニアランド王国は仲が悪かったが、婚姻同盟を結んだことでここ十年以上戦争をしていない。
現代日本人の感覚だと婚姻同盟の有効性なんて、今一ピンと来ないけどフリージア王国とニアランド王国の関係を考えると婚姻同盟も案外バカにならないな。
俺が婚姻同盟に思いを巡らせていると、銀髪イケメンエルフが力を込めてテーブルを叩いた。
「それと! その続きが非常に重要なのですよ! エルフ族は期待しておりますし、私たちがここへ来たのもそれが目当てです!」
「続き?」
ああ、そう言えば何か書いてあったな。『結婚』のインパクトが強くて、見落としていた。
じいが続きを読み始めた。
「えー、『アンジェロ・フリージアは、エルフ族に対して地球料理のレシピを提供する。即ちハンバーグ、グリル料理、マヨネーズ、柔らかいパンである。また、追加で三つの地球料理レシピを提供する物とする』」
しまった! エルフ族は、どうやら胃袋で意思決定をしたらしい。
ルーナ先生が胸を張って言う。
「レシピについては、私が既に教えて来た」
「四種類も大盤振る舞いでしたね」
「大好評だった」
まあ、地球料理のレシピは、俺とルーナ先生の共同開発みたいなものだから良いけど。
しかし、エルフ族の連中は俺が異世界から転生した事を信じたのかな? 信じたとしても主に胃袋で信じたのだろうけど。
「続きを読みます。『なおこの契約はエルフ族とアンジェロ・フリージアの間で締結する』。ほう、これは重要な意味がありますな!」
「じい、どういう事?」
「この契約はあくまでもエルフ族とアンジェロ様の間の契約であって、フリージア王国は関係ないという事です。国は横やりを入れられません。魔道具販売の権利を取り上げられないで済みます」
「あっ! そうか!」
「その方が良いだろうと思った。アンジェロはポポと仲が悪い」
「別に兄上とは……。いや、まあ、とにかくルーナ先生ありがとうございました!」
「礼には及ばない。未来の旦那様の為」
今日のルーナ先生は乙女だ。
そして四人のエルフの自己紹介を受けて、今日の会議は解散にした。
会議の後ルーナ先生と二人で話しをした。
「意外でした。ルーナ先生が俺と結婚するとは」
「私はハイエルフ。エルフ族の中でも特異な存在。人族の中で特異な存在のアンジェロと釣り合う」
「ああ、そういう考え方もあるのですね。てっきり美少年趣味なのかと思いました」
「アンジェロは成長すれば私と釣り合う良い男になる。イケメンに成長する事を命じる」
「その命令は、師匠として? 婚約者として?」
「アンジェロを愛する女として」
「では全力でご期待に応えます」
俺の頭の中は『?』マークで一杯だった。
俺とルーナ先生が結婚する事になった。それは、なぜですか?
会議の場は混乱している。
事情を知っているエルフたちは手を叩いてルーナ先生を祝福しているが、じいやジョバンニは眉根を寄せて困惑顔だし、黒丸師匠やホレックのおっちゃんは口を開けてポカーンとしている。
「あの! ルーナ先生! 俺とルーナ先生が結婚するのですか?」
「そうだ」
「それは……なぜ?」
「嫌なのか!」
ルーナ先生がギロリと俺を睨んだ。
物凄い迫力……ドラゴンも裸足で逃げるとはこの事、いや、ドラゴンはもちろん裸足だが。
ルーナ先生と結婚するのは嫌ではない。
美人のハイエルフと結婚するなんて、異世界ロマンの塊だ。
嫌どころかむしろ望むところ。
それにルーナ先生は何気に面倒見が良いし、料理も上手だ。
尻には敷かれそうだが、良い奥さんになってくれると思う。
俺も今は十才だが、そのうち結婚に相応しい年齢になるだろう。
長命種のエルフ族はなかなか老化せず、いつまでも美しいそうだ……まあ、あれだ、楽しめるよ。
「嫌ではないですよ。ルーナ先生と結婚できるなら嬉しいですよ」
「そうか。そうか」
ルーナ先生の表情は変わらないが、喜んでいるのが丸わかりだ。
子供みたいにピョコピョコと左右に頭を揺らすのは止めて欲しい。
「ただ、突然の事で驚いています。事情をちゃんと説明して下さい」
「うむ。まずエルフ族全体として今回の件は非常に感謝している」
「奴隷だったマリー・ギルベンダさんを俺が買い取って、エルフの里に帰した事ですね?」
「そうだ。マリーのご両親は涙を流して喜んでおられた。これはギルベンダ家からアンジェロへの感謝の手紙だ」
ルーナ先生は、丸められた羊皮紙を差し出した。紐で閉じられ赤いロウで封がしてある。赤いロウには立派なデザインの紋章が押されていた。
「その紋章はギルベンダ家の家紋で、炎の精霊を表している」
家紋が押してあるって事は、この手紙はギルベンダ家からの公式な文章という事だ。
手紙を開いてみると丁寧な文章で今回の礼が述べられ、ギルベンダ家は俺に力添えをすると書かれていた。
手紙をじいに渡して他のメンバーにも見せろと指示する。
ただ、これだけでは、俺とルーナ先生が結婚する事情は読み取れない。
「ギルベンダ家が喜んでくれて良かったです。それから?」
「ギルベンダ家と私はエルフの里の長老会議に、この件を報告した」
「長老会議?」
「エルフの里の有力者の集まりで、エルフ族の意思決定機関だ。エルフ族の重要事項は長老会議で決められる」
ルーナ先生は淡々と報告しているが、随分と大事になったみたいだ。
「エルフが奴隷にされるのは、それだけ大変な事と……」
「そうだ。エルフの里には、大きな衝撃だった。長老会議では今回の事が話し合われた。私も参加した」
「ルーナ先生も?」
「当然だ。私も長老会議のメンバーだ。まあ出歩いてばかりでエルフの里にはいないが」
ルーナ先生はエルフの上位種ハイエルフだから、長老会議のメンバーなのは当然と言えば当然か。
ルーナ先生はさっきとは別の羊皮紙の手紙を俺に渡して来た。
「そして長老会議でこの手紙の内容が決定した。この手紙はエルフ族からアンジェロへの公式な通知であり契約となる」
受け取った羊皮紙の手紙は、ギルベンダ家からの手紙と同じくロウで封がしてある。今度は緑色のロウだ。風や木のモチーフの紋様がロウに押されている。
手紙を開き、二枚の手紙を一読する。
すぐにじいに手紙を回す。
「――これは!」
じいは驚き手紙を手に持ったまま凝視している。
じいの周りに他のメンバーが集まって来て、じいの手元の手紙を覗き込み次々と驚きの声をあげた。
「なんと!」
「ええ!」
ルーナ先生が説明を続ける。
「エルフの里は今回の件を解決するのに尽力したアンジェロに感謝し、『エルフの友』の称号を贈る事となった。この称号はあくまで名誉であって、何か報酬や特典が伴う物ではない」
「それがこの一枚目の手紙ですね」
「そうだ」
「重要なのは二枚目ですね」
「うむ。エルフの里からは、魔道具技術者四名をアンジェロ領に派遣する。またエルフ族はアンジェロ領で魔道具を開発・販売する事を認める。それと引き換えにアンジェロは今後『エルフの友人』として、人族領域において困難な状況のエルフ族を見つけた場合は、保護する事とする」
「じゃあ、ルーナ先生に同行して来たエルフたちは魔道具技術者ですか?」
「そうだ。好きに使うと良い」
これはデカイな。飛行機開発が一気に進む。
魔道具技術者四人はありがたい。
それに魔道具を専売しているエルフ族が、俺に対して魔道具の販売を許可した事も凄い事だ。
飛行機は売る気はないが、他の魔道具を開発出来たら領地の大きな収入源になる。
奴隷になっていたマリー・ギルベンダを救った恩が、何倍――いや、何十倍になって返って来た。
周りを見ると、じいやジョバンニはかなり興奮している。アンジェロ領が大いに発展する可能性が見えたからな。
さて、それはそれとして……。
「ルーナ先生。ここまではわかりました。それで手紙の続きの一文ですが……」
「私の口から話すのは恥ずかしい」
「じい! 読んで!」
「はっ! 『アンジェロ・フリージアは、ルーナ・ブラケットを妻とする』と書いてございます」
ルーナ先生は、両手を頬にあててイヤイヤしている。
だからさ。わかんないよ。
「あの発言をよろしいでしょうか?」
ルーナ先生が連れて来た四人のエルフの内、男性のエルフが手を上げた。
サラサラの銀髪ロングヘアの細身のイケメンだ。
「どうぞ」
「長老会議としては、人族領域でエルフ族が安全に活動出来るようにしたいと考えています。そこでアンジェロ様を味方につけ、今回マリー・ギルベンダを奴隷から開放されたお礼になる事を考えた結果、その手紙の内容になったのです」
「なるほど。魔道具開発販売の件と技術者派遣は、お礼としても、俺がエルフ族を保護する交換条件としてもわかるが、ルーナ先生との結婚は? ルーナ先生を好きにして良いよって意味ですか?」
「いやいや、好きにしてなんて――」
「ルーナ先生、ちょっと黙って!」
ルーナ先生、クネクネするのは止めて下さいよ……。
「ハハハ、まあご結婚されたらお好きになさればよろしいでしょう。アンジェロ様とルーナ・ブラケットの結婚は、いわゆる政略結婚ですね」
「ああ。そういう……。婚姻関係を結ぶことで友好を深める的な?」
「その通りです。これは私の聞いた話ですが……。長老会議ではルーナ・ブラケットがアンジェロ様に便宜を図ろうと、かなりがんばったそうですよ。ギルベンダ家も積極的に賛同し、全体としてはその手紙に書いてある内容でまとまっていたのですが反対派もおりまして」
「反対派?」
「そうです。人族が信用できないとか、そもそもエルフの里から外に出るのが間違っているとか。あくまで少数でしたが」
まあ、そういう主張をする人がいても仕方ないだろう。
現にマリーさんが奴隷にされていたのだから。
「そこで。その少数派を納得させる為に、あれこれ試行錯誤して出て来たのが、アンジェロ様とルーナ・ブラケットの結婚です」
「婚姻同盟みたいなものか」
この世界だと婚姻同盟は割とポピュラーな外交手段だ。
フリージア王国も隣国のニアランド王国と婚姻同盟を結んでいる。第一王子のポポ兄上の母君がニアランド王国の出身だ。
フリージア王国とニアランド王国は仲が悪かったが、婚姻同盟を結んだことでここ十年以上戦争をしていない。
現代日本人の感覚だと婚姻同盟の有効性なんて、今一ピンと来ないけどフリージア王国とニアランド王国の関係を考えると婚姻同盟も案外バカにならないな。
俺が婚姻同盟に思いを巡らせていると、銀髪イケメンエルフが力を込めてテーブルを叩いた。
「それと! その続きが非常に重要なのですよ! エルフ族は期待しておりますし、私たちがここへ来たのもそれが目当てです!」
「続き?」
ああ、そう言えば何か書いてあったな。『結婚』のインパクトが強くて、見落としていた。
じいが続きを読み始めた。
「えー、『アンジェロ・フリージアは、エルフ族に対して地球料理のレシピを提供する。即ちハンバーグ、グリル料理、マヨネーズ、柔らかいパンである。また、追加で三つの地球料理レシピを提供する物とする』」
しまった! エルフ族は、どうやら胃袋で意思決定をしたらしい。
ルーナ先生が胸を張って言う。
「レシピについては、私が既に教えて来た」
「四種類も大盤振る舞いでしたね」
「大好評だった」
まあ、地球料理のレシピは、俺とルーナ先生の共同開発みたいなものだから良いけど。
しかし、エルフ族の連中は俺が異世界から転生した事を信じたのかな? 信じたとしても主に胃袋で信じたのだろうけど。
「続きを読みます。『なおこの契約はエルフ族とアンジェロ・フリージアの間で締結する』。ほう、これは重要な意味がありますな!」
「じい、どういう事?」
「この契約はあくまでもエルフ族とアンジェロ様の間の契約であって、フリージア王国は関係ないという事です。国は横やりを入れられません。魔道具販売の権利を取り上げられないで済みます」
「あっ! そうか!」
「その方が良いだろうと思った。アンジェロはポポと仲が悪い」
「別に兄上とは……。いや、まあ、とにかくルーナ先生ありがとうございました!」
「礼には及ばない。未来の旦那様の為」
今日のルーナ先生は乙女だ。
そして四人のエルフの自己紹介を受けて、今日の会議は解散にした。
会議の後ルーナ先生と二人で話しをした。
「意外でした。ルーナ先生が俺と結婚するとは」
「私はハイエルフ。エルフ族の中でも特異な存在。人族の中で特異な存在のアンジェロと釣り合う」
「ああ、そういう考え方もあるのですね。てっきり美少年趣味なのかと思いました」
「アンジェロは成長すれば私と釣り合う良い男になる。イケメンに成長する事を命じる」
「その命令は、師匠として? 婚約者として?」
「アンジェロを愛する女として」
「では全力でご期待に応えます」
31
お気に入りに追加
4,055
あなたにおすすめの小説

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。
転生幼女が魔法無双で素材を集めて物作り&ほのぼの天気予報ライフ 「あたし『お天気キャスター』になるの! 願ったのは『大魔術師』じゃないの!」
なつきコイン
ファンタジー
転生者の幼女レイニィは、女神から現代知識を異世界に広めることの引き換えに、なりたかった『お天気キャスター』になるため、加護と仮職(プレジョブ)を授かった。
授かった加護は、前世の記憶(異世界)、魔力無限、自己再生
そして、仮職(プレジョブ)は『大魔術師(仮)』
仮職が『お天気キャスター』でなかったことにショックを受けるが、まだ仮職だ。『お天気キャスター』の職を得るため、努力を重ねることにした。
魔術の勉強や試練の達成、同時に気象観測もしようとしたが、この世界、肝心の観測器具が温度計すらなかった。なければどうする。作るしかないでしょう。
常識外れの魔法を駆使し、蟻の化け物やスライムを狩り、素材を集めて観測器具を作っていく。
ほのぼの家族と周りのみんなに助けられ、レイニィは『お天気キャスター』目指して、今日も頑張る。時々は頑張り過ぎちゃうけど、それはご愛敬だ。
カクヨム、小説家になろう、ノベルアップ+、Novelism、ノベルバ、アルファポリス、に公開中
タイトルを
「転生したって、あたし『お天気キャスター』になるの! そう女神様にお願いしたのに、なぜ『大魔術師(仮)』?!」
から変更しました。
没落貴族の異世界領地経営!~生産スキルでガンガン成り上がります!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生した元日本人ノエルは、父の急死によりエトワール伯爵家を継承することになった。
亡くなった父はギャンブルに熱中し莫大な借金をしていた。
さらに借金を国王に咎められ、『王国貴族の恥!』と南方の辺境へ追放されてしまう。
南方は魔物も多く、非常に住みにくい土地だった。
ある日、猫獣人の騎士現れる。ノエルが女神様から与えられた生産スキル『マルチクラフト』が覚醒し、ノエルは次々と異世界にない商品を生産し、領地経営が軌道に乗る。

転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる