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第三章 領地開発
第56話 ルーナ先生の帰宅
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結局、砂竜は十匹倒した。
二匹はミスル国王に『王国の牙』名義で献上した。まあ、王宮で黒丸師匠がちょっと好き勝手に言いまくって、失神者が続出したからね。
その迷惑料って感じで、砂竜を丸ごと二匹です。
ミスル国王さんも太った大臣さんもとても喜んでいたけれど、謁見の間で討伐した砂竜二匹をアイテムボックスから放り出したのはまずかったなあ。
また大量に失神者を出してしまったよ。まあ、もう会う事もないだろうから良いや。
残り八匹の砂竜はミスルの冒険者ギルドと商業ギルドで即日解体され売りに出された。
ただ砂竜が売りに出されるのが二百年ぶりなので、売り手も買い手もイマイチ相場観が掴めず動きが鈍いらしい。
全ての素材をすぐには現金化出来ないので、売れた時点で商業都市ザムザの冒険者ギルドへ送金して貰う事にした。
砂竜を解体した時に、土属性の魔石と火属性の魔石が取り出された。砂竜は体内に異なる属性の魔石を持つ特殊な竜らしい。どうりで風属性の魔法が効かなかった訳だ。
こうして俺たちは砂竜戦の後始末を済ますとミスル国から引き渡された兵士の家族とエルハムさんの母親を連れて、さっさとアンジェロ領に転移魔法で帰った。
「お父さん!」
「娘よ!」
「親父!」
「息子よ!」
「あなた!」
「おまえ!」
ミスルの元兵士が家族と感動の再会を果たした。
「色々あったのであるが、やって良かったのである!」
黒丸師匠はミスル国王宮ではかなりお怒りだったが、根は人情家なのでミスルの元兵士たちの様子を見て素直に喜んでいた。
「私はアンジェロ王子に絶対の忠誠を誓います!」
ミスル兵士をまとめて貰っているエルハムさんからは、元日本人にはちょっと重たい忠誠を捧げられた。
ミスルで住んでいたお屋敷には及ばないだろうけれど、アンジェロ領で母娘幸せに暮らしてくれ。ちなみにエルハムさんのお母さんは、ハムハムさんと言うお名前だった。
*
そしてルーナ先生を迎えに行く日が来た。
ルーナ先生は二か月前奴隷になっていたエルフのマリーさんをエルフの里に送って行った。
正直、この二か月はちょっと寂しかった。
五才の時にルーナ先生と出会ってからは、毎日顔を合わせていた。
この五年間は一緒に魔物を討伐する事もあれば、地球料理の再現を二人で研究する事もあった。魔法の師匠と弟子を超えた関係だと思う。
たった二か月離れただけだが、自分の中で何かが大きく欠落したと感じる二か月間だった。
俺は朝から嬉しくてさっさと仕事を片付けると黒丸師匠を連れて待ち合わせをしているメロビクス王大国西にある小さな町へ転移した。
町の冒険者ギルドの中でルーナ先生を待つが、その日は来なかった。
そして十日後、冒険者ギルドでルーナ先生が来ないか待っていると、冒険者ギルドのロビーの一角に黒いゲートが繋がった。
「やっとお帰りであるな」
黒丸師匠が溜息をつきながら呟いた。
無理もない。十日間、この何もない小さな町でひたすらルーナ先生を待っていたのだ。
黒いゲートの向こうからルーナ先生が出て来た。続いて四人エルフが同行して来た。
四人のエルフがゲートから出ると、ゲートは空中に消えた。
ルーナ先生が疲れた溜息をつくと同時にその場で膝をついた。
「ふう」
「ルーナ先生! お帰りなさい!」
「ルーナ! 大丈夫であるか!」
俺と黒丸師匠が駆け寄りルーナ先生を助け起こす。ルーナ先生は疲れた顔をしているが、顔色は悪くない。
「かなりの強行軍で転移して来たから、魔力を使い果たした。ここからはアンジェロの転移魔法で頼む」
「お任せください!」
黒丸師匠がルーナ先生を背負った。
魔力切れを起こすと貧血のような症状が出る。立っているのも辛いのだろう。
いや、俺は女神ミネルヴァ様が魔力造血幹細胞をてんこ盛りにしてくれたお陰で人外な魔力量があるので、魔力切れを起こしたことがないです。
すぐにゲートをアンジェロ領に繋いで全員で転移した。
この日はルーナ先生が話を出来る状態ではなかったので、魔力補充の薬を飲ませて、すぐに休んで貰った。
そして翌日、食堂にメインメンバーが勢ぞろいした。
俺、ルーナ先生、黒丸師匠の『王国の牙』勢。
じい、ジョバンニの『フリージア王国』勢。
白狼族のサラ、熊族のボイチェフ、リス族のキューの『獣人』勢
ホレックのおっちゃんは『ドワーフ』勢。
エルハムさんは『ミスル国』勢。
そしてルーナ先生に同行して来たエルフ四人。
ルーナ先生が同席しているメンバーを見回してボソボソっと呟いた。
「私がいない間に国際色豊かになった」
「このメンツ以外にも、ブルムント出身者がいますからね。賑やかになりましたよ」
和やかに会議を始められるかなと思ったら、ホレックのおっちゃんがルーナ先生に噛みついた。
「ふん! エルフの妖怪ババアは、田舎に引っ込んでおれば良いんじゃ!」
「貴様! そこへ直れ! 胴と首に永遠の別れをくれてやる!」
「おもしれえ! やってみろ! その尖がった耳を引きちぎって酒のツマミにしてやるぞ!」
「このエール樽!」
「女鹿ババア!」
二人が舌戦を始めてしまい会議にならなくなってしまった。
あーあ、ホレックのおっちゃんの口振りでルーナ先生とは仲が悪そうな気がしたけれど、ここまでとは……。
「アンジェロ少年。二人が実力行使をする前に止めるのである!」
「俺が止めるのですか? 黒丸師匠が止めて下さいよ。二人との付き合いも長いでしょ?」
「それがしで止められるなら、とっくに止めているのである。そもそもドワーフとエルフは仲が悪いのであるよ」
「はあ……、しょうがないなあ。はい! 二人とも! 会議しますからね! これでお終いですよ! 仕事の話ですよ! 真面目にやりますよ!」
だが、二人は止まらない。
俺は切り札を切った。
「いい加減にしないと晩飯のハンバーグを抜きにしますよ! ホレックに渡している酒も無しにするぞ!」
二人はピタリと静かになった。
今後もルーナ先生は食事、ホレックのおっちゃんは酒でコントロールしよう。
そしてやっと会議始まった。
まず俺の方からルーナ先生が不在の間に起こった出来事を報告し、新しく加わったエルハムさんを紹介した。
「主たるアンジェロ王子の魔法の先生と伺っております。どうぞよしなに!」
「女同士気軽に接して欲しい。よろしく」
うん。ここの二人は特に問題なさそうだ。
今後エルハムさんには、エールやウイスキー造り、そして俺が不在時の責任者をやって貰おうと思っている。
アンジェロ領も人が増えたから、留守居役がいた方が良いだろう。
そしてルーナ先生からエルフの里で起きた事を報告して貰う事になった。
開口一番ルーナ先生はトンデモナイ事を言い出した。
「うむ。結論から言うと、私がアンジェロと結婚する事になった」
ルーナ先生がそう言うとルーナ先生に同行して来た四人のエルフがパチパチと拍手を始めた。
ちょっと待ってくれ!
どうしてそうなる!
二匹はミスル国王に『王国の牙』名義で献上した。まあ、王宮で黒丸師匠がちょっと好き勝手に言いまくって、失神者が続出したからね。
その迷惑料って感じで、砂竜を丸ごと二匹です。
ミスル国王さんも太った大臣さんもとても喜んでいたけれど、謁見の間で討伐した砂竜二匹をアイテムボックスから放り出したのはまずかったなあ。
また大量に失神者を出してしまったよ。まあ、もう会う事もないだろうから良いや。
残り八匹の砂竜はミスルの冒険者ギルドと商業ギルドで即日解体され売りに出された。
ただ砂竜が売りに出されるのが二百年ぶりなので、売り手も買い手もイマイチ相場観が掴めず動きが鈍いらしい。
全ての素材をすぐには現金化出来ないので、売れた時点で商業都市ザムザの冒険者ギルドへ送金して貰う事にした。
砂竜を解体した時に、土属性の魔石と火属性の魔石が取り出された。砂竜は体内に異なる属性の魔石を持つ特殊な竜らしい。どうりで風属性の魔法が効かなかった訳だ。
こうして俺たちは砂竜戦の後始末を済ますとミスル国から引き渡された兵士の家族とエルハムさんの母親を連れて、さっさとアンジェロ領に転移魔法で帰った。
「お父さん!」
「娘よ!」
「親父!」
「息子よ!」
「あなた!」
「おまえ!」
ミスルの元兵士が家族と感動の再会を果たした。
「色々あったのであるが、やって良かったのである!」
黒丸師匠はミスル国王宮ではかなりお怒りだったが、根は人情家なのでミスルの元兵士たちの様子を見て素直に喜んでいた。
「私はアンジェロ王子に絶対の忠誠を誓います!」
ミスル兵士をまとめて貰っているエルハムさんからは、元日本人にはちょっと重たい忠誠を捧げられた。
ミスルで住んでいたお屋敷には及ばないだろうけれど、アンジェロ領で母娘幸せに暮らしてくれ。ちなみにエルハムさんのお母さんは、ハムハムさんと言うお名前だった。
*
そしてルーナ先生を迎えに行く日が来た。
ルーナ先生は二か月前奴隷になっていたエルフのマリーさんをエルフの里に送って行った。
正直、この二か月はちょっと寂しかった。
五才の時にルーナ先生と出会ってからは、毎日顔を合わせていた。
この五年間は一緒に魔物を討伐する事もあれば、地球料理の再現を二人で研究する事もあった。魔法の師匠と弟子を超えた関係だと思う。
たった二か月離れただけだが、自分の中で何かが大きく欠落したと感じる二か月間だった。
俺は朝から嬉しくてさっさと仕事を片付けると黒丸師匠を連れて待ち合わせをしているメロビクス王大国西にある小さな町へ転移した。
町の冒険者ギルドの中でルーナ先生を待つが、その日は来なかった。
そして十日後、冒険者ギルドでルーナ先生が来ないか待っていると、冒険者ギルドのロビーの一角に黒いゲートが繋がった。
「やっとお帰りであるな」
黒丸師匠が溜息をつきながら呟いた。
無理もない。十日間、この何もない小さな町でひたすらルーナ先生を待っていたのだ。
黒いゲートの向こうからルーナ先生が出て来た。続いて四人エルフが同行して来た。
四人のエルフがゲートから出ると、ゲートは空中に消えた。
ルーナ先生が疲れた溜息をつくと同時にその場で膝をついた。
「ふう」
「ルーナ先生! お帰りなさい!」
「ルーナ! 大丈夫であるか!」
俺と黒丸師匠が駆け寄りルーナ先生を助け起こす。ルーナ先生は疲れた顔をしているが、顔色は悪くない。
「かなりの強行軍で転移して来たから、魔力を使い果たした。ここからはアンジェロの転移魔法で頼む」
「お任せください!」
黒丸師匠がルーナ先生を背負った。
魔力切れを起こすと貧血のような症状が出る。立っているのも辛いのだろう。
いや、俺は女神ミネルヴァ様が魔力造血幹細胞をてんこ盛りにしてくれたお陰で人外な魔力量があるので、魔力切れを起こしたことがないです。
すぐにゲートをアンジェロ領に繋いで全員で転移した。
この日はルーナ先生が話を出来る状態ではなかったので、魔力補充の薬を飲ませて、すぐに休んで貰った。
そして翌日、食堂にメインメンバーが勢ぞろいした。
俺、ルーナ先生、黒丸師匠の『王国の牙』勢。
じい、ジョバンニの『フリージア王国』勢。
白狼族のサラ、熊族のボイチェフ、リス族のキューの『獣人』勢
ホレックのおっちゃんは『ドワーフ』勢。
エルハムさんは『ミスル国』勢。
そしてルーナ先生に同行して来たエルフ四人。
ルーナ先生が同席しているメンバーを見回してボソボソっと呟いた。
「私がいない間に国際色豊かになった」
「このメンツ以外にも、ブルムント出身者がいますからね。賑やかになりましたよ」
和やかに会議を始められるかなと思ったら、ホレックのおっちゃんがルーナ先生に噛みついた。
「ふん! エルフの妖怪ババアは、田舎に引っ込んでおれば良いんじゃ!」
「貴様! そこへ直れ! 胴と首に永遠の別れをくれてやる!」
「おもしれえ! やってみろ! その尖がった耳を引きちぎって酒のツマミにしてやるぞ!」
「このエール樽!」
「女鹿ババア!」
二人が舌戦を始めてしまい会議にならなくなってしまった。
あーあ、ホレックのおっちゃんの口振りでルーナ先生とは仲が悪そうな気がしたけれど、ここまでとは……。
「アンジェロ少年。二人が実力行使をする前に止めるのである!」
「俺が止めるのですか? 黒丸師匠が止めて下さいよ。二人との付き合いも長いでしょ?」
「それがしで止められるなら、とっくに止めているのである。そもそもドワーフとエルフは仲が悪いのであるよ」
「はあ……、しょうがないなあ。はい! 二人とも! 会議しますからね! これでお終いですよ! 仕事の話ですよ! 真面目にやりますよ!」
だが、二人は止まらない。
俺は切り札を切った。
「いい加減にしないと晩飯のハンバーグを抜きにしますよ! ホレックに渡している酒も無しにするぞ!」
二人はピタリと静かになった。
今後もルーナ先生は食事、ホレックのおっちゃんは酒でコントロールしよう。
そしてやっと会議始まった。
まず俺の方からルーナ先生が不在の間に起こった出来事を報告し、新しく加わったエルハムさんを紹介した。
「主たるアンジェロ王子の魔法の先生と伺っております。どうぞよしなに!」
「女同士気軽に接して欲しい。よろしく」
うん。ここの二人は特に問題なさそうだ。
今後エルハムさんには、エールやウイスキー造り、そして俺が不在時の責任者をやって貰おうと思っている。
アンジェロ領も人が増えたから、留守居役がいた方が良いだろう。
そしてルーナ先生からエルフの里で起きた事を報告して貰う事になった。
開口一番ルーナ先生はトンデモナイ事を言い出した。
「うむ。結論から言うと、私がアンジェロと結婚する事になった」
ルーナ先生がそう言うとルーナ先生に同行して来た四人のエルフがパチパチと拍手を始めた。
ちょっと待ってくれ!
どうしてそうなる!
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