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不穏の知情意

118_櫂_

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侑梨が俺ではなく、マウロを選んだことは分かっていた。
けれど、どうしても諦められなかった。
これが夫人の言っていた救済への願望なのか、
愛なのか自分自身、分からない。
けれど、侑梨のいないこれからは虚無だと分かる。
彼女の滑らかな肌の香りが誘惑する。
麻薬のような危うさだ。
その肌にヤツの所有印の様に赤い痕跡をいくつも見つける。
『僕が彼女に快楽を教えた──』
ヤツの言葉に嫉妬と臆する気持ちが綯交ないまぜになる。
けれど──絡めた舌を離した時の侑梨の表情に、
そんな感情は何処かへと飛び去った。
この薄暗い小さな部屋がマウロも夫人も、何もかもが
入る余地のない、2人だけの空間だ。
「櫂」
その声で何度でも呼んで欲しい。
彼女の首筋、胸の頂、右胸の脇にある小さな黒子さえ愛おしい。
その黒子を吸い上げる。
感じている彼女の美しさに興奮する。
視線が絡む度にキスをする。
軽く唇を重ねるキス、
ねっとりと口腔内を犯すようなキス、
唇を噛むようなキス、
そしてまた啄むようなキスをする。

「櫂……お願い」

櫂自身も限界で侑梨の懇願は願ったりだ。
──侑梨を孕ませれば俺のモノになるのか──

『子は鎹というでしょう?』
ヤツは何度も侑梨の中に出しただろう。
侑梨の子宮がヤツの精液を飲み込んでいると思うと
掻き出したくなる。

「櫂」
彼女の催促に心が決まる。
「侑梨、愛してる」

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