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怜のアパートは大学生の男子の割に整頓されている方だ。
涼太は結構散らかすし、弦は本ばかりの部屋だ。最近は電子書籍に変えたのかあっさりした部屋になってしまった。あの部屋は圧巻で好きだったのに。
──その怜のアパートから反魂香は見つからなかった。
「エロ本とかねえの?」
涼太がベット下を覗く。
「涼太!止めて。怜はそんなタイプじゃないし!」
勝手に部屋に住み、私物を荒らすなんて弟に酷いことをしている。
「じゃあケータイの方か─?」
まだ諦めていない涼太が呟く。
涼太の携帯は動いたけれど、認証番号が分からない状態で叔父から遺品の一つとして渡された。
──中身を覗こうとは思ってないけれど何度か番号を押したけれど開く事は無かった。
怜のことは知らないことの方が多い。
大学生になり家を出た怜は殆ど家には帰ってこなかったし、あまり口数も多くないタイプだったからよく分からないのが実情だ。
第一、このアパートもここから大学は実家から通っても同じくらいの距離だ。家を出る必要なんて無かったのに……あの日、怜の誕生日だからと久しぶりに実家に帰っておいでよと──雫が誘った。
彼女がいたら邪魔しない方がいいと思ったけれど、大丈夫だよって言われて……父がケーキを買って帰り、母が料理を作った。隣の亡くなったおじいちゃんの家にもお裾分けを母が持っていった。
──こんな結末が待っているなんて思わなかった。
雫が怜を呼ばなければ、せめて怜は死ぬ事は無かった。
今もここで──暮らしていた筈だ──
「やっぱり無いねー」
弦が早々に諦める。
ペットボトルの水を飲みながらベットに座る。
「父が熱く語って私たちに渡してくれたから、無碍にも出来ずにアパートに持って帰ってた筈なのに……流石に捨ててないと思うんだけど──誰かにあげちゃったのかな?」
「まぁ、男の一人暮らしに要らないものベスト3に入りそうだしなぁ」
涼太の言葉に最もだと思う。
雫も無用の長物としていたのだから。
僕はちょと仕事してるねーと弦がパソコンを弄る。
「弦、仕事いかなくていいの?」
「うん。フリーでしてるから。パソコンがあればあとは数回会って話と偶に仕様の説明すればいいくらいだから」
相変わらず弦は凄いのか抜けているのかよく分からない。
「涼太は?」
「俺はお前が死んで──それどころじゃ無かったから10日休みを貰ってる」
その言葉に自分が死んだのを再確認する。
きっと雫の会社にはまだ死んだ情報のまま更新されていないだろう。
死亡により退職となっている筈だ。
──自分もまだ混乱している。
上手い嘘もつけないのだからこのままにしておこう。
もし復職しても──雫が妊娠した場合はまたすぐに仕事を休職か辞める事になってしまうだろうし。
「お腹空いたね。冷蔵庫ににかあるかな?」
開くと──何もない。
水と母が作った生姜の甘酢漬けが入っている。
母の料理を食べられれのはこの生姜漬けが最後になってしまう。
ピンクに染まった生姜が瓶に半分くらい残っている。
──なんだか実感がないのに涙ぐむ。
この水も怜の──
「弦!勝手に水飲んだでしょう⁈」
振り返ると弦は全て飲み終えていた。
「だって喉渇いたし──飲んじゃった。ごめんね─」
全く悪びれてもいない。
「じゃあお腹も空いたし、コンビニで何か買ってくるよー」
そう言ってコンビニに出かけて行ってしまった。
──この甘酢漬けはもう少し──取っておきたい。
雫は冷蔵庫をゆっくり閉めた。
涼太は結構散らかすし、弦は本ばかりの部屋だ。最近は電子書籍に変えたのかあっさりした部屋になってしまった。あの部屋は圧巻で好きだったのに。
──その怜のアパートから反魂香は見つからなかった。
「エロ本とかねえの?」
涼太がベット下を覗く。
「涼太!止めて。怜はそんなタイプじゃないし!」
勝手に部屋に住み、私物を荒らすなんて弟に酷いことをしている。
「じゃあケータイの方か─?」
まだ諦めていない涼太が呟く。
涼太の携帯は動いたけれど、認証番号が分からない状態で叔父から遺品の一つとして渡された。
──中身を覗こうとは思ってないけれど何度か番号を押したけれど開く事は無かった。
怜のことは知らないことの方が多い。
大学生になり家を出た怜は殆ど家には帰ってこなかったし、あまり口数も多くないタイプだったからよく分からないのが実情だ。
第一、このアパートもここから大学は実家から通っても同じくらいの距離だ。家を出る必要なんて無かったのに……あの日、怜の誕生日だからと久しぶりに実家に帰っておいでよと──雫が誘った。
彼女がいたら邪魔しない方がいいと思ったけれど、大丈夫だよって言われて……父がケーキを買って帰り、母が料理を作った。隣の亡くなったおじいちゃんの家にもお裾分けを母が持っていった。
──こんな結末が待っているなんて思わなかった。
雫が怜を呼ばなければ、せめて怜は死ぬ事は無かった。
今もここで──暮らしていた筈だ──
「やっぱり無いねー」
弦が早々に諦める。
ペットボトルの水を飲みながらベットに座る。
「父が熱く語って私たちに渡してくれたから、無碍にも出来ずにアパートに持って帰ってた筈なのに……流石に捨ててないと思うんだけど──誰かにあげちゃったのかな?」
「まぁ、男の一人暮らしに要らないものベスト3に入りそうだしなぁ」
涼太の言葉に最もだと思う。
雫も無用の長物としていたのだから。
僕はちょと仕事してるねーと弦がパソコンを弄る。
「弦、仕事いかなくていいの?」
「うん。フリーでしてるから。パソコンがあればあとは数回会って話と偶に仕様の説明すればいいくらいだから」
相変わらず弦は凄いのか抜けているのかよく分からない。
「涼太は?」
「俺はお前が死んで──それどころじゃ無かったから10日休みを貰ってる」
その言葉に自分が死んだのを再確認する。
きっと雫の会社にはまだ死んだ情報のまま更新されていないだろう。
死亡により退職となっている筈だ。
──自分もまだ混乱している。
上手い嘘もつけないのだからこのままにしておこう。
もし復職しても──雫が妊娠した場合はまたすぐに仕事を休職か辞める事になってしまうだろうし。
「お腹空いたね。冷蔵庫ににかあるかな?」
開くと──何もない。
水と母が作った生姜の甘酢漬けが入っている。
母の料理を食べられれのはこの生姜漬けが最後になってしまう。
ピンクに染まった生姜が瓶に半分くらい残っている。
──なんだか実感がないのに涙ぐむ。
この水も怜の──
「弦!勝手に水飲んだでしょう⁈」
振り返ると弦は全て飲み終えていた。
「だって喉渇いたし──飲んじゃった。ごめんね─」
全く悪びれてもいない。
「じゃあお腹も空いたし、コンビニで何か買ってくるよー」
そう言ってコンビニに出かけて行ってしまった。
──この甘酢漬けはもう少し──取っておきたい。
雫は冷蔵庫をゆっくり閉めた。
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