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048 檜垣榮吾
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「榮吾、呼び出しておいて何?」
カフェの1番奥のソファ席を用意してもらった。
ここが1番ゆったりしているし外に声が漏れない。
「陽も呼んだからもう少し待て」
「陽も?じゃあ──緑子も来るの⁈」
そうカフェを見渡す朱音を少し冷めた目で見てしまう。
「いいから座れよ。なに飲む?」
「コーヒー」
陽が現れ、開口一番注文する。
結局、全員がコーヒーだ。
「で?なんの用だい?」
陽が朱音の横に座る。
その席は──いつも緑子の席だった。
「緑子を呼ばず、私と陽を呼んだってことはどうせお説教でしょ?でも──榮吾には関係ない。これは私たちの問題よ」
棘のある気の強い言葉で朱音が牽制する。
「檜垣にできることはないよ。僕も朱音さんも頑固だからね」
そう言い放つ陽。
俺はその二人を見つめながら苛立ちが隠せない。
「怒ってるね檜垣。どうしたの?」
「榮吾が怒っても怖くないわよ」
コーヒーを飲みながら朱音が言い放つ。
「俺は関係ないって?」
「そうよ。関係ないわ」
「──あるに決まってるだろ?」
「なに──」
「緑子は俺の大事な友人だ。緑子を傷つける奴はお前らでも──お前らだからこそ腹立だしいよ」
「──緑子さんと会ったの?」
「会ったよ」
「僕には会ってくれないのに、檜垣には会うの?」
「その理由が分からないほど阿呆なのか?陽」
「まさか──榮吾、緑子と…」
「朱音、お前が一番、緑子の近くにいた筈だ。一番──好きだと豪語してたじゃないか。何──してんだ?何、緑子苦しめてんだよ!」
「それは──僕たちが悪かったよ。先日、朱音さんとも話を──」
「おせぇよ」
陽と朱音の瞳を見る。
まだ分かってない。
どこまでも自分勝手な奴らだ。
「緑子を苦しめてどんだけ経ってんだよ⁈ アイツがどれだけオマエらを好きか知ってただろう?それをどちらか選べと迫った。しかも選ばなかった場合の脅しまで丁寧にかけて」
いつもは俺の言うことなんて聞きやしない二人が黙る。
「遅いんだよ!なんで緑子を好きだといいながら追い込んだ⁈なんで放っておいた?なんで──苦しんでいるのを見て見ぬふりしたんだ……」
俺もだ。
情けなくて涙がでる。
「──緑子さんに──何かあったの?」
陽の方がまだ理解に早い。
朱音はまだ理解していない顔だ。
「言うべきか悩んで──だけど事前に言っておかなきゃ、お前らが何するかわかんねぇから……」
「なによ……榮吾。はっきり言いなさいよ」
「緑子が妊娠した」
朱音が信じられないと言う顔で横の陽を睨みつける。
けれど陽の表情に違和感を覚えたのか言葉を発せない。
「それは──父親は君かい?檜垣」
冷静に聞こえる声も相当に感情を抑えているからだと分かる。
朱音は混線しているのかまだ理解が追いついていない。
「俺じゃないよ」
「じゃあ誰なのよ⁈」
大きな音でテーブルを叩きコーヒーに波紋ができる。
その波紋を見つめ──朱音らしいと、思う。
「……そうやって緑子にも詰め寄るのか?」
「だって緑子が──」
「緑子の友人を奪ったのは誰だ?──恋を強要したのは?今度は子どもや──結婚相手にさえ口を出すのか?」
朱音の眉間の皺が深くなる。
「緑子さんは──結婚するの?」
陽の問いかけに朱音も俺を見る。
「知らねぇよ。でも──するんじゃないか?こんな自分勝手で自分を苦しめる幼馴染たちなんか棄てて、苦しい時に側にいて支えてくれる奴が近くにいればそりゃ誰でもそっちに行くよ」
「緑子が私達を裏切るわけない!」
「──裏切ったのはお前だろ朱音。まだそうやって緑子を責めるのか?妊娠中で身重な緑子にもそう詰め寄り詰るのか?──もう──解放してやれ。緑子はもうお前らの押し付けに嫌気が差したんじゃにいのか?」
「相手は?」
「聞いて意味あるか?」
「檜垣、意味なんてどうでもいい。相手は誰なんだ?」
陽がそれでも何度も問いただす。
そこに本当に意味がないのか計りかねる。
「檜垣、相手を教えてほしい」
「──殺すとかじゃないよな?」
本気で考える。
陽がふっと笑う。
「めちゃくちゃに殺したいよ。でも──それは違うと──ダメなんだと──死にたい……僕が死んでしまいたいよ……誰だい?相手は誰なの?」
こんな弱気の陽は初めて見た気がした。
「──職場の先輩の五十鈴って人だ」
「五十鈴⁈その人結婚してなかった?愛妻家だと緑子は言っていたわよ⁈」
「去年の冬に離婚したんだ」
陽も朱音も表情が硬い。
「バツイチの男に緑子を取られたのか?って──思ってる?そんな相手でもお前らよりよかったんじゃぁねぇの?陽、朱音──もう緑子を解放してやって欲しい」
ぎこちなく微笑む緑子を見てないお前らが羨ましい。
あの緑子を見れば、自分がどれだけ愚かなのかはっきりと分かるのに。
「緑子さんが今日、ここにいない理由は──僕たちに会いたくないから?」
「ここで会う事を──緑子には言ってない。この話をしたのは俺の独断だ。緑子はお前らにこの事実を知られるを恐れているし、知られて棄てられたいとも思っている。相反する願いが彼女の中にあって──苦しんでいる」
「彼女は──その男を愛しているの?」
要はそこだ。
緑子は誰を好きなのだろう。
そこが不慥かで俺には分からない。
「緑子がその男を愛していたなら?手を離してやれるのか?」
「無理だ──あの人が他の男と結婚なんて──絶対に無理だ」
「けれど緑子は妊娠している」
もう──朱音も陽も口を開けない。
確かめたい。
最低ライン以下のお前らなら俺はもう手を切る。
「──緑子に子どもを堕ろして欲しいと思っているのか?」
二人がどう思っているのか確かめたかった。
カフェの1番奥のソファ席を用意してもらった。
ここが1番ゆったりしているし外に声が漏れない。
「陽も呼んだからもう少し待て」
「陽も?じゃあ──緑子も来るの⁈」
そうカフェを見渡す朱音を少し冷めた目で見てしまう。
「いいから座れよ。なに飲む?」
「コーヒー」
陽が現れ、開口一番注文する。
結局、全員がコーヒーだ。
「で?なんの用だい?」
陽が朱音の横に座る。
その席は──いつも緑子の席だった。
「緑子を呼ばず、私と陽を呼んだってことはどうせお説教でしょ?でも──榮吾には関係ない。これは私たちの問題よ」
棘のある気の強い言葉で朱音が牽制する。
「檜垣にできることはないよ。僕も朱音さんも頑固だからね」
そう言い放つ陽。
俺はその二人を見つめながら苛立ちが隠せない。
「怒ってるね檜垣。どうしたの?」
「榮吾が怒っても怖くないわよ」
コーヒーを飲みながら朱音が言い放つ。
「俺は関係ないって?」
「そうよ。関係ないわ」
「──あるに決まってるだろ?」
「なに──」
「緑子は俺の大事な友人だ。緑子を傷つける奴はお前らでも──お前らだからこそ腹立だしいよ」
「──緑子さんと会ったの?」
「会ったよ」
「僕には会ってくれないのに、檜垣には会うの?」
「その理由が分からないほど阿呆なのか?陽」
「まさか──榮吾、緑子と…」
「朱音、お前が一番、緑子の近くにいた筈だ。一番──好きだと豪語してたじゃないか。何──してんだ?何、緑子苦しめてんだよ!」
「それは──僕たちが悪かったよ。先日、朱音さんとも話を──」
「おせぇよ」
陽と朱音の瞳を見る。
まだ分かってない。
どこまでも自分勝手な奴らだ。
「緑子を苦しめてどんだけ経ってんだよ⁈ アイツがどれだけオマエらを好きか知ってただろう?それをどちらか選べと迫った。しかも選ばなかった場合の脅しまで丁寧にかけて」
いつもは俺の言うことなんて聞きやしない二人が黙る。
「遅いんだよ!なんで緑子を好きだといいながら追い込んだ⁈なんで放っておいた?なんで──苦しんでいるのを見て見ぬふりしたんだ……」
俺もだ。
情けなくて涙がでる。
「──緑子さんに──何かあったの?」
陽の方がまだ理解に早い。
朱音はまだ理解していない顔だ。
「言うべきか悩んで──だけど事前に言っておかなきゃ、お前らが何するかわかんねぇから……」
「なによ……榮吾。はっきり言いなさいよ」
「緑子が妊娠した」
朱音が信じられないと言う顔で横の陽を睨みつける。
けれど陽の表情に違和感を覚えたのか言葉を発せない。
「それは──父親は君かい?檜垣」
冷静に聞こえる声も相当に感情を抑えているからだと分かる。
朱音は混線しているのかまだ理解が追いついていない。
「俺じゃないよ」
「じゃあ誰なのよ⁈」
大きな音でテーブルを叩きコーヒーに波紋ができる。
その波紋を見つめ──朱音らしいと、思う。
「……そうやって緑子にも詰め寄るのか?」
「だって緑子が──」
「緑子の友人を奪ったのは誰だ?──恋を強要したのは?今度は子どもや──結婚相手にさえ口を出すのか?」
朱音の眉間の皺が深くなる。
「緑子さんは──結婚するの?」
陽の問いかけに朱音も俺を見る。
「知らねぇよ。でも──するんじゃないか?こんな自分勝手で自分を苦しめる幼馴染たちなんか棄てて、苦しい時に側にいて支えてくれる奴が近くにいればそりゃ誰でもそっちに行くよ」
「緑子が私達を裏切るわけない!」
「──裏切ったのはお前だろ朱音。まだそうやって緑子を責めるのか?妊娠中で身重な緑子にもそう詰め寄り詰るのか?──もう──解放してやれ。緑子はもうお前らの押し付けに嫌気が差したんじゃにいのか?」
「相手は?」
「聞いて意味あるか?」
「檜垣、意味なんてどうでもいい。相手は誰なんだ?」
陽がそれでも何度も問いただす。
そこに本当に意味がないのか計りかねる。
「檜垣、相手を教えてほしい」
「──殺すとかじゃないよな?」
本気で考える。
陽がふっと笑う。
「めちゃくちゃに殺したいよ。でも──それは違うと──ダメなんだと──死にたい……僕が死んでしまいたいよ……誰だい?相手は誰なの?」
こんな弱気の陽は初めて見た気がした。
「──職場の先輩の五十鈴って人だ」
「五十鈴⁈その人結婚してなかった?愛妻家だと緑子は言っていたわよ⁈」
「去年の冬に離婚したんだ」
陽も朱音も表情が硬い。
「バツイチの男に緑子を取られたのか?って──思ってる?そんな相手でもお前らよりよかったんじゃぁねぇの?陽、朱音──もう緑子を解放してやって欲しい」
ぎこちなく微笑む緑子を見てないお前らが羨ましい。
あの緑子を見れば、自分がどれだけ愚かなのかはっきりと分かるのに。
「緑子さんが今日、ここにいない理由は──僕たちに会いたくないから?」
「ここで会う事を──緑子には言ってない。この話をしたのは俺の独断だ。緑子はお前らにこの事実を知られるを恐れているし、知られて棄てられたいとも思っている。相反する願いが彼女の中にあって──苦しんでいる」
「彼女は──その男を愛しているの?」
要はそこだ。
緑子は誰を好きなのだろう。
そこが不慥かで俺には分からない。
「緑子がその男を愛していたなら?手を離してやれるのか?」
「無理だ──あの人が他の男と結婚なんて──絶対に無理だ」
「けれど緑子は妊娠している」
もう──朱音も陽も口を開けない。
確かめたい。
最低ライン以下のお前らなら俺はもう手を切る。
「──緑子に子どもを堕ろして欲しいと思っているのか?」
二人がどう思っているのか確かめたかった。
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