不慥かな恋 ─寒がりオバケの温め方─

030 泱森陽

鍵をロックし──玄関に座り込む。
檜垣となにかあったと思った時、嫉妬と苛立ちの中考えていた。
【最初に手を付けた奴】が緑子さんを手に入れるんじゃないかって。
だから本当は──どうやってでも緑子さんを僕のモノにしようと思っていた。
泣かれても、嫌がられても自分のモノにしたかった。
そうすれば朱音さんとの関係を崩せる。
檜垣にも介入させない。
そんな最低な事をしても緑子さんなら僕を許すんじゃないかと──思っていた。

【嫌いよ】

あの言葉がここまでクるとは思わなかった。
緑子さん。
貴方を苦しめたいわけじゃないのに──貴方は苦しいと──泣いてしまう。
ただ僕だけを瞳に映し微笑んでほしいだけなのに。
でも──僕を選んでくれた。
愛しているのは僕だと、言ってくれた。

「朱音さんが貴方を捨てる時は──どんなときだろう？」

それなら──緑子さんは諦めるだろう。
捨てられて泣く貴方を僕が慰めてあげるよ。
その為には僕が理由ではダメだ。
他の理由を──仕方がないと──言える理由がほしい。

「適当な奴とでも結婚しないかなぁ、朱音さん……」