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その後、陽ちゃんは本当に瓶からお酒を捨ててその中にミネラルウォーターを注いだ。
「陽ちゃん⁉︎ せめてお料理に使いたかったよ⁈」
そう小声で反論するがお酒はもう下水へと流れてしまった。
しーっと人差し指を私の口元に持っていかれてしまう。
でも今回の食事会を言い出してくれた朱音ちゃんへの陽ちゃんなりの配慮なのかもしれない。
榮吾くんを見れば朱音ちゃんと普段通りに話している。
「ねぇ、緑子は年末どうするの?実家に帰るの?」
「うん。そのつもりだよ。従兄弟のお姉ちゃんが紹介したい人がいるって」
お姉ちゃんが選んだ人だ。
きっととても素敵な人だろう。
「緑子の従兄弟のお姉さんって俺らよりだいぶ上だったよな?」
「うん五つ違いかな。私がこっちに出てからあまり会えていないけれど仲は良いから楽しみかな」
「緑子と仲の悪い人間を見たことないんだけど」
朱音ちゃん、それは買い被り過ぎだよ。
昔から結構の頻度で同級生から疎遠にされているんだよ。
ちょっと悲しいから口にはしないけれど。
曖昧に笑っておこう。
「みんなはどうするの?」
「私も親が帰れって」
朱音ちゃんは良家の子女だ。
毎年家族でお正月を過ごしている。
「俺はバイクで1人旅行とか行きたいな。まぁ、まだ未定だ」
榮吾くんは車販売をしているけれど、本当はバイクの方が好きで、大型のバイクも持ってて、偶に一人旅の話を聞くけれど本当に楽しそうだ。
「陽は?なんなら一緒に行くか?」
陽ちゃんが絶対に行かないのを知っていながら榮吾くんが誘う。
「僕が行くわけないの知ってるでしょ」
「陽はまた引きこもり生活か?」
「陽ちゃんはお仕事?」
引きこもりなんて榮吾くんに言われているけれど在宅ワークなだけで立派な仕事人だ。
「まだ考え中かな」
「けど、陽がモノ書きとか考えもしなかったな」
「わかる!物事に関心のない男がモノ書きとか。どんだけ読者を騙すのかって思うわー」
朱音ちゃんの毒舌が酔いによって炸裂している。
「別に仕事はなんでもよかったんだよ。僕の条件に合う職業がモノ書きだっただけだよ」
「陽ちゃんの条件?」
「仕事に不必要に時間を縛られないこと。年齢に関係なく年収を確保できること、かな。20代前半にはある程度の収入になるには学生時代から副業としてするには便利だったからね」
「営業マンは残業の日々だし、朱音も緑子もそれなりの給与だもんな。でも結局、引きこもって仕事なら時間に縛られてるじゃないか。締め切りに追われる作家なんてよく聞くぜ?」
「そうかな?さっさと終わらせればあとは自由だしね」
なんだか──簡単そうに陽ちゃんは言っているけれど、私たちの分からない苦労はあるだろう。
「じゃあ年末年始はこのメンバーで会うのは正月明けだね」
みんなそれぞれ予定が入ってしまっている。
「緑子、年明けに初詣行こうよ!」
「うん。楽しみだね朱音ちゃん。もちろん、榮吾くんも陽ちゃんも行くよね?」
榮吾くんは手をあげて応えてくれる。
陽ちゃんは微笑んでいる。
これは行ってくれる微笑みだ。
やっぱり──いいなぁ。
このメンバーでずっと一緒にいたい。
恋なんていらないから一緒にいたいよ。
「陽ちゃん⁉︎ せめてお料理に使いたかったよ⁈」
そう小声で反論するがお酒はもう下水へと流れてしまった。
しーっと人差し指を私の口元に持っていかれてしまう。
でも今回の食事会を言い出してくれた朱音ちゃんへの陽ちゃんなりの配慮なのかもしれない。
榮吾くんを見れば朱音ちゃんと普段通りに話している。
「ねぇ、緑子は年末どうするの?実家に帰るの?」
「うん。そのつもりだよ。従兄弟のお姉ちゃんが紹介したい人がいるって」
お姉ちゃんが選んだ人だ。
きっととても素敵な人だろう。
「緑子の従兄弟のお姉さんって俺らよりだいぶ上だったよな?」
「うん五つ違いかな。私がこっちに出てからあまり会えていないけれど仲は良いから楽しみかな」
「緑子と仲の悪い人間を見たことないんだけど」
朱音ちゃん、それは買い被り過ぎだよ。
昔から結構の頻度で同級生から疎遠にされているんだよ。
ちょっと悲しいから口にはしないけれど。
曖昧に笑っておこう。
「みんなはどうするの?」
「私も親が帰れって」
朱音ちゃんは良家の子女だ。
毎年家族でお正月を過ごしている。
「俺はバイクで1人旅行とか行きたいな。まぁ、まだ未定だ」
榮吾くんは車販売をしているけれど、本当はバイクの方が好きで、大型のバイクも持ってて、偶に一人旅の話を聞くけれど本当に楽しそうだ。
「陽は?なんなら一緒に行くか?」
陽ちゃんが絶対に行かないのを知っていながら榮吾くんが誘う。
「僕が行くわけないの知ってるでしょ」
「陽はまた引きこもり生活か?」
「陽ちゃんはお仕事?」
引きこもりなんて榮吾くんに言われているけれど在宅ワークなだけで立派な仕事人だ。
「まだ考え中かな」
「けど、陽がモノ書きとか考えもしなかったな」
「わかる!物事に関心のない男がモノ書きとか。どんだけ読者を騙すのかって思うわー」
朱音ちゃんの毒舌が酔いによって炸裂している。
「別に仕事はなんでもよかったんだよ。僕の条件に合う職業がモノ書きだっただけだよ」
「陽ちゃんの条件?」
「仕事に不必要に時間を縛られないこと。年齢に関係なく年収を確保できること、かな。20代前半にはある程度の収入になるには学生時代から副業としてするには便利だったからね」
「営業マンは残業の日々だし、朱音も緑子もそれなりの給与だもんな。でも結局、引きこもって仕事なら時間に縛られてるじゃないか。締め切りに追われる作家なんてよく聞くぜ?」
「そうかな?さっさと終わらせればあとは自由だしね」
なんだか──簡単そうに陽ちゃんは言っているけれど、私たちの分からない苦労はあるだろう。
「じゃあ年末年始はこのメンバーで会うのは正月明けだね」
みんなそれぞれ予定が入ってしまっている。
「緑子、年明けに初詣行こうよ!」
「うん。楽しみだね朱音ちゃん。もちろん、榮吾くんも陽ちゃんも行くよね?」
榮吾くんは手をあげて応えてくれる。
陽ちゃんは微笑んでいる。
これは行ってくれる微笑みだ。
やっぱり──いいなぁ。
このメンバーでずっと一緒にいたい。
恋なんていらないから一緒にいたいよ。
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