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暖かくて気持ちいい──。
冷え性で寒がりなのに今日は繭に包まれているかのように身体全体が気持ちいい。
なんだか安心する──。
そう擦り寄れば脚が絡まる。
裸足の体温と感触が病みつきになりそうだ──

「‼︎ 」

意識が浮上し状態把握に脳が動きだす。
私を囲うように陽ちゃんの腕や脚が絡まっている!
陽ちゃんの寝息が微かに首元にかかりくすぐったい。
ベットから──陽ちゃんから抜け出そうと足掻けば腕は更に絡まり唇が首元に当たる。

「よ、陽ちゃん…」

そう呼び掛ければ抱きしめた陽ちゃんの腕が更に強まる。

「陽ちゃん!」

「ん…?なに?」

「──起きるから離して、陽ちゃん」

身を捩っても離してくれない。

「まだ──眠っていようよ。寒いし……くっついていようよ」

時計を見れば7時前だ。
結構眠りが浅いのにこの時間まで一度も起きなかったのは驚きだ。
しかも横に人がいる状態で。
昨日は……なんだかいろいろあったから疲れていたのかもしれない。

「⁉︎」

……どうしよう。
私のお尻の辺りに……硬いものが当たっている。
えっ⁈ なに?どうしたらいいの⁈
これは男の人の大事な場所だよね?
陽ちゃんから離れようと試みるも更に抱きつかれる。

「よ、陽ちゃん……あ、の……」

恥ずかしいけれど、もしかしたら陽ちゃんの方が恥ずかしいかもしれない。
口に出せなくてどうしたらいいのか分からない。

「大丈夫。朝勃ちはただの生理現象だから、緑子さんを襲ったりしないよ」

そう言って抱きついたままの姿勢を崩さない。
そう言われても、その感触が伝わって──変な気持ちになる。
眠る前は柔らか生地のスラックスを履いていた筈なのに、今は脱いでいる。
いつ脱いだの⁈

「陽ちゃんは良くても私は違うの!陽ちゃんはまだ眠ってていいから!」

ようやく緩んだ腕から逃れることが出来た。

「おはよう」

そう微笑む陽ちゃんの笑顔ががなんだか眩しい。

「おはよう。陽ちゃんが起きてくれないとベットから出られないの」

私側は壁で陽ちゃんを跨がないとベットから抜け出せない。

「なら起きたくないよ。一緒に微睡んでいようよ」

少し起こしていた身体を再びベットに横たえる。
仕方がない。
陽ちゃんを跨ぎ出るしかない。

「もう!陽ちゃんは眠ってて。ちょっと跨いじゃうよ?」

そう上に乗る形になれば腕を軽く引っ張られる。
それだけで体勢は崩れ陽ちゃんの上に跨って乗る形になってしまった。
イタズラ好きなのはいいけれど、なんだか今はやめてほしい。

「もう!陽ちゃ……」

跨いだ状態で陽ちゃんの股間で硬くなったものが当たっている。
動けずただただ私も固まってしまう。

「ああ……大丈夫だよ。男の朝はこんな感じだよ」

そうなの⁈
兄弟もいなかったし、父のこんな状態を見たこともないので分からないけれどそう言う事を聞いたこともある。
どうしたらいいのか分からない。
普通に治るものなのか、それとも何かしないと治らないのか。
どちらにせよ陽ちゃん自身で頑張って貰うしかない。

「私がごはん作っている間に、シャワー浴びて来て」

そこで何かしらの解決をするだろう。

「一緒に入ろ…」

「入りません!」

触れようとする手をぴしりと軽く叩き陽ちゃんの上から降りる。
大丈夫だよね?
バレてないかな?
意識しているのを知られたくない。
赤くなった顔を髪で隠し足速にキッチンへ走り去る。
と、陽ちゃんは朝食べないんだった。
頭が回ってない。
昨日から混乱していて──少し落ち着こう。
陽ちゃんがお風呂から上がれば落ち着いて話せるような自分になっていたい。
自分用の朝ごはんにはバナナと小松菜、牛乳で作ったスムージーにしよう。
いつもの自分でいたい。
いつもの朝食で気持ちを回復させよう。
──あっ、着替え──はないのでそのまま同じ服でも問題ないだろうし、タオルはわかるよね。
と、扉の開く音に目をやればキチンと服を着ている。
ホッと胸を撫で下ろす。

「陽ちゃん、髪ちゃんと乾かさないと風邪ひくよ?」

この部屋は暖房が効いてるけれど、それだけでは絶対に風邪をひいちゃう。

「乾かして」

そう言って椅子に座ってしまう。
……私の悪いところだと……分かっているつもりだけれど……つい、可愛いなぁとか思ってしまう。
コーヒーを陽ちゃんの前に置き、ドライヤーを洗面所に取りに行く。
コンセントを刺し最大値の風量を当てながら指先でほぐしていく。

「熱い?」

「気持ちいい」

そう言いながらコーヒーを飲む陽ちゃんを見ていると満たされてしまい、これでいいやと思ってしまう。
でも……昨日の話が本当なら──少し距離を置かなきゃいけないのかもしれない。
ドライヤーを切り、陽ちゃんと向き合って座る。

「昨日のこと……ちゃんと話したいの」

そう切り出せば、陽ちゃんは頬杖を付き微笑んだ。


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