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017 幸村朱音
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「やっちゃったね」
言葉は軽いのに陽の瞳が一層に冷たい。
それはそうだろう。
まさか榮吾に緑子を奪われるなんで陽も思ってもいなかった筈だ。
勿論、私も。
「もういい加減、諦めたら?」
簡単に言ってくれる。
「陽なら諦められるの?」
「諦める訳ないじゃん」
お互いの気持ちがわかり過ぎて冷笑してしまう。
馴れ合いたくはないのに。
「でも朱音さんは言えないんでしょう?緑子さんを友人としてではなく恋愛対象として見ていることを」
ソファに座り脚を組む陽の姿がエラそうでイラっとする。
「緑子を親友としても好きよ」
「緑子さんの唇にキスをして──瞳に自分を映して欲しい──そういう好きなんでしょ?」
「──貴方と同じよ」
「そりゃヤバイ」
と陽が笑う。
その笑いに違う妄想が混じっているのがわかる。
「ちょっと!緑子に何をしようと考えてるの⁈ 止めて。陽と私は違うわ」
「一緒なんでしょ?」
この男の頭の中ではどんな世界に緑子を誘っているのか考えたくもないけれど──きっと私はこの男と一緒の目で緑子を見ている。
「いいよね朱音さんは。友人の殻を被ったまま何食わぬ顔して緑子さんの側にいて身体を視姦し心を預けて貰えて堪能できるんだから」
コイツの頭の中を掻き混ぜペーストにしてしまいたい。
「お風呂も一緒に入るの?」
冗談ぽく聞いてくるが、目が笑ってないよ、陽。
「──一緒に入らないわ。緑子は誘ってくるけれど──無理よ」
自分を、抑えられる気がしない。
自信がない。どんな表情で緑子を見ているのか……緑子に気持ち悪いと思われないかと恐怖し、見ることなんてできない。
「緑子さんにお風呂を誘われるなんて……僕も誘われたいよ」
「陽にはそんな日は来ないから安心しなよ」
妄想している気持ち悪い男に釘を刺す。
「──このままだと檜垣に奪われちゃうからね……で、朱音さんはなにを緑子さんに言ったの?」
微笑んでいるが──かなり苛立っている。
「──緑子が恋愛に興味がないって言ってもいつかそんな日が来る。誰かと恋をして……私の緑子じゃなくなる時が来る。そんなの嫌だったのよ。だから──」
「だから?」
「選べって言ったの。陽か榮吾を」
「……それで緑子さんは檜垣を選んだの?」
「そうね」
「なぜ?」
「知らないわ。アンタよりも榮吾の方がよかったんじゃないの?」
詳細は言わない。
陽が未だに1番のライバルであることに変わりはないのだから。
陽も分かっているのか知らないけれどもう何も言わない。
「で、朱音さんはどうするの?このまま緑子さんが檜垣と付き合うのを黙認するの?」
そんな訳ない。
けれど、どうすればいいのか。
「……緑子は女性を恋愛対象として見れない。そんなの──分かっている!」
気持ちを伝えて今まで通り友人として一緒なんて私には無理だ。
気持ちを伝えれば友人としても緑子の側にいられない。
ならこんな気持ちは押し込めるしかなかったのに──どうしても我慢出来なかった。
「──まぁ、悩んでなよ。僕は緑子さんが欲しいから──もう〈待て〉をされても勝手にするよ」
「やめて‼︎」
やめて──緑子を盗らないで。
誰にも渡したくない。
「もう、緑子さんが望んでいた仲良しグループには戻れないんだ。なら──誰も止められないよ。緑子さんが望んでいる未来は朱音さんと親友としてこれからも側にいられることだ。その未来は朱音さんしかあげられない未来だよ?貴方が我慢すれば緑子さんも幸せ、僕も幸せ、勿論──朱音さんも緑子さんの側にいられる。親友としてだけど」
そんなの毎日、考えてる。
「陽は──男ってだけでズルいね」
「狡は女性だけの特権じゃないからね」
「なにそれ……」
全然面白くない。
「早目に答えを出しなよ。緑子さんに今日のことをどう説明するつもりか知らないけれど僕は僕の思うようにするから」
──陽は勝てると確信している。
緑子を手に入れるのは榮吾でも私でもないと……自分だと思っている。
「大嫌いよ──アンタなんか」
言葉は軽いのに陽の瞳が一層に冷たい。
それはそうだろう。
まさか榮吾に緑子を奪われるなんで陽も思ってもいなかった筈だ。
勿論、私も。
「もういい加減、諦めたら?」
簡単に言ってくれる。
「陽なら諦められるの?」
「諦める訳ないじゃん」
お互いの気持ちがわかり過ぎて冷笑してしまう。
馴れ合いたくはないのに。
「でも朱音さんは言えないんでしょう?緑子さんを友人としてではなく恋愛対象として見ていることを」
ソファに座り脚を組む陽の姿がエラそうでイラっとする。
「緑子を親友としても好きよ」
「緑子さんの唇にキスをして──瞳に自分を映して欲しい──そういう好きなんでしょ?」
「──貴方と同じよ」
「そりゃヤバイ」
と陽が笑う。
その笑いに違う妄想が混じっているのがわかる。
「ちょっと!緑子に何をしようと考えてるの⁈ 止めて。陽と私は違うわ」
「一緒なんでしょ?」
この男の頭の中ではどんな世界に緑子を誘っているのか考えたくもないけれど──きっと私はこの男と一緒の目で緑子を見ている。
「いいよね朱音さんは。友人の殻を被ったまま何食わぬ顔して緑子さんの側にいて身体を視姦し心を預けて貰えて堪能できるんだから」
コイツの頭の中を掻き混ぜペーストにしてしまいたい。
「お風呂も一緒に入るの?」
冗談ぽく聞いてくるが、目が笑ってないよ、陽。
「──一緒に入らないわ。緑子は誘ってくるけれど──無理よ」
自分を、抑えられる気がしない。
自信がない。どんな表情で緑子を見ているのか……緑子に気持ち悪いと思われないかと恐怖し、見ることなんてできない。
「緑子さんにお風呂を誘われるなんて……僕も誘われたいよ」
「陽にはそんな日は来ないから安心しなよ」
妄想している気持ち悪い男に釘を刺す。
「──このままだと檜垣に奪われちゃうからね……で、朱音さんはなにを緑子さんに言ったの?」
微笑んでいるが──かなり苛立っている。
「──緑子が恋愛に興味がないって言ってもいつかそんな日が来る。誰かと恋をして……私の緑子じゃなくなる時が来る。そんなの嫌だったのよ。だから──」
「だから?」
「選べって言ったの。陽か榮吾を」
「……それで緑子さんは檜垣を選んだの?」
「そうね」
「なぜ?」
「知らないわ。アンタよりも榮吾の方がよかったんじゃないの?」
詳細は言わない。
陽が未だに1番のライバルであることに変わりはないのだから。
陽も分かっているのか知らないけれどもう何も言わない。
「で、朱音さんはどうするの?このまま緑子さんが檜垣と付き合うのを黙認するの?」
そんな訳ない。
けれど、どうすればいいのか。
「……緑子は女性を恋愛対象として見れない。そんなの──分かっている!」
気持ちを伝えて今まで通り友人として一緒なんて私には無理だ。
気持ちを伝えれば友人としても緑子の側にいられない。
ならこんな気持ちは押し込めるしかなかったのに──どうしても我慢出来なかった。
「──まぁ、悩んでなよ。僕は緑子さんが欲しいから──もう〈待て〉をされても勝手にするよ」
「やめて‼︎」
やめて──緑子を盗らないで。
誰にも渡したくない。
「もう、緑子さんが望んでいた仲良しグループには戻れないんだ。なら──誰も止められないよ。緑子さんが望んでいる未来は朱音さんと親友としてこれからも側にいられることだ。その未来は朱音さんしかあげられない未来だよ?貴方が我慢すれば緑子さんも幸せ、僕も幸せ、勿論──朱音さんも緑子さんの側にいられる。親友としてだけど」
そんなの毎日、考えてる。
「陽は──男ってだけでズルいね」
「狡は女性だけの特権じゃないからね」
「なにそれ……」
全然面白くない。
「早目に答えを出しなよ。緑子さんに今日のことをどう説明するつもりか知らないけれど僕は僕の思うようにするから」
──陽は勝てると確信している。
緑子を手に入れるのは榮吾でも私でもないと……自分だと思っている。
「大嫌いよ──アンタなんか」
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