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元の世界
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元の世界に戻って数ヶ月──数ヶ月も経ってしまった。
季節は冬になり雪がちらつく。
東京で降るのは最近では珍しいけれど積もるほどでもないだろう。
このの世界に戻り──何を見ても君を想う。
駅では君の姿を探してしまう。
眩しいほど照明が煌めけば、あの日々のぼんやりとした灯りに照らされる君を思い描く。
美味しい食事を食べれば君の喜ぶ顔を想像してしまう。
雪が舞うこの景色も見せてあげたいけれど、
本当の白夜をいつか二人で見たいと何度も願う。
オーロラだって見せたいよ。
幻想的な現象でさえきっと彼女の美しさを際立たせる一つになってしまいそうだけれど。
「そんなにお菓子好きだったけ? いつもチョコ持ってるな」
携帯の横に置かれたチョコレートに友人が不思議がる。
「これは僕のではないよ」
「じゃあ誰のだよ」
「──誰のだろうね──」
荷物を整理し席を立つ。
「今日も行くのか? 」
「あぁ」
「あの爺さんお前がいないと癇癪起こして大変だもんな。よく携帯に病院から電話かかってきてたよな。少しは落ち着いたのか? 」
「いや相変わらずだよ。言葉が話せないから意思疎通が難しい上に気分屋で我儘な人だからね」
「お前──もうあの爺さんに関わるなよ。俺一度、お前の後を付いて病院まで行ったんだ。お前らの言葉が俺には分からなかったから話の内容は分からないけれど……お前が消息不明になったのに関係あるんだろう? お前が話したくないのは分かっているよ。けれどあの爺さんの見る目はまるで敵を見ているようだった。お前が病院代から全ての代金を支払っているんだろう? そこまでする相手じゃないよ。縁を切った方がいい」
コートを羽織り、マフラーを巻く。
──僕がこの世界に連れてきたんだ。
僕を恨み罵るだろうね。
「まだ諦めきれない縁があるんだよ。神様に切られても結び直してみせる。その為には彼は──そうだね。彼は僕の神様なのかもしれない。絶対に僕の願いを叶えてもらうよ」
その為に掴んだ黄洸の腕だ。
──あの時、もう鏡花を連れて帰れないと分かった。
だから黄洸の腕を引っ張った。
神の真似事がしたいならいくらでもすればいい。
僕が信仰しお前を讃えてやるさ。
ただし、願いは叶えてもらうよ。
「あの爺さんの手術、成功したのか? 」
「そこまで進行していない初期癌だったから問題なさそうだよ」
「問題ないって言ってもお前……あの爺さん保険証とかないんだろう。いくらお前でもお金大丈夫か? 」
「これくらいは大丈夫だよ。けれど長期戦になるかもしれないからその時は債券や株や不動産どれでも売るよ」
「──マジかよ」
「──僕の一番欲しいものを持ってるんだ。交渉しているけれど……なかなかね」
「他のモノじゃダメなのか? 代わりになりそうなモノなんて世の中いくらでも溢れているだろうに。第一、モノに固執するタイプじゃないだろう? 」
「人生が変わる出会いだったんだよ」
彼に背を向け去ろうとするが尚も声を掛けられる。
「──手に入れられなかったらどうするんだ?」
「──考えてないよ。そんなこと。もし──僕がまた姿を消したら君が欲しがっていた腕時計は君にあげるよ」
「──お前がいなくなるんなら要らねぇよ」
「その時は、僕の願いが叶った時だ。お福分けだよ」
「お前、日本人じゃないのに日本人でも使わない言葉使うなよ。けど──その時は時計貰うからな」
「あぁ」
「明日か?明後日か?」
「さぁね。僕があの人を説得できたら今日にでもあげたいけれど……最悪資金が尽きたら売っちゃうから、その時はごめんね」
「‼︎ 爺さんの説得頑張れよ!」
──出来ればこの世界に連れ帰りたい。
けれど──最悪無理なら──
「時空を超えてでも君を一人にしない──そう誓った──」
何度でもあの世界に行ってやる。
だから鏡花、もう少しだけ待っていてほしい。
季節は冬になり雪がちらつく。
東京で降るのは最近では珍しいけれど積もるほどでもないだろう。
このの世界に戻り──何を見ても君を想う。
駅では君の姿を探してしまう。
眩しいほど照明が煌めけば、あの日々のぼんやりとした灯りに照らされる君を思い描く。
美味しい食事を食べれば君の喜ぶ顔を想像してしまう。
雪が舞うこの景色も見せてあげたいけれど、
本当の白夜をいつか二人で見たいと何度も願う。
オーロラだって見せたいよ。
幻想的な現象でさえきっと彼女の美しさを際立たせる一つになってしまいそうだけれど。
「そんなにお菓子好きだったけ? いつもチョコ持ってるな」
携帯の横に置かれたチョコレートに友人が不思議がる。
「これは僕のではないよ」
「じゃあ誰のだよ」
「──誰のだろうね──」
荷物を整理し席を立つ。
「今日も行くのか? 」
「あぁ」
「あの爺さんお前がいないと癇癪起こして大変だもんな。よく携帯に病院から電話かかってきてたよな。少しは落ち着いたのか? 」
「いや相変わらずだよ。言葉が話せないから意思疎通が難しい上に気分屋で我儘な人だからね」
「お前──もうあの爺さんに関わるなよ。俺一度、お前の後を付いて病院まで行ったんだ。お前らの言葉が俺には分からなかったから話の内容は分からないけれど……お前が消息不明になったのに関係あるんだろう? お前が話したくないのは分かっているよ。けれどあの爺さんの見る目はまるで敵を見ているようだった。お前が病院代から全ての代金を支払っているんだろう? そこまでする相手じゃないよ。縁を切った方がいい」
コートを羽織り、マフラーを巻く。
──僕がこの世界に連れてきたんだ。
僕を恨み罵るだろうね。
「まだ諦めきれない縁があるんだよ。神様に切られても結び直してみせる。その為には彼は──そうだね。彼は僕の神様なのかもしれない。絶対に僕の願いを叶えてもらうよ」
その為に掴んだ黄洸の腕だ。
──あの時、もう鏡花を連れて帰れないと分かった。
だから黄洸の腕を引っ張った。
神の真似事がしたいならいくらでもすればいい。
僕が信仰しお前を讃えてやるさ。
ただし、願いは叶えてもらうよ。
「あの爺さんの手術、成功したのか? 」
「そこまで進行していない初期癌だったから問題なさそうだよ」
「問題ないって言ってもお前……あの爺さん保険証とかないんだろう。いくらお前でもお金大丈夫か? 」
「これくらいは大丈夫だよ。けれど長期戦になるかもしれないからその時は債券や株や不動産どれでも売るよ」
「──マジかよ」
「──僕の一番欲しいものを持ってるんだ。交渉しているけれど……なかなかね」
「他のモノじゃダメなのか? 代わりになりそうなモノなんて世の中いくらでも溢れているだろうに。第一、モノに固執するタイプじゃないだろう? 」
「人生が変わる出会いだったんだよ」
彼に背を向け去ろうとするが尚も声を掛けられる。
「──手に入れられなかったらどうするんだ?」
「──考えてないよ。そんなこと。もし──僕がまた姿を消したら君が欲しがっていた腕時計は君にあげるよ」
「──お前がいなくなるんなら要らねぇよ」
「その時は、僕の願いが叶った時だ。お福分けだよ」
「お前、日本人じゃないのに日本人でも使わない言葉使うなよ。けど──その時は時計貰うからな」
「あぁ」
「明日か?明後日か?」
「さぁね。僕があの人を説得できたら今日にでもあげたいけれど……最悪資金が尽きたら売っちゃうから、その時はごめんね」
「‼︎ 爺さんの説得頑張れよ!」
──出来ればこの世界に連れ帰りたい。
けれど──最悪無理なら──
「時空を超えてでも君を一人にしない──そう誓った──」
何度でもあの世界に行ってやる。
だから鏡花、もう少しだけ待っていてほしい。
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