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萍水遭逢 【偶然の出会いから知り合いになる事】
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「緋和は俺の父さん好きだよな」
唇を尖らせ拗ねたように青が言い放つ。
電車の中は冷房が効いていて先程の暑さが引き心地良い。
青も一応、短パンから黒のパンツに履き替えてきている。
短パンはホテルに入れてもらえなかったら嫌だもん。
一応、保険を兼ねて履き替えて来てくれたんだろう。
「奏多さんを嫌う理由なんてないもの」
「あんな無口で無愛想なヤツのどこがだよ」
父親への言葉ではない。
けれど──冷めた家庭で育った青には奏多さんを父親としては足りないと思ってしまうのだろう。
青の気持ちは分かるのだけれど……なんだか私はそう思えない。
「奏多さん……このホテルのお茶のチケット──本当は莉緒さんと一緒に行こうと思って手に入れたんじゃないのかな」
なにか重大な日みたいだった。
仕事を休み、今日限定のチケットを持っていたのは理由があるんじゃないのかな?
「──そんな訳ないだろ。母さんと父さんが一緒に出掛けるなんてここ最近見たことないよ」
「そっか……」
じゃあ、奏多さんや莉緒さんに別に恋人がいる可能性はあるのかな……こんなことを青には聞けない。
「青は奏多さんを嫌うけど──似てないって思うけど、やっぱり親子だなって思うところもあるよ。特に瞳とか──」
青がムッとし黙ってしまった。
青は──莉緒さん寄りで奏多さんを嫌ってる。
無理はないのかもしれない。
2人が楽しく笑い合っているのを見たことがない。
奏多さんはいつもただ眺めるようゆ見ている。
──何か言いたげな瞳で責めるような。
「やっぱり青と奏多さんの瞳は似てないかな……ってか、青!なんだか緊張して来たね。こんな高級なホテルのお茶なんて私初めてだよ」
「俺だって初めてだ‼︎」
「なんか失敗したら素直に謝ろう!それが最善な気がする。よし!──楽しみが増してきた‼︎」
「緋和は強いなぁ。俺はやっぱりまだ緊張気味だ」
「もう腹括っちゃお。どうやっても私らが不慣れなのは誰が見ても明らかだよ。それを取り繕ったら余計にカッコ悪いよ」
「──ダセェな、俺。緋和と初めて幼馴染としてじゃなく恋人としてのデートなのに──せめて予行練習する時間があればもう少しこのホテルのこととか調べたのに……」
落ち込む青は私のさっきの言葉を聞いてないのだろうか?
「だから──取り繕った方がカッコ悪いの!」
少し放っておこう。
男の子は男の子なりのプライドとかあるのかもしれないし。
目的の駅に着き電車を降りればエスカレーターは人が多いので階段を使う。
「緋和は元気だなぁ」
「青はエスカレーター使っていいよ?私は今から沢山食べちゃうから少しでも動かないとね」
「万年ダイエッターだからなぁ緋和は」
「男子は分からないんだよ。女子は普段から絶え間ない努力をしてるのよ」
「その割にデザート大好きだけどな」
そうなのだ──青のチョッカイに怒りながらも認めてしまう。
「女の子は──好きなものの為なら頑張っちゃうんだよ」
改札口を出れば暑さと湿気が更に来る。
さっきまで乗っていた電車が恋しくなる。
「──ホント──昔ってこんなに暑くなかったよね?」
「だな」
「温暖化ってヤツなのかなぁ?」
「さぁね。異常気象も多いし──けど今日は暑いけどいい天気だ。とびっきりのデート日和だ‼︎」
言って──青が照れているのを必死に隠しているのが分かる。
青──一生懸命口に出したのがバレバレだよ。
幼馴染としてではなく、デートなのを強調したいのだろう。
可愛いなぁ。
「そうだね。デート日和だね──暑いけど……手を繋ぐ?」
「えっ⁈ えっ⁉︎」
焦って狼狽る青は限界だったのか先に行ってしまった。
私だって恥ずかしいのを頑張って言ったんだけど。
ちょっと不貞腐れてみる。
まぁ──この3月までは中学生だったんだし、これが私たちの限界だ。
丁度いい──気持ちいい距離。
高校を卒業する頃にはどんな2人になっているだろうか?
どんな大人になるだろうか?
そう考えると──ふと奏多さんを思い出す。
奏多さんはどんな風に青年時代を過ごし莉緒さんと出会ったのだろう。
以前、青に聞いた時はお見合いではなかった。
恋愛をし──愛し会った2人は今──冷めている。
なんだか寂しい。
私と青もいつかそうなるのだろうか?
想像のできない未来だ。
【未来が変わる日──運命通りの人生から逸脱する日】
奏多さんの言葉を思い出す。
今日、なにがあるのか。
──昔、なにがあったのだろうか。
【今度は──誰を選ぶの?】
分からない──意味の分からない言葉を呟いた。
奏多さんはたまに意味の分からない言葉を呟く。
その度に私は──それが奏多さんの叫びのような──泣いているような気がして────しまいたくなる。
「緋和!どうした?大丈夫か?」
歩みの遅いことに心配してくれた青が私の顔を覗く。
「──なんでもない。行こう!」
過去も未来も現在も──全ては線に過ぎなくて一方通行だと思っていた。
それなのに──線は点となり飛び越えてしまうことをこれから私は知ってしまう。
神様の戯れに巻き込まれてるなんて思ってもいなかった。
唇を尖らせ拗ねたように青が言い放つ。
電車の中は冷房が効いていて先程の暑さが引き心地良い。
青も一応、短パンから黒のパンツに履き替えてきている。
短パンはホテルに入れてもらえなかったら嫌だもん。
一応、保険を兼ねて履き替えて来てくれたんだろう。
「奏多さんを嫌う理由なんてないもの」
「あんな無口で無愛想なヤツのどこがだよ」
父親への言葉ではない。
けれど──冷めた家庭で育った青には奏多さんを父親としては足りないと思ってしまうのだろう。
青の気持ちは分かるのだけれど……なんだか私はそう思えない。
「奏多さん……このホテルのお茶のチケット──本当は莉緒さんと一緒に行こうと思って手に入れたんじゃないのかな」
なにか重大な日みたいだった。
仕事を休み、今日限定のチケットを持っていたのは理由があるんじゃないのかな?
「──そんな訳ないだろ。母さんと父さんが一緒に出掛けるなんてここ最近見たことないよ」
「そっか……」
じゃあ、奏多さんや莉緒さんに別に恋人がいる可能性はあるのかな……こんなことを青には聞けない。
「青は奏多さんを嫌うけど──似てないって思うけど、やっぱり親子だなって思うところもあるよ。特に瞳とか──」
青がムッとし黙ってしまった。
青は──莉緒さん寄りで奏多さんを嫌ってる。
無理はないのかもしれない。
2人が楽しく笑い合っているのを見たことがない。
奏多さんはいつもただ眺めるようゆ見ている。
──何か言いたげな瞳で責めるような。
「やっぱり青と奏多さんの瞳は似てないかな……ってか、青!なんだか緊張して来たね。こんな高級なホテルのお茶なんて私初めてだよ」
「俺だって初めてだ‼︎」
「なんか失敗したら素直に謝ろう!それが最善な気がする。よし!──楽しみが増してきた‼︎」
「緋和は強いなぁ。俺はやっぱりまだ緊張気味だ」
「もう腹括っちゃお。どうやっても私らが不慣れなのは誰が見ても明らかだよ。それを取り繕ったら余計にカッコ悪いよ」
「──ダセェな、俺。緋和と初めて幼馴染としてじゃなく恋人としてのデートなのに──せめて予行練習する時間があればもう少しこのホテルのこととか調べたのに……」
落ち込む青は私のさっきの言葉を聞いてないのだろうか?
「だから──取り繕った方がカッコ悪いの!」
少し放っておこう。
男の子は男の子なりのプライドとかあるのかもしれないし。
目的の駅に着き電車を降りればエスカレーターは人が多いので階段を使う。
「緋和は元気だなぁ」
「青はエスカレーター使っていいよ?私は今から沢山食べちゃうから少しでも動かないとね」
「万年ダイエッターだからなぁ緋和は」
「男子は分からないんだよ。女子は普段から絶え間ない努力をしてるのよ」
「その割にデザート大好きだけどな」
そうなのだ──青のチョッカイに怒りながらも認めてしまう。
「女の子は──好きなものの為なら頑張っちゃうんだよ」
改札口を出れば暑さと湿気が更に来る。
さっきまで乗っていた電車が恋しくなる。
「──ホント──昔ってこんなに暑くなかったよね?」
「だな」
「温暖化ってヤツなのかなぁ?」
「さぁね。異常気象も多いし──けど今日は暑いけどいい天気だ。とびっきりのデート日和だ‼︎」
言って──青が照れているのを必死に隠しているのが分かる。
青──一生懸命口に出したのがバレバレだよ。
幼馴染としてではなく、デートなのを強調したいのだろう。
可愛いなぁ。
「そうだね。デート日和だね──暑いけど……手を繋ぐ?」
「えっ⁈ えっ⁉︎」
焦って狼狽る青は限界だったのか先に行ってしまった。
私だって恥ずかしいのを頑張って言ったんだけど。
ちょっと不貞腐れてみる。
まぁ──この3月までは中学生だったんだし、これが私たちの限界だ。
丁度いい──気持ちいい距離。
高校を卒業する頃にはどんな2人になっているだろうか?
どんな大人になるだろうか?
そう考えると──ふと奏多さんを思い出す。
奏多さんはどんな風に青年時代を過ごし莉緒さんと出会ったのだろう。
以前、青に聞いた時はお見合いではなかった。
恋愛をし──愛し会った2人は今──冷めている。
なんだか寂しい。
私と青もいつかそうなるのだろうか?
想像のできない未来だ。
【未来が変わる日──運命通りの人生から逸脱する日】
奏多さんの言葉を思い出す。
今日、なにがあるのか。
──昔、なにがあったのだろうか。
【今度は──誰を選ぶの?】
分からない──意味の分からない言葉を呟いた。
奏多さんはたまに意味の分からない言葉を呟く。
その度に私は──それが奏多さんの叫びのような──泣いているような気がして────しまいたくなる。
「緋和!どうした?大丈夫か?」
歩みの遅いことに心配してくれた青が私の顔を覗く。
「──なんでもない。行こう!」
過去も未来も現在も──全ては線に過ぎなくて一方通行だと思っていた。
それなのに──線は点となり飛び越えてしまうことをこれから私は知ってしまう。
神様の戯れに巻き込まれてるなんて思ってもいなかった。
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