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§ わたしたち、いまさら抵抗できません。
01
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「うわっ! なんだよこれ!?」
「ちょっと! なによこれ!?」
彼らの宴の後をやっと片付け終わり、部屋の探検を始めた私たちは、それぞれ別の場所で同時に叫び声を上げた。
「おーい波瑠! こっち来てみろよ? こりゃひでぇや……」
何も無いガランとしたベッドルーム予定であろう部屋からリビングを抜け、声のした方、廊下の先の部屋へ行くとそこは……。
なんということでしょう。
「う、そ……」
四畳半ほどの狭い部屋の中に、堆く積み上げられた段ボール箱。いったい何時何処からかき集めて来たのだろうと思うその箱たちの表面には、りんごにみかん、麦茶にビール等々、様々な絵柄がプリントされている。
当然のごとく、どの箱が誰のものなのか、どの箱に何が入っているのか、開けてみるまで判別不可能という素晴らしいものたち。
「そっちは?」
「なんにもない」
彼らは、自分たちが履くスリッパを人数分揃え、自分たちが心地よく宴会をするためにリビングセットを設え、自分たちの飲み物を冷やす冷蔵庫を買い、用を足すためのトイレットペーパーと手拭きタオルをセッティングした、つまり、その他は空き家同然なのだ。
そして、両家にあった私たちの荷物は、とりあえず何処かから調達して来た段ボール箱に詰め込んで、この部屋に運び込み積み上げられたわけだ。この山を一目見れば、中身への気遣いがあったかなかったかなんてことは、考えるまでもなかろう。
宴の後片付けをしているとき、キッチンに食器や鍋釜が無いのは気がついた。細かいものは好みがあるだろうから自分たちで揃えろという配慮なのかと思いつつ、一瞬、嫌な予感が過ったが、まさか、ここまでとは。
「俺たちのために家具を揃えたって言ってたよな?」
「うん。そう聞いた」
「荷物は全部運んだって」
「そう、運んでるねきっと全部。だから、今日からここで暮らせって言ってたよね?」
「ああ、そうだ。そう言ってたな」
「片付けまで全部してくれとは思ってないけどな」
「それは、そう……」
続く言葉を飲み込む。呆然と段ボール箱の山を眺めながら暫しの沈黙の後、俊輔がそっと部屋のドアを閉めた。
「ちょっと! なによこれ!?」
彼らの宴の後をやっと片付け終わり、部屋の探検を始めた私たちは、それぞれ別の場所で同時に叫び声を上げた。
「おーい波瑠! こっち来てみろよ? こりゃひでぇや……」
何も無いガランとしたベッドルーム予定であろう部屋からリビングを抜け、声のした方、廊下の先の部屋へ行くとそこは……。
なんということでしょう。
「う、そ……」
四畳半ほどの狭い部屋の中に、堆く積み上げられた段ボール箱。いったい何時何処からかき集めて来たのだろうと思うその箱たちの表面には、りんごにみかん、麦茶にビール等々、様々な絵柄がプリントされている。
当然のごとく、どの箱が誰のものなのか、どの箱に何が入っているのか、開けてみるまで判別不可能という素晴らしいものたち。
「そっちは?」
「なんにもない」
彼らは、自分たちが履くスリッパを人数分揃え、自分たちが心地よく宴会をするためにリビングセットを設え、自分たちの飲み物を冷やす冷蔵庫を買い、用を足すためのトイレットペーパーと手拭きタオルをセッティングした、つまり、その他は空き家同然なのだ。
そして、両家にあった私たちの荷物は、とりあえず何処かから調達して来た段ボール箱に詰め込んで、この部屋に運び込み積み上げられたわけだ。この山を一目見れば、中身への気遣いがあったかなかったかなんてことは、考えるまでもなかろう。
宴の後片付けをしているとき、キッチンに食器や鍋釜が無いのは気がついた。細かいものは好みがあるだろうから自分たちで揃えろという配慮なのかと思いつつ、一瞬、嫌な予感が過ったが、まさか、ここまでとは。
「俺たちのために家具を揃えたって言ってたよな?」
「うん。そう聞いた」
「荷物は全部運んだって」
「そう、運んでるねきっと全部。だから、今日からここで暮らせって言ってたよね?」
「ああ、そうだ。そう言ってたな」
「片付けまで全部してくれとは思ってないけどな」
「それは、そう……」
続く言葉を飲み込む。呆然と段ボール箱の山を眺めながら暫しの沈黙の後、俊輔がそっと部屋のドアを閉めた。
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