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§ 泡沫 *
三
しおりを挟む「失礼しました……」
衣服を整えた後、透は実験準備室のドアに手を掛けた。
そこへ、司の声が追ってきた。
「望月」
「……はい」
ドアから体を半分出した状態で、透は後ろを振り向いた。
白衣の司は、何事も無かったかのように、安全マニュアルに目を落としている。
透に視線は寄こさないまま、彼は淡々と言った。
「来週の水曜日も、待ってるぞ」
「……」
「返事は?」
「……はい」
そこでようやく顔を上げた司と、透は目が合った。
そして、見てしまった。
ちょっと気難しい司が、たまに見せる優しい笑顔を。
ドアを閉じ、透は彼の笑顔から、慌てて逃げ出した。
熱いひとときの後は、羞恥と後悔が待っていた。
人気のない廊下を歩きながら、さらに絶望の味を噛み締めていた。
多分、僕は。
もう、逃げられない。
この甘い地獄から。
衣服を整えた後、透は実験準備室のドアに手を掛けた。
そこへ、司の声が追ってきた。
「望月」
「……はい」
ドアから体を半分出した状態で、透は後ろを振り向いた。
白衣の司は、何事も無かったかのように、安全マニュアルに目を落としている。
透に視線は寄こさないまま、彼は淡々と言った。
「来週の水曜日も、待ってるぞ」
「……」
「返事は?」
「……はい」
そこでようやく顔を上げた司と、透は目が合った。
そして、見てしまった。
ちょっと気難しい司が、たまに見せる優しい笑顔を。
ドアを閉じ、透は彼の笑顔から、慌てて逃げ出した。
熱いひとときの後は、羞恥と後悔が待っていた。
人気のない廊下を歩きながら、さらに絶望の味を噛み締めていた。
多分、僕は。
もう、逃げられない。
この甘い地獄から。
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