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杪夏の昼間、
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しおりを挟む「おっちゃん、怪しいやつ捕まえてきたよ。多分何かしら前科あるでしょ、こいつ。まぁ、なかったらうちの店で無銭飲食した罪とかで捕まえといて」
自分の体重の倍以上ある大男を雑に投げた。
投げた先には、鎧に身を包んだ、いかにもな兵士が居た。
「お前またやったのか。犯罪者かどうかはっきりしないやつを捕まえてくるんじゃねえよ。もしこいつが顔が怖いだけのまともなやつだったらどうするんだよ」
兵士のおっちゃんは投げられた大男を担ぎ建物の中に入っていく。
おっちゃんは振り返らずに俺に言った。
「いつも通り、調書を作らなならんから付いて来い。報酬はその後だ」
俺はおっちゃんの背中を追って建物の中に入っていく。
この建物は領主が立てた兵舎だ。
立派な建物に入るたびに毎度感心する。
しばらく無言でついていくと、来賓用の部屋のようなところに通された。
気を失っている大男を雑にわきに置き、向かい合うように置かれた2つの椅子の内、扉の近くの席におっちゃんは座った。
おっちゃんは俺にも座るように言った。
俺が腰を下ろすと、おっちゃんは大男を指さして聞いてきた。
「で、こいつは何をしたんだ?」
圧をかけて聞いてくるのではなく、いつもの調子で聞いてくれるおっちゃん。
このおっちゃんは、領主に仕えているくせに上から目線じゃないから話しやすい。
とりあえずここまでの経緯を説明しよう。
「こいつはな、スラムの若い奴らに対して恐喝まがいのことをやっていたんだ。具体的には、粗悪な商品を法外な価格で売っていた。それを若いやつに圧をかけて買わせようとしてたんだ。そんなやつはそこら辺にいっぱいいるからみんな慣れているんで、だれも買わねえ。こいつは、いくら圧をかけても売れねえから、むしゃくしゃしたのか暴れ出したんだ。流石にスラムで暴れるようなやつは見過ごせねえから顎に一発拳を打ち込んで黙らせたんだ」
俺はあんま頭が良くねえから、とりあえず身振り手振りを交えながら話した。
その間おっちゃんは真剣にメモを取りながら俺の話を聞いていた。
おっちゃんはメモを一通り取り終えると、顔を上げて独り言のように呟いた。
「とりあえず、町中で暴れた罪で捕まえとくか。その商売の被害者はいないんだろう?」
「おうよ。だれもそんなもんには引っかからねえよ。スラムの奴らは学はねえけど、その代わりに頭の中に生活の知恵が詰まってるからな」
胸を張っておっちゃんの独り言に応えた。
「それはそんなに誇ることじゃねえんじゃねえか?」
おっちゃんは呆れたような表情をしている。なんでだ?
まぁ、いっか。
「それでこいつを連れてきた報酬はいくらぐらい出してくれるんだよ」
体を乗り出し、ワクワクしながらおっちゃんに聞く。
「お前も物好きだよな。兵士の変わりに犯罪者を捕まえてきて、手柄を売るなんて。最初に『おっちゃん犯罪者捕まえたから、これおっちゃんが捕まえたことにしていいから報酬をちょっと頂戴』って交渉してきたときは驚いたぞ。普通犯罪者捕まえたら冒険者ギルドにもって行って換金するんだがな」
なんかおっちゃんが長々と話を始めた。
こっちはさっさと金の話をしたいのに。こういうときのおっちゃんは面倒くさい。
「おっちゃん。何回も言ってるけど、俺は、市民証も冒険証も持ってないから、冒険者ギルド行っても換金できないの。それより早く、お、か、ね」
「分かった分かった。金の話だろ。最近お前がいっぱい犯罪者を捕まえてくるから、領主がこっちに回してくれる予算が増えたんでな、今回は奮発できるぞ。こいつなら銀貨一枚ってところか?」
おっちゃんが浮かれながら言った。
下世話な顔で、おっちゃんが笑っている。
銀貨一枚!?
「おっちゃんちょっと安すぎやしねえか。前回のやつが銀貨一枚と大銅貨二十枚だったんだから、奮発するなら銀貨二枚ぐらい出してもらわなきゃ、割りに合わん」
こっちはこれに生活がかかっているんだ、妥協はできない。
「おぉ、だいぶ強気に出たね。でも、君はここでこいつを換金しなきゃ、換金できないんでしょ?それならもう少し妥協すべきだ。銀貨一枚大銅貨五十枚でどうだろう?」
おっちゃんの表情が真剣なものになった。
確かおっちゃんの実家は商人の家だったっけ。
おっちゃんが商人の目になっている。この交渉にそんだけ、真剣に臨んでいるんだな。
よし、その気持を買おうじゃねえか。
「わかった。銀貨一枚大銅貨五十枚でいいよ。このやり取りもこれで最後か…少し寂しいね」
おっちゃんは、何を言っているのかわからないという顔をする。
「なんでなんだ?街から出ていくのか?」
晴れ晴れとした顔で俺は言う。
「いや、今日で俺は成人なんだ。ギルドに行って、加護を見てもらうんだ。そのときに冒険者の登録もするから、もうここに持ってこなくて良くなるんだ」
少し寂しそうな顔をするおっちゃん。
これは、ちょうどいい実績作りの手段を失う悲しさなのか、はたまた、俺と合わなくなることでの寂しさなのか、俺には全くわからない。
「そうなのか、いい加護だったらいいな。そうか、このやり取りももう卒業なのか。少し寂しくなるな。」
しんみりした空気をぶち壊すかのように、大男が目覚めた・
「ここはどこだよ。なんで俺はこんな場所にいるんだよ。おい、お前、簡潔に説明しろ」
大柄な態度を取る大男。
空気を読まない言動にイラッとしたので、もう一発顎に入れておいた。
「うるせえんだよ、クソ野郎。黙って寝てろよ」
そして大男は再びバタッと倒れて意識を失った。
「あぁ、そうだ。これにサインしろよ。毎度のこのやり取りもこれで最後か」
おっちゃんは、再びしんみりとした雰囲気を出しながら俺に紙とペンを渡す。
契約書に一応目を通していく。
報酬の欄に記載されている、銀貨一枚大銅貨五十枚という文字に心躍る。
今日は何うまいもんをくおうかな?
ウキウキとしながら契約書を読み進めていく。
不備がないことを確認して、サインを添える。
レーヴ・リベルテ っと。
「おっちゃんこれでいい?」
おっちゃんに俺がサインを書いた契約書を渡す。
「おう、大丈夫だ。じゃあこれが報酬だ。『加護の儀』頑張ってこいよ」
契約書と交換で、お金の入った袋を渡された。
ずっしりとした重みが、価値の重みのようで心地よい。
ただ、なんかいつもより重い気がする。
銀貨一枚大銅貨五十枚ってこんな重さだっけ?
「おっちゃん、これの中身って本当に銀貨一枚大銅貨五十枚?なんか重くない?」
気になったのでおっちゃんに直接聞いてみることにした。
するとおっちゃんは悪戯がバレた子供みたいな顔をした後、照れくさそうに言った。
「おまえの成人祝にちょっとだけ多めに入れといたんだよ。まさかもっただけでバレるとは思わなかったがな」
俺は胸を張っておっちゃんに自慢気に言う。
「重さでお金の量がわからないとスラムじゃすぐに騙されるんだよ」
おっちゃんは呆れたような顔でツッコミを入れてきた。
「だから、それは誇るようなことじゃねえだろ」
しばらくおっちゃんと雑談をしているとあっという間に時間が過ぎてしまった。
いつの間にか、もうそろそろ兵舎を出ないと加護の儀に遅れてしまいそうな時間になっていた。
あわてて帰り支度を始める。
まぁ、帰り支度と言ってもお金の袋を持つことぐらいしか無いんだけどね。
「そろそろ加護の儀の時間だ。加護の儀なんて、頑張るようなもんじゃないけどね。気楽にやってくるよ。じゃあバイバイ」
そう言って、部屋から出ていく。
ドアを閉める前に、後ろからおっちゃんが言った。
「兵士のお世話になるようなこと起こすんじゃねえぞ」
おっちゃんからの餞別の言葉を胸に、兵舎から出ていった。
一度家に戻って金を置いたら、とうとう加護の儀だ。
とりあえず、加護のことについて復習しとくか。
まず加護とは、強い力をもった魔族に対抗するために主神以外の神々からもたらされる祝福。
加護の効果は様々で、具体的な数字が出ているものから抽象的な内容のものまで多種多様だ。
いい加護を授かれば一生安泰だとこの国では言われている。
軍事的なことに使える加護なら、兵士になれるし、文章などに関わる加護なら文官にだって簡単になることができる。
ちなみに、一般的には具体的な効果のものほどよいかごだとされている。
神様からの祝福に優劣をつけるだなんて、罰当たりなことをしているなぁと思う。
俺は、どんな加護を得られるのかな?
具体的な効果の加護がいいな。ふわっとした抽象的な加護は、下に見られるからな。
めちゃくちゃ具体的な加護だったらいいな。
力80%強化とか。
それに、あいつはどんな加護を得るのかな?
楽しみだな。
今からワクワクしてきた。
自分の体重の倍以上ある大男を雑に投げた。
投げた先には、鎧に身を包んだ、いかにもな兵士が居た。
「お前またやったのか。犯罪者かどうかはっきりしないやつを捕まえてくるんじゃねえよ。もしこいつが顔が怖いだけのまともなやつだったらどうするんだよ」
兵士のおっちゃんは投げられた大男を担ぎ建物の中に入っていく。
おっちゃんは振り返らずに俺に言った。
「いつも通り、調書を作らなならんから付いて来い。報酬はその後だ」
俺はおっちゃんの背中を追って建物の中に入っていく。
この建物は領主が立てた兵舎だ。
立派な建物に入るたびに毎度感心する。
しばらく無言でついていくと、来賓用の部屋のようなところに通された。
気を失っている大男を雑にわきに置き、向かい合うように置かれた2つの椅子の内、扉の近くの席におっちゃんは座った。
おっちゃんは俺にも座るように言った。
俺が腰を下ろすと、おっちゃんは大男を指さして聞いてきた。
「で、こいつは何をしたんだ?」
圧をかけて聞いてくるのではなく、いつもの調子で聞いてくれるおっちゃん。
このおっちゃんは、領主に仕えているくせに上から目線じゃないから話しやすい。
とりあえずここまでの経緯を説明しよう。
「こいつはな、スラムの若い奴らに対して恐喝まがいのことをやっていたんだ。具体的には、粗悪な商品を法外な価格で売っていた。それを若いやつに圧をかけて買わせようとしてたんだ。そんなやつはそこら辺にいっぱいいるからみんな慣れているんで、だれも買わねえ。こいつは、いくら圧をかけても売れねえから、むしゃくしゃしたのか暴れ出したんだ。流石にスラムで暴れるようなやつは見過ごせねえから顎に一発拳を打ち込んで黙らせたんだ」
俺はあんま頭が良くねえから、とりあえず身振り手振りを交えながら話した。
その間おっちゃんは真剣にメモを取りながら俺の話を聞いていた。
おっちゃんはメモを一通り取り終えると、顔を上げて独り言のように呟いた。
「とりあえず、町中で暴れた罪で捕まえとくか。その商売の被害者はいないんだろう?」
「おうよ。だれもそんなもんには引っかからねえよ。スラムの奴らは学はねえけど、その代わりに頭の中に生活の知恵が詰まってるからな」
胸を張っておっちゃんの独り言に応えた。
「それはそんなに誇ることじゃねえんじゃねえか?」
おっちゃんは呆れたような表情をしている。なんでだ?
まぁ、いっか。
「それでこいつを連れてきた報酬はいくらぐらい出してくれるんだよ」
体を乗り出し、ワクワクしながらおっちゃんに聞く。
「お前も物好きだよな。兵士の変わりに犯罪者を捕まえてきて、手柄を売るなんて。最初に『おっちゃん犯罪者捕まえたから、これおっちゃんが捕まえたことにしていいから報酬をちょっと頂戴』って交渉してきたときは驚いたぞ。普通犯罪者捕まえたら冒険者ギルドにもって行って換金するんだがな」
なんかおっちゃんが長々と話を始めた。
こっちはさっさと金の話をしたいのに。こういうときのおっちゃんは面倒くさい。
「おっちゃん。何回も言ってるけど、俺は、市民証も冒険証も持ってないから、冒険者ギルド行っても換金できないの。それより早く、お、か、ね」
「分かった分かった。金の話だろ。最近お前がいっぱい犯罪者を捕まえてくるから、領主がこっちに回してくれる予算が増えたんでな、今回は奮発できるぞ。こいつなら銀貨一枚ってところか?」
おっちゃんが浮かれながら言った。
下世話な顔で、おっちゃんが笑っている。
銀貨一枚!?
「おっちゃんちょっと安すぎやしねえか。前回のやつが銀貨一枚と大銅貨二十枚だったんだから、奮発するなら銀貨二枚ぐらい出してもらわなきゃ、割りに合わん」
こっちはこれに生活がかかっているんだ、妥協はできない。
「おぉ、だいぶ強気に出たね。でも、君はここでこいつを換金しなきゃ、換金できないんでしょ?それならもう少し妥協すべきだ。銀貨一枚大銅貨五十枚でどうだろう?」
おっちゃんの表情が真剣なものになった。
確かおっちゃんの実家は商人の家だったっけ。
おっちゃんが商人の目になっている。この交渉にそんだけ、真剣に臨んでいるんだな。
よし、その気持を買おうじゃねえか。
「わかった。銀貨一枚大銅貨五十枚でいいよ。このやり取りもこれで最後か…少し寂しいね」
おっちゃんは、何を言っているのかわからないという顔をする。
「なんでなんだ?街から出ていくのか?」
晴れ晴れとした顔で俺は言う。
「いや、今日で俺は成人なんだ。ギルドに行って、加護を見てもらうんだ。そのときに冒険者の登録もするから、もうここに持ってこなくて良くなるんだ」
少し寂しそうな顔をするおっちゃん。
これは、ちょうどいい実績作りの手段を失う悲しさなのか、はたまた、俺と合わなくなることでの寂しさなのか、俺には全くわからない。
「そうなのか、いい加護だったらいいな。そうか、このやり取りももう卒業なのか。少し寂しくなるな。」
しんみりした空気をぶち壊すかのように、大男が目覚めた・
「ここはどこだよ。なんで俺はこんな場所にいるんだよ。おい、お前、簡潔に説明しろ」
大柄な態度を取る大男。
空気を読まない言動にイラッとしたので、もう一発顎に入れておいた。
「うるせえんだよ、クソ野郎。黙って寝てろよ」
そして大男は再びバタッと倒れて意識を失った。
「あぁ、そうだ。これにサインしろよ。毎度のこのやり取りもこれで最後か」
おっちゃんは、再びしんみりとした雰囲気を出しながら俺に紙とペンを渡す。
契約書に一応目を通していく。
報酬の欄に記載されている、銀貨一枚大銅貨五十枚という文字に心躍る。
今日は何うまいもんをくおうかな?
ウキウキとしながら契約書を読み進めていく。
不備がないことを確認して、サインを添える。
レーヴ・リベルテ っと。
「おっちゃんこれでいい?」
おっちゃんに俺がサインを書いた契約書を渡す。
「おう、大丈夫だ。じゃあこれが報酬だ。『加護の儀』頑張ってこいよ」
契約書と交換で、お金の入った袋を渡された。
ずっしりとした重みが、価値の重みのようで心地よい。
ただ、なんかいつもより重い気がする。
銀貨一枚大銅貨五十枚ってこんな重さだっけ?
「おっちゃん、これの中身って本当に銀貨一枚大銅貨五十枚?なんか重くない?」
気になったのでおっちゃんに直接聞いてみることにした。
するとおっちゃんは悪戯がバレた子供みたいな顔をした後、照れくさそうに言った。
「おまえの成人祝にちょっとだけ多めに入れといたんだよ。まさかもっただけでバレるとは思わなかったがな」
俺は胸を張っておっちゃんに自慢気に言う。
「重さでお金の量がわからないとスラムじゃすぐに騙されるんだよ」
おっちゃんは呆れたような顔でツッコミを入れてきた。
「だから、それは誇るようなことじゃねえだろ」
しばらくおっちゃんと雑談をしているとあっという間に時間が過ぎてしまった。
いつの間にか、もうそろそろ兵舎を出ないと加護の儀に遅れてしまいそうな時間になっていた。
あわてて帰り支度を始める。
まぁ、帰り支度と言ってもお金の袋を持つことぐらいしか無いんだけどね。
「そろそろ加護の儀の時間だ。加護の儀なんて、頑張るようなもんじゃないけどね。気楽にやってくるよ。じゃあバイバイ」
そう言って、部屋から出ていく。
ドアを閉める前に、後ろからおっちゃんが言った。
「兵士のお世話になるようなこと起こすんじゃねえぞ」
おっちゃんからの餞別の言葉を胸に、兵舎から出ていった。
一度家に戻って金を置いたら、とうとう加護の儀だ。
とりあえず、加護のことについて復習しとくか。
まず加護とは、強い力をもった魔族に対抗するために主神以外の神々からもたらされる祝福。
加護の効果は様々で、具体的な数字が出ているものから抽象的な内容のものまで多種多様だ。
いい加護を授かれば一生安泰だとこの国では言われている。
軍事的なことに使える加護なら、兵士になれるし、文章などに関わる加護なら文官にだって簡単になることができる。
ちなみに、一般的には具体的な効果のものほどよいかごだとされている。
神様からの祝福に優劣をつけるだなんて、罰当たりなことをしているなぁと思う。
俺は、どんな加護を得られるのかな?
具体的な効果の加護がいいな。ふわっとした抽象的な加護は、下に見られるからな。
めちゃくちゃ具体的な加護だったらいいな。
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それに、あいつはどんな加護を得るのかな?
楽しみだな。
今からワクワクしてきた。
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