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メリーバッドエンド
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しおりを挟む社会を揺るがすニュースは、レギアが当主の座に座って約十日ほどが経った新聞の見出しに書かれた。
『ギーディル家が手放した企業が一斉摘発、追放した貴族が没落した』
この事実は、未来を知っているものでしか対応が出来なかったであろうこと。更に文は続き、新たにギーディル家が株を買った企業は小さく名前も薄いが既に未来予知をしている新当主が選んだということは確約された何かがあるに違いない。期待と興奮で書かれた文章。
「……面白いことになってきていて、今後ともギーディル家から目を離せない。かぁ……新当主、もしかして祟り神かな」
新聞を手に取った濃い紫のリップをした女性がレギアの正体を見破る。まだ確定していない、憶測の情報でももしかしたら、は抜けそうにない。
彼女は隣に座り珈琲を嗜む彼女と同世代くらいの男に向かって「来年度の新年生にボルドー家、リンネム家からも祟り神が来る。少し前に五人の祟り神が亡くなった。あと三人、いるはずなのよね」と言葉を投げた。
アレドメンギルという作品には書かれていない裏の設定。
また、作品内に出てきた祟り神は四人であった。
…
センテ家、食堂にある椅子に縛り付けられ、目隠しをされたテティカの父親、兄、姉は底知れぬ恐怖から逃げられずに居た。
父親の最後の記憶はギーディル家にテティカを担保に繋がりを切らないように言いに言った所まで。
父親としてはこれ以上ない提案であったと確信している。
センテ家は代々ギーディル家に仕え、その全てを捧げてきたがすべての代で勤勉に仕えていたというわけではない。忠誠を誓うのはどれも直系のものばかりで、娘しか産まれず婿養子にと迎え入れた男は基本良いものではなかった。
テティカの父親も例に漏れずであったが為に没落した。
「……お父さん、ギーディル家には行ったんでしょ」
「なんで俺たち縛られてるの、テティカを担保にしたんじゃないの」
テティカの兄、姉は気配と息遣いで愚痴を溢す。
父親が例え居なかったとしても、私達は実行はおろかこの件は父が勝手に行ったとアピール出来る。
浅はかなりにも知恵を使った。
父親は動揺したと同時に察してしまった。テティカの姉と兄、自分の娘息子が自分と同じように縛られて拘束されている。故にこれから起こりえることは想像に難くない。
「……お前たちの最後の記憶はどこだ、どこまである」
父親はじわじわと襲い来る恐怖に歯が鳴りながらも娘息子に何を見て何を知っているのかを探った。
しかし、二人とも家に居たら突然意識がなくなったとだけ言い、此処が何処だか目隠しをされていてわからないのだと父親に伝えた。
匂いからして、センテ家のどこかであろうと安直な推測は立てたとしても証明する手段もない。
コツッ、コツッ、コツッ、コツッ……
小気味良い革靴の音が遠くから着々と近づいてくる。
音だけで恐怖に支配され、正常な判断が出来なくなる。目隠しもあっては距離感は音でしか判断できないというのに、その判断も正しいか答え合わせが出来ない。
絶望的な空間下で恐ろしくも先陣をきり声をあげたのはテティカの姉であった。
「レギア様ではないですかッ、ももしくはギーディル家の方ッッ、この度は父が愚行に走りましたことお詫び致しますわ。父の行動を知らずとは言え多方面に御迷惑をかけたことに私も申し訳ない気持ちでおります。わ、私に弁明をさせては………えッ……あ……」
姉の言葉が突如として止まり、明らかな異常が生まれているにも関わらず父と兄はその最期を迎える瞬間まで何一つとして喋ることが出来なかった。
姉がその瞬間に何を見たのか、知ることも叶わずに。
テティカが心地よく起きる頃には、センテ家はまるで神隠しでもあったかのように存在は霧の中へと消えていった。
『センテ一家、失踪』のニュースは数日後に町中に知れ渡るが普段の素行の悪さ故に、夜逃げだろうと事件性を疑うものなど一人足りとて居なかった。
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