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メリーバッドエンド
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しおりを挟むレギアが目覚めた日より約一年後。テティカは呪いの病で亡くなってしまう。
これから起きる全ての事象がわかるレギアがすることは『テティカが生きているレギアにとって幸せな世界』を作ること。
空を眺めながら、レギアは今後の動きを頭の中で流して考える。その間もレギアの隣でテティカが穏やかな時間を過ごしている。
シロツメクサを結んで花冠を作っては、ぼぉっとした表情で何かを考えているレギアの頭の上に乗せ、襟足の長い髪に巻き付け編み込む。
レギアが動き出す頃には白銀の髪に柔らかなシロツメクサの匂いを漂わせるお姫様のような髪型になっていた。
「……ねぇテティカ。俺こんなに綺麗にされるの恥ずかしいんだけど…」
「ふふッ、レギア兄さまの綺麗な白銀の御髪が更に美しくなったんですから誇るべきですよ」
テティカの腰まで伸びた空色の髪、ビー玉のようにコロコロとした瞳、淡い桃色の唇。
レギアの記憶に残るテティカが石ではなく、ちゃんと生きて動いて笑っている。
それがどれ程嬉しいことか。
さぁ、そろそろ家に帰らなければ。と重い腰を上げたテティカをレギアは昔、止められなかった。
動こうとするテティカの腕を掴み、待って。と止めればテティカは少し困ったような顔をしてレギアに腕をほどくように頼む。
テティカの家は使用人の家系。
レギアの一族であるギーディル家に従事する家系でありテティカはレギアの一つに年下になる。
センテ一族は貴族になれなかった。ギーディル家の一言もありいつでも貴族位をという言葉を先代が断ったのだ。
だが悲しいことにテティカの父親は浪費癖が激しかった。ギーディル家の奉仕だけでは賄えない程の借金をいつの間にか背負っていた。
テティカには姉と兄がいたが、末っ子であったテティカに雑用を押し付けてまるで貴族のように振る舞い生活することをギーディル家の当主達は黙認し続けてきた。
テティカにかけられた呪いはまさにその一つ。センテ一族の悪意を受け続けたこと。
亡くなる数ヶ月前からテティカの綺麗な空色の髪はどんよりとした曇天色に変わっていた。
「テティカ、俺に従ってくれるか。俺だけを信じて」
レギアはテティカの手を掴み、ギーディル家に戻る。
多くの使用人が頭を下げる姿はテティカの知らないレギアの一面。
レギアの部屋にテティカを案内し、使用人にテティカを『大切な客人』だと告げ対応を誤れば後がないことを示唆した。
少しだけ待ってて。と部屋にテティカを囲いレギアは現当主であるレギアの父の元へ向かった。
丁度、ギーディル家とその傘下の長達との会合中で執事を含む使用人はレギアの参加を止めようとしたが既に祟り神となったレギアの見せた力には逆らえなかった。
バンッと扉を開き驚きを隠せない当主達は「失礼ではないのか」と声を荒らげたが、レギアの「五月蝿い」という言葉に言葉を詰まらせ押し黙る。
「……お前がその様な無礼を働くなんて珍しいこともあるものだな」
レギアの父は少し面白そうに言葉を出したが、表情には一切の笑みは含まれずレギアの目には怒りに染まった赤く熱い言葉が映っていた。
しかしながらレギアの知るこれからのギーディル家の動きも何もかもを知っているからこそ強い態度を崩すつもりはなかった。
「俺が言えることは一つです父上、今すぐに当主の椅子を降り隠居を。俺がこの家を立て直す。貴方にはそれが出来ない」
強い悪意の包まれる空間で、レギアは先程執事達に見せた力を父親達にも見せた。
祟り神の力はゲームでも表現されたことはない。文字化、映像化出来ないと公式から出された情報のみ。
祟り神の力は異能力とはまた違う力で、異名として存在する。レギアは『死の祟り神』なのだ。
その日、ギーディル家の当主が代わり多くの粛清がなされたことを翌日の新聞は報じた。
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