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メリーバッドエンド
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しおりを挟む柔らかく瓦解していく感覚を覚えた。
まるでパズルのように、一定の期間を越え本でいえば次のページに捲られる瞬間そのページに居た者達は瓦解し消えていく。
乙女向け恋愛シミュレーションゲーム『アレドメンギル』
主人公、ラナ・アルファ(変更可)が入学する学院内にて存在する、対呪い組織『アレドメンギル』のメンバーと心を通わせ結ばれるという内容。
アレドメンギルに所属する攻略対象はそれぞれ祟り神と化した異能力を持ち得る者達で、その生い立ちに含まれる闇の部分も相まって人気を博していた。
攻略対象で一番の人気を誇るのは、死の呪いを持つレギア・ギーディル。
白銀の髪は襟足だけが長く襟足以外は耳元ほどを外に跳ねさせた髪型、眉も睫毛も白い。鼻は高く、耳には何個もピアスを着けている。
瞳の色はキャラクターデザインの段階から『光によって変わる』とされ、実際気持ちに合わせてレギアは瞳の色を淡くではあったが変化させていた。
身長は百九十、細身でありながら筋肉質である。
背中、腰の少し上辺りに刺し傷があるというのも裏に潜む闇を匂わせた。
設定上、レギアが学院に入学する半年ほど前、大切な家族同様の幼馴染みを呪いの病で喪い暴走し祟り神となった。
レギアの持つ異能力は『共感覚』と呼ばれ、言葉に色や温かみが見え、文字に音が生まれる。他の異能力を持つ者より能力自体は強くはないのだが、交渉から日常的なものまで全ての土台を作る。
レギアの見る世界では嘘も悪意も何もかもが他人と違い見えていた。
闇を抱えたレギアの心をラナは溶かし癒していくことで結ばれる。見た目の良さも相まって人気投票では不動の一位。グッズ化も幾度となく行われてきた。
人気の所以となったのは、それだけではなくバッドエンドで見せるヤンデレ的な一面も大きな要因となった。
綺麗な顔の男に拘束されて時間感覚もなくなった空間で、ただひたすらに愛を囁かれ続ける。
そんなギャップに更に人気は高まった。
乙女ゲームの世界に転生、憑依というイレギュラーがよく起こるようになったのはバーチャル世界が発展したことも理由の一つになるのかもしれない。
今もどこかで誰かが、なんて思えば胸踊るかもわからない。
ごくごく普通の会社員であった女が、こともあろうにこのアレドメンギルの主人公ラナに憑依した。
彼女はこのアレドメンギルの世界においてモブであったとある学院キャラクターが好きだったようで攻略対象には目もくれずその子を追いかけた。
女はラナとして、モブに有益な情報をとゲームの内容を話した。
……誰が聞いているかも知らぬまま。
数日後、レギアが失踪し行方不明になったと学院は大騒ぎとなりアレドメンギルの『遡行』を行えるメンバーがラナとなった女に、レギアはもう戻ってこないよ、君のお陰でね。と笑った。
ゲーム本編にあたる学院入学前、レギアの記憶を辿れば二年以上前の青く澄み渡る空の下。
草花茂る草原で、レギアは温かな音に触れて目を覚ました。
「……あ、起きたのですね。レギア兄さまがお昼寝なんて珍しいですね」
レギアの視界に映った、レギアの祟り神となった理由である幼馴染みのテティカ・センテの姿。
……叶ってしまった。
テティカを見つめたまま固まってしまったレギアをテティカは心配そうに眺めた。
寝起きで頭が働いていないのかしら。レギアのことだからすぐに大丈夫になるだろうと心地好い風を受けながら眺めるのを辞め風に身を委ねた。
まさか、目覚めたレギアが数年後の記憶を有した既に祟り神となった存在だと知るよしはない。
レギアは奴の式が成功したことを内心で喜び、ラナの言葉を初めて信じた。
………もう、喪う必要が失くなった。
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