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花の移ろい
LOvER/2
しおりを挟む鳴り響くアラーム音。
突如として忙しくなった日常は、それまでのスケジュール機能を壊し溢れんばかりの情報を交えてアプリを落とす勢い。
今日も朝が来た。
今日の仕事はテレビ収録が三本の後にファンとの交流会。
テレビ収録というイレギュラーな仕事が入り出したのが深夜帯に誰が見るんだと馬鹿にすらしていた番組の特集きっかけ。
本当に人生何があるかなんてわからない。
顔を洗い、身支度を済ませつつオーブンに入れたパンが焼ける匂いがする。
さて、本日もスタートするか。
そう意気込み、掛けるスマートフォン。
呼び出しのプルルルル、という音が新しい日常の音にすらなり出してるのだから慣れとは少し怖いものだと思う。
ガチャと応答の反応あれば即座に明るく元気な声をスマートフォンの向こうで目が開いていないであろう対象に向かってあげる。
「おっはよう!憂太朗、今日も良い朝だね。
今日の予定はわかっているかな?あと三十分したら迎えにいく為に集合場所に来てね!準備しておくんだよ!
朝御飯はしっかり食べておいてね!じゃないと無理矢理にでも詰め込むからね!!」
『…………わかった』
わかった、という一言とガチャと即座に切る音が重なっていたような気がするが、気にしていては仕事にならない。
気持ちを切り替えて次に移る。
これまた少し長めに待っても応答がない。どうしたものか、と頭を悩ませる時間も勿体無い。
一人無視するように次に掛ける。
三コールも経たない程で出た人は既に起きていたようで明るい声と明るい声がぶつかる。
「悠一おはよう!今日も良い天気だね!」
『あらおはよう、いつもご苦労様。今日の予定は把握してるわ、準備しておくわね』
物分かりならびに準備が早いとこんなにも助かるのかと頬が緩む。
けれど緩みきってはならないのが仕事、最後の一人を前にして緩んでいては刺されるかもしれない。
呼び出しの音が瞬間で切れるのを確認する。
毎回の事ながら、集中している朝の段階では彼が安易に電話に出ないことを知っている。
何度だって諦めることなく、スマートフォンを呼び出しを繰り返し、プルルルルという音が即座に切られてはかけ直す。
そうすれば、怒り心頭に彼が電話に出ることを知っているから。
『……………………なに、』
「蒼輔、おはよう!今日も良い天気だ」
『集合時間と場所は把握してる、電話してくんな』
ガチャと切れる音がし、ツーツーという無慈悲な音が耳に響く。
しかし揺らいではいけない、こうなろうと意気込んで努力に努力を重ねた結果の現状だ。
心が折れていては何にもならない。
焼いたパンは端が焦げていたが、バターとジャムを塗れば美味しさは変わらない。
スーツに腕を通し、今日も一日頑張るぞと鏡の自分に宣誓すれば玄関へと向かう。
集合場所に集まる影が例え一つでも、怒ることはしない。
それを仕方ないことだと理解せざるを得ない。
「貴方も大変ね、マネージャーなんかやってるが為に問題児三人も抱えちゃって。
引き摺って良いのならアタシが紀世彦と蒼輔を呼んでくるわ、憂太朗を宜しくね」
葉山 眞紘、LuvS-ラヴス-マネージャー歴三年半。
今日も今日とて変わらない。
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