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番の拷
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しおりを挟む央木高等学校、夏季休暇。
統、季秋と体育祭より二ヶ月の謹慎により、学校に姿を見せぬままに夏季休暇へと突入した。
あの事件における、首謀者と判断された三年女子一人、一年女子四人、一年男子三人。
関与していたとされる二年女子と男子一人ずつ。
全員が謹慎処分となり、ここから三人が退学したと後々知った。
鳴を殴った男子の一人は謹慎ではなく退学処分だったらしいが、流石に人数が多い事件であった為に『謹慎の上での退学』と伏せられたのだろう。
鳴は被害者だったが、周りの目は予想以上に悪く、謹慎を貰っていた方が楽だったと悩みながら期末考査を終えた。
季秋、そして事件に関与した男子の争いだった考査の順位は荒れた。
低くても上を取れる可能性に多くのものが賭けをして無法地帯だったと思う。
夏休みから、三日ほど経ったが宿題をする以外になにもすることがない。
前までは皆で海にいこうなど、すごく活気だっていたクラスも流石の問題にそのやる気を失い、更には鳴を嫌煙するように離れた。
夏休みに鳴を遊びに誘う人などいやしない。
それに問題が起きてから、α、β、Ωの教室はまるで封鎖されたかのように、関わりが無くなった。
原と話すことも出来ないまま夏休みになった。
病院での扱いは実験台の上のモルモットのようだった。
多くの医師と話をして、検査して。統と季秋の行動の正当性を見つけるためには必要なのだと言われ嫌々でもなにも言わず従った。
この夏休み期間も、政府の第二の性を扱う部門の人と会うことになっている。
鳴の母はなにもない、そんな表情を装う。
父は触れないことで鳴を守っているのだと思う。
ただ、その優しさがどうしても鳴の首を絞めていた。
夏休み五日目の昼間。
鳴は政府の人より言われた指定の場所に赴いた。
都心部にある雑居ビルに近い風貌のビル。
こんな場所で政府の人が、と身構えたが指定された場所が喫茶店であることを知った時ほんの少しだけ安心した。
店の中に入るなり目があった綺麗なお姉さんは、少し目を丸くした後すぐに笑顔になり鳴に自己紹介をした。
「…!、キミがβの子だね。初めまして、政府のθ機関所属Ωの雪村と言います。
親御さんには許可を得て今回の検証の為の実験合宿を行うのだけれど、私はその管理を任されています」
すぐに理解できるはずがなかった。
実験合宿というワードすらその日、その時初めて聞いた言葉で。
続々と加えられていく説明に頭だけが取り残されていく。
実験合宿では、本案件の対象者三名を同空間にて三日間生活させる。
α児には興奮しある一定の体温、脈拍を検知すると針が出てくる仕様の緊急用麻酔器を装着させる。
合宿中は三日間とはいえ、抑制剤の使用を禁止とする。その際もしヒートが起こり被害が想定される場合は我々政府の者が対処し、場合によっては即座に合宿を中断。
淡々と並べられた説明に反論や疑問などをいう暇もなく、では行こうと手を取りその人たちの言う『実験合宿会場』へと足を運んだ。
調べたくなる理由は鳴にも理解できた。
βとの交配、もしそれによって懐妊した場合。
この世界の理が全て否定されることになる。
医者や研究者たちを中心に調べたい欲が溢れて止まらないのは不可抗力だろう。
着いた実験合宿施設は明らかに国のもので、国立と大々的に書かれた広く大きなもの。
正直鳴の中で胡散臭い話だと思っていたものがひどく現実味を帯びてくる。本当に実験なのだと。
中で待っていた統と季秋の姿はどこか不安げだった。
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