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番の拷
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しおりを挟む央木高等学校。
この学校では他の学校と違い、基本的なクラス分けと違い第二の性で分けられる。
つまり、α性の季秋と統とβ性の鳴は同じクラスにはなれない。
ただ、週に一限または二限。
共同の時間があり、全ての人間が集まり授業をする。
その時だけは差別の無い空間、というのはどうしても難しい。
偏った思考の家族がいれば、その思考を強く受け継ぐのは子供たち。
この学校にもどうしても生まれた偏見は払拭しきれない。
「Ωの臭いが臭くて堪らない」
授業の途中、グループワークで鳴のグループのαが言った言葉。
同じグループのΩ性の子はαのフェロモンに畏怖してただでさえ動けずにいるというのに、圧をかけるα。
α性一人、β性二人、Ω性一人の四人グループ。
助けてあげられるのは両者のフェロモンに当てられることの無いβしかいない空間。
「…臭いなんてわからないよ、彼女からは石鹸の良い匂いがする。
どんな理由があろうとも人を侮辱することはあってはならないよ」
男性にしては小さめな身長。
青みがかった髪色、肩より伸びた髪。
琥珀の瞳、白い肌。
それでいても強く気高い精神。
β性に言い返されたα性の男はひどく屈辱的な顔をする。
頬は怒りで赤く染まり、血が昇った頭では冷静な判断は出来やしない。
教室全体に広がるほどのフェロモンは、Ω性の人間を圧で押さえ込み、同じα同士でも只事ではないことは理解できる。
少し離れた所にいた季秋と統にもその異様なフェロモンは届く。
しかもそれが、自分達が番だと言い張る鳴のグループで起きているというのが理解できた時、一気に他人事ではなくなる。
「平凡なβのくせにαの俺に指図するのか。しかもお前、αに尻尾振るΩと同じって話じゃねぇか。
αに媚びうることしか出来ねぇ能無しがッ!!」
怒りに染まったαにはもう理性も平静も存在しない。
突発的に出た手が鳴の髪を鷲掴みした瞬間、怒りに染まったαよりも遥かに強い殺意のフェロモンがクラスに広がり、そのフェロモンは影響を受けないに近いβにすら伝わり動けなくなる。
「「俺の番に触るな」」
β性を番というのは可笑しい、言葉は喉から出かかっても出ることはない。
教師ですら不安になるほどに圧がかかる空間。
怒りに包まれたαの首を掴む統に、鳴の髪を鷲掴みする手をへし折る強さで掴みかかる季秋。
流石に二人がかりの圧には昇った血も下がるもので、徐々に平静を戻した男は目の前の殺意に血の気すら引いていく。
「……Ωがどうとか第二の性がとか、そういうのどうでも良いんだ。
たださ、鳴に手を出されると俺はお前を容赦なく殺すよ」
「匂いとかそういうの気にしないし、鳴以外の匂いを嗅ごうとも思ってないが…お前風情が掴んで良い髪じゃねぇよ、さっさと離せよクソ野郎」
パッと離され部屋を包み込んでいた殺気が弱まった所で教員はα三人を職員室へと連行し、授業は打ち切りとなった。
助けたΩの子は、名を原 美佐だと告げ後日お礼させてくださいと言って深々と頭を下げた。
純粋で可愛らしい女の子だと思った。
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