重愛の配信

安馬川 隠

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初めまして

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 ナリの言葉を理解する前に、ナリの綺麗な顔がヨリの顔に近づき触れ、唇が優しくちゅっと軽い音を立てて離れる。

 ヨリの性質なんだろう。ナリが口を開くと必然的にヨリも口が小さく開く。
まるで親鳥の真似をする雛鳥のように。


 加虐心が揺さぶられる。


「かぁいいね、ヨリ様のぐちゃぐちゃになるところ俺見たいな。ね、口開けて、俺の唾液飲んで」


 ナリの優しい表情から出る冷たい命令言葉にヨリの背筋に電流が走る。
「ちゃんと守らなきゃ」という使命感に混ざって、ちゃんとやったら褒めてくれるかな、と心が期待する。

 小さな口を開けて舌をナリに見せつけるようにヨリが出せばナリも支配欲に脳を犯される。
ナリの口からたらぁ、と垂れる唾液を口で受け取る。ナリとヨリを唾液の糸が繋ぐ。
 抵抗や躊躇いは全くなかった。
ヨリはその糸すらも全てを舐めるように、上体を起こしナリの唾液で光る唇さえも愛しく唾液を舐め取った。



 ヨリの行動に良い意味で裏切られたナリは我慢していた最後の理性の糸を自ら切った。

 優しく撫でるようにヨリの細く滑らかなラインの身体をなぞっていた手を首へと持っていき、両手でじんわりと絞めていく。
最初驚いてナリの手を振りほどこうとした手も徐々に強まる力に支配されて生殺与奪を握られる感覚に堪らなくなる。
すべての抵抗を辞め、蕩けた表情で薄れ行く酸素で息が荒くなる。


「本当に可愛い、ヨリが俺の手の中にいる。可愛い、本当に、ずっと見てきた。ヨリが俺を見ているのと同様に俺もずっと。
ねぇ、もう二度と俺以外に肌を見せないで、触れさせないで、笑いかけないでいて。

 大丈夫、ちゃんと俺たちの家はあるから」


 ナリ早口になっていく言葉を酸素の薄くなったヨリには全ては届かない。
朦朧とする意識の中、掠れる声で「ナリさんのものになりたい」と言えば、絞める手の力が更に強まる。
 苦しさの中で、最後に見る顔が愛しい人なら幸せだと口角が緩みながらヨリは意識を手放した。



 ナリからの告白に、一切の恐怖を感じなかった。
むしろ嬉しさと心から彼のものになりたいという欲情しか浮かばなかった。

 彼が時より見せた独占欲で、ヨリは自分がメスになったように感じた。
男の子として生まれ、こうあれと強く押さえつけられていたからこその反動と言われてしまえばそうなのかもしれないが、ヨリは感情を不快だとも思えず、いつかナリに全てを晒し奪ってもらえるなら、と考えていた。




 ヨリが意識を覚醒させ、部屋を認識した時。
ナリの部屋であったはずの賃貸の無機質な壁ではなく温かみの感じる木目の天井に違和感を覚えた。
『あれ、ココドコだ』と状況を判断できるまでに時間がかかる。

 頭がふわふわするのを抑えながらゆっくりと上体を起こすと、腰に尋常じゃない痛みが襲う。
 途端に息が漏れる。
しらない場所、痛みのある腰、何が起きているのかわからない。

 ナリに首を絞められながら、キスされたり舐められたりはしていた記憶がある。
唾液を飲んで、と飲んだ唾液が甘かったことも……


 ガチャっとヨリが寝ていたベッドから少しはなれた焦げ茶色の扉がゆっくり開く。
途端に警戒心が働き、身を強張らせるが、入ってきたナリの姿にどっと安心感と重なって疲労感が押し寄せる。


「ヨリ様、起きたんだね。どこか痛いところはない?本当にごめんなさい」


 ヨリが起きていることを視界に入れたナリは、抱えていた荷物を床に起きパタパタとヨリの元へと駆け寄る。
ベッド脇に腰掛けたかと思えばスルッと床に土下座し、前にヨリがナリに見せた土下座にそっくりな形で謝罪をした。


「ヨリ様が可愛くて、首絞められてるのに怯えるんじゃなくて悦んで勃起までしてるの分かったら抑えられなくて。
意識がなくなったヨリ様のお尻綺麗にして勝手にオナホみたいにガン突いて何度も犯しました。
身体中に満足するまで痕とか噛んだりとか………ちょっと血も飲みました。本当にごめんなさい」


 言われてみればと、着ていたブカブカのTシャツを襟から覗いてみれば見える範囲で沢山のキスマークに噛み痕が溢れている。
意識を失ってから何開戦すれば腰の辺りに掴んでいたんであろう手形の痣までくっきり付くのだろう。
 意識してみるとジンジン痛い気がしてくる。


 ナリは大層反省している素振りで、ちゃんと怪我は全て消毒とかしてありますと言いながらも、俺のテリトリーで座るヨリ様可愛い、興奮してくる。と息が荒くなる。

 普通ならば怖く感じるものなのだろう。
知っていて想い人でもここまでの勝手と、思想には怯えるのが普通なのだろう。
 けれど、ヨリも大概普通ではなかった。


「ナリさん、あの………僕は記憶ないんです。だからナリさんのしてくれたこと知らなくて………おかわりしたぃなって………」
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