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絶胎の格子
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しおりを挟む常々思う。
マネージャーがアイドル時代から同じでなければもっと自由がきいたはずなのに、と。
常々思う。
どうして何かしようと行動を起こす直前にマネージャーはまるで狙っていたかのようにピンポイントかつアポイントをとらずに家まで来るのだ、と。
巡がいない部屋に焦り、怒り、持ち得る感情が壊れたのかと思うほどに涙がとまらないのに表情を維持できないでいた鎌田の元に、マネージャーであり高校の時からの友人である磯部がやって来た。
合鍵を持っている磯部は躊躇いや気遣いなく、堂々と開けて入ってくる。
普段なら黙ってリビングまで来るところだが、巡を探して荒らされた玄関を見て強盗にでもあったのではと焦った声で生存確認が執り行われる。
「颯汰、大丈夫か?!」
その声すら巡ではないと、虚しくなる。
巡に呼ばれたい本当の名前すら、巡本人は知らないのだから。
無くなった温もり、音、空気ですらもう価値は存在していない。
「……巡がいなくなっちゃった………」
漏れ出た声は想像以上にか弱く、それはもう人の声ではなくなったそれを掬い上げるかのように真っ青になったマネージャーなど視界に入れたとてもう遅い。
「…颯汰、嘘だよな?…や、約束しただろ!?
絶対にスキャンダルになりうることはやめろって!
颯汰が想いを寄せる人がいることは昔っから知ってるし、それが相当歪んでしまったことも知ってる!
だけど、本当にこの部屋に連れ込んだのだとしたら…擁護のしようがなくなる…。
一応、友人として訊くが、居なくなった人はこの部屋に来ることを合意した上で来たってことで間違いないか?」
光の失くなった瞳、崩れ落ちた膝。
この姿をファンが見たら嘆き悲しむに違いないものでも、気にする時間はない。
問いただされる質問に答えなど一つしかなくて、俯き涙を溢しながらただ、「ごめんなさい」と呟く鎌田を見たマネージャーは悟ったように、事務所に電話をかけ、事務所の人間は呼応するように多くの会社に謝罪や延期の連絡を入れていく。
「…社長には後で報告入れるけど颯汰、お前期限有の自宅謹慎。とりあえずは写真集関連のは今さら断れないからそこまでで、後は社長次第ってことで。
メグルさんに謝罪もしなきゃだし…少し頭を冷やせ」
ほしいものが手に入らなくて絶望している鎌田を慰めることなく、突き放したマネージャーは知っていた。
メグルという存在が鎌田にとってどういうものか。
一応ではあるがアイドル時代からマネージャーをしていれば、察する能力は上がる。
上がらなくても鎌田の態度は一目瞭然であったからわからないはずがないのだが…。
翌日、事態を悪化させるかのように何処から漏れ出た情報なのか、週刊誌の一面に『鎌田颯天 一般人の恋人ありか!?』という内容の記事が出回った。
更に、内容の一文に「メグル」という名前まで入った状態であった為に即座にSNSは荒れ、鎌田の所属事務所は関与などを全て否定した上で謝罪。
鎌田は自身の写真集のイベントを区切りとして、活動を一時休止ということになった。
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