実らなかった啜を

安馬川 隠

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成長期、そういうこと

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 友人からの誘いも何度か断り、付き合い悪いと言われれば断るわけにも行かず、受けた遊び先に心底溜め息が出る。
 誰か楽しくてハプニングバーになど来るのだろう。

 男が入るために必要な金額は図り知れず、入会金にサービス料、身分証も提示しなければ入れない。
友人との付き合いであっても一度きりの為に身分に高い料金を取られるのは不本意。あまり気が乗らなかったがこれ以上友人との関係にヒビを入れるわけにはいかなかった。
 友人が選んだハプバーはある一定の場所では下着一枚にならないといけないことや貴重品以外の携帯などはロッカーにいれないといけないなどのルールがあり、事細かに聞いていても、下着一枚で動くことのリスキーさに背中に変な汗が伝う。一週間近くが経っているがまだ会えておらずあの貞操具は外してもらえていない。


 何が楽しくて、自分の痴態を晒す可能性を高める場所に行かなければならないのか。
友人達はとても楽しそうに女性に話しかけにいったりなど行動的でキャッキャウフフと盛り上がる声が聞こえる。
一人で、バーカウンターでお酒を呑むことしか楽しめない草太にとっては地獄のような場所だ。


「お友達のところ行かなくていいの?」


 不意に横から声をかけられ、目線を向ければ草太たちより年上の色気に溢れたお姉さんと目が合う。
「良いんですよ」と冷たくあしらっても、「そうなの」と離れる素振りも見せないお姉さんに違和感を感じる。友人たちのようにそういうことに前向きな人の方に行ってほしい気持ちはある程度雰囲気で伝わっているはずなのに、動かない。まるで根でも張っているかのよう。


 「キミは面白い子ね、こんな場所に来ておいてまるで興味ないみたい。此方だって好みの子と楽しみたいじゃない?少し位、話をしてくれたって良いと思うのだけれど……?」


 それもそうだろう、という気持ちはある。自ら友人に誘われたと言ってもハプニングバーの敷居を跨いだのは自分の決断の上。それでも、やはり女性とは……

 口ごもりなにも言えない草太と言葉を待つお姉さんの空間の外で、ザワザワっと人の動きを感じた。


「超お久し振りじゃないですかァ」「ずっと待ってたんですよォ」女性の媚びた声に包まれた対象の人は「悪い悪い、好きなコが出来たからさ」と笑っている。
その声に聞き馴染みがあって、心臓がドクンと脈打てば横のお姉さんも「香佑~ッ、久々じゃんッ」と嬉しそうに声を上げた。

 何故、こんな場所で会わなければならないのか。
どんな人なのか、何をしてるのか工事現場の作業員という情報以外のものが何もなかったから知りたかったが、草太の中で知りたいことはこんなことではない。

 グッと唇を噛めば草太を見たお姉さんが不思議そうに「知り合い?」と問う。嫌味も込めて「知らない人です、有名人なんですか」と言えば、お姉さんは少し頬を赤らめて草太の耳元で「超ハード系の絶倫さん」と笑いながら教えてもらった時底知れぬ怒りに包まれたような気がした。
なんでも、香佑の絶倫とハードなプレイはどんな欲深な女性でも骨抜きにされるらしく此処に来る女性は大体既に抱かれているらしい。


 隠すことの無い不機嫌さの草太を一部始終見ていた香佑は楽しそうに笑いながらスタスタと近付き草太にだけ聞こえる声で『貞操具着けながらこんな場所来るなんて、欲求不満か?』と言いつつバーのマスターに高そうな酒を頼んだ。
疼いた下半身に抗えず、バーカウンターの下で草太は香佑の脚に手を伸ばした。
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