22 / 39
成長期、そういうこと
1
しおりを挟む本当に、出来心。
自分のセクシャル、そして性的趣向を理解してからとても世間一般には受け入れられないと。
諦めて諦めて、諦めることでなんとか保ち続けていた心がお酒という力を持って崩壊した。
友人数名と呑んで騒いでのパーティーで、盛り上がりのボルテージの流れで乱交へと姿を変えた。
男女の入り乱れる空間で一人どうしても馴染むことが出来ずに「酔った、帰る」と抜け出した。
ただ、大量に摂取した酒は抜けずフラフラと覚束ない足で何処まで辿り着けたのか。
最後の微かに残る記憶は、倒れ込んだかした時に心配してくれたとても顔が好みの男に出会い何かを話したところまで。
覚醒の上、目覚めた部屋は何故かホテルの一室。
全裸で腰に今までで感じたことのない鈍痛が響く。
あ、これはやってしまった。そう気づくまでに時間はかからない。
がくがくと震える足でシャワー室に向かえば鏡に映る全身に残る噛み痕にキスマーク、そして……
流石に全身の血の気が引いていく。どんなことをしたのかも粗方想像はつくが相手と顔を合わせなにを話せば良いのか申し訳なさでどうしようもない。
時計を見れば飲み会から十二時間は経過している。
急いで大学に向かわねばならない。
ベッドでまだ寝息を立てている男に気付かれぬよう脱ぎ捨てられたズボンのポケットから財布を出し二万円を置いて逃げるように飛び出した。
落とし物なんて気にする余裕もなく。
大学に走れば友人たちの多くは二日酔いに頭を抱え、苦しそうに呻いていた。
「お前も二日酔い?」と笑いながらも迎えてくれた友人たちを見て、先ほどまでのあり得ない光景を忘れようと笑いながら話に参加した。
今日は流石に帰って寝るべ!と講義を終えて帰宅する道中。
「……あ、いた」
忘れようと必死にもがいたことを嘲笑うかのように、昨夜の男が家の近くの公園前に立っていた。
記憶が曖昧すぎて、着替えたのかもわからないのだが、作業着は近くの工事現場の作業員が着ているものに酷似していた。
俺よりも遥かに歳上で、仕事終わりなのか汚れた作業着からは汗の匂いと制汗剤の匂いが混じりながらする。
オールバックの黒髪は、ホテルで寝ていたあのふわふわの髪と同一なのか疑わしいが、明らかに此方を知っている空気で問うことすら出来ない。
スタスタと目の前にやってきた男は「二万は多いな、あと忘れ物」とクツクツと笑いながら身分証と折り畳んだ二万を差し出した。
何故かは全くわからない。けれども思ってしまったものは仕方ない。「なんで一円も使ってないの」なんて言葉を言ってしまったのは自分の中でも想定外。
男は心底不思議そうな顔をして、部屋に剥き出しの二万があったら怖くて使えねぇわな。と言った。そして続けて、それにこれを使ったらもう会えなくなる気がしたからさ。と手の甲に指を這わせるように撫でながら言う。
昨日散々したのであろう下腹部が目の前の汗臭い雄を求めるように疼いてキュンと鳴る。
しかし鳴ったところで昨日したことを全く覚えていないけれど下腹部が疼くから抱いてくれなんて言えるはずもない。
「じ、じゃあ…その二万で…俺を……買ってよ」
どうにも決まらない羞恥の紅に染まる中で必死に考えた口説き文句は今どき古くしかも色気がない。
流石にやらかしたかと、素に戻りやっぱなし。そう言おうと口を開いたタイミングと同タイミングで男は「いいね、買うよ。またホテルがいい?」と楽しそうに言った。
出来心は、ワンナイトも越えた。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

嫌われ者の僕
みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈学園イチの嫌われ者が総愛される話。嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。
※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。改行多めで読みにくいかもです。


次期当主に激重執着される俺
柴原 狂
BL
「いいかジーク、何度も言うが──今夜も絶対に街へ降りるな。兄ちゃんとの約束だ」
主人公ジークは、兄にいつもそう教えられてきた。そんなある日、兄の忘れ物を見つけたジークは、届けなければと思い、迷ったのち外へ出てみることにした。そこで、ある男とぶつかってしまう。
「コイツを王宮へ連れて帰れ。今すぐに」
次期当主に捕まったジーク。果たして彼はどうなるのか。
溺愛ヤンデレ攻め×ツンデレ受けです
ぜひ読んで見てください…!

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない
バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。
ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない??
イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。
変なαとΩに両脇を包囲されたβが、色々奪われながら頑張る話
ベポ田
BL
ヒトの性別が、雄と雌、さらにα、β、Ωの三種類のバース性に分類される世界。総人口の僅か5%しか存在しないαとΩは、フェロモンの分泌器官・受容体の発達度合いで、さらにI型、II型、Ⅲ型に分類される。
βである主人公・九条博人の通う私立帝高校高校は、αやΩ、さらにI型、II型が多く所属する伝統ある名門校だった。
そんな魔境のなかで、変なI型αとII型Ωに理不尽に執着されては、色々な物を奪われ、手に入れながら頑張る不憫なβの話。
イベントにて頒布予定の合同誌サンプルです。
3部構成のうち、1部まで公開予定です。
イラストは、漫画・イラスト担当のいぽいぽさんが描いたものです。
最新はTwitterに掲載しています。

病んでる愛はゲームの世界で充分です!
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
ヤンデレゲームが好きな平凡男子高校生、田山直也。
幼馴染の一条翔に呆れられながらも、今日もゲームに勤しんでいた。
席替えで隣になった大人しい目隠れ生徒との交流を始め、周りの生徒たちから重い愛を現実でも向けられるようになってしまう。
田山の明日はどっちだ!!
ヤンデレ大好き普通の男子高校生、田山直也がなんやかんやあってヤンデレ男子たちに執着される話です。
BL大賞参加作品です。よろしくお願いします。
11/21
本編一旦完結になります。小話ができ次第追加していきます。

片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる