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甘くて、ほろ苦い
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しおりを挟む鈴兼 皇祈は現在、非常に悩ましい状態にあった。
たまたま授業の間の休憩に開いてしまったSNSで自身が推して止まない非彩の投稿を目にし、しかもそれが普段の業務内容のような情報ではなく、明らかなプライベートのもの。
文章は『ないの?』という一言のみで、画像には非彩が好きなのか、自動販売機の炭酸飲料の下にうりきれの赤いランプが点滅している。
非常に興奮してしまう。
非彩といえばそのあまりに明かされていない情報の多さから生きていないのでは?とさえ噂されているのだ。
それが自動販売機のジュース一本に憂いさえ感じている人間だとわかれば、尊さすら湧く。
「買って貢ぎたい……」
そう思った束の間、非彩は誤発信だったと投稿を削除し、ファンにスクショなどがあれば全て消すこと。と御触れを出したのだ。
ファンとしては守り、語り継ぐ伝説にするべきなのだろう。
だが、この奇跡的な誤爆の瞬間を消すなど…
悩ましい葛藤の中、ピコン、という可愛らしい機械音に乗って現れる通知。
連絡手段のアプリに、御廉からの連絡。
『もし帰りにコンビニでも寄るなら買ってきて、さっき自販機売り切れてた』
そうやって送られてきた画像は、先ほど非彩が上げていたものと全く同じ画像。
一瞬にして心が無になる。
なぜ、自分の想い人が推しと全く同じ画像を使ってきたのだ。
クラスの女子などが消すか消さないかの討論に燃える状態で、皇祈だけは氷点下の感情。
まさか、本当にそうだとしたならば………
『御廉って、非彩だったのか』
打ち込んではみたものの、送信ボタンなんて押せるはずもない。
兄弟で、叶うはずもない恋路。
更に言えば俺は妾の子だ。本妻の息子の御廉に、男が男に想いを寄せるなんて、高望みも甚だしいと一蹴されて終わりだ。
非彩ならば、御廉も恋をしてるということ…
「皇祈!!、次の授業ってさ…」
「へぁ!?」
二段階にわけられ用意された悩ましい状況は、クラスメイトと不意打ちの言葉に背中を押される形で、皇祈は送信ボタンに触れることになる。
そしてそのメッセージを受けた御廉自身も少し変わる決意をしたのである。
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