実らなかった啜を

安馬川 隠

文字の大きさ
上 下
12 / 33
甘くて、ほろ苦い

4

しおりを挟む

 鈴兼 皇祈は現在、非常に悩ましい状態にあった。


 たまたま授業の間の休憩に開いてしまったSNSで自身が推して止まない非彩の投稿を目にし、しかもそれが普段の業務内容のような情報ではなく、明らかなプライベートのもの。

 文章は『ないの?』という一言のみで、画像には非彩が好きなのか、自動販売機の炭酸飲料の下にうりきれの赤いランプが点滅している。

 非常に興奮してしまう。

 非彩といえばそのあまりに明かされていない情報の多さから生きていないのでは?とさえ噂されているのだ。
それが自動販売機のジュース一本に憂いさえ感じている人間だとわかれば、尊さすら湧く。


 「買って貢ぎたい……」


 そう思った束の間、非彩は誤発信だったと投稿を削除し、ファンにスクショなどがあれば全て消すこと。と御触れを出したのだ。

 ファンとしては守り、語り継ぐ伝説にするべきなのだろう。
だが、この奇跡的な誤爆の瞬間を消すなど…



 悩ましい葛藤の中、ピコン、という可愛らしい機械音に乗って現れる通知。
連絡手段のアプリに、御廉からの連絡。


 『もし帰りにコンビニでも寄るなら買ってきて、さっき自販機売り切れてた』


 そうやって送られてきた画像は、先ほど非彩が上げていたものと全く同じ画像。
一瞬にして心が無になる。
 なぜ、自分の想い人が推しと全く同じ画像を使ってきたのだ。

 クラスの女子などが消すか消さないかの討論に燃える状態で、皇祈だけは氷点下の感情。
まさか、本当にそうだとしたならば………


 『御廉って、非彩だったのか』


 打ち込んではみたものの、送信ボタンなんて押せるはずもない。

 兄弟で、叶うはずもない恋路。
更に言えば俺は妾の子だ。本妻の息子の御廉に、男が男に想いを寄せるなんて、高望みも甚だしいと一蹴されて終わりだ。
 非彩ならば、御廉も恋をしてるということ…


 「皇祈!!、次の授業ってさ…」

 「へぁ!?」


 二段階にわけられ用意された悩ましい状況は、クラスメイトと不意打ちの言葉に背中を押される形で、皇祈は送信ボタンに触れることになる。
 そしてそのメッセージを受けた御廉自身も少し変わる決意をしたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

頼れる仲間はみんな目が死んでるので頼りたくない

ベポ田
BL
平均平凡文科省指定男児の冬樹くん。重い後輩と、重い同級と、暴力性がすごい同級に包囲されて死にたい。 ○冬樹陽成(フユキ ハルナリ)くん 高2。ぼけぼけした文科省指定顔。たいやきは頭から食べる。 ○秋庭優斗(アキバ ユウト)くん 高2。重い。つんつんしたイケメン。たいやきは尻尾から食べる。 ○春江千晶(ハルエ チアキ)くん 高1。重い。はんなりしたイケメン。家では一生ピーピーラムネをピーピーしてる。たいやきはあたまだけ残す。 ○夏目丙(ナツメ ヒノエ)くん 高2。重い。まっすぐしたイケメン。最近飼い犬のおしりを噛んだ。たいやきは一口で食べる。

俺の推しが幼馴染でアイドルでメンヘラ

ベポ田
BL
あの時引っ越してきたイケメン幼馴染が今はアイドルで俺の推し。ただしクソメンヘラ 橙矢将生(とうや まさき) 大人気アイドルグループの王子様担当。俳優業に力を入れる国民的スターだが、裏ではクソメンヘラの人間不信を拗らせている。睡眠薬が手放せない。 今村颯真(いまむら そうま) 橙矢の幼馴染であり将生くんの厄介過激派オタク。鍵垢で将生くんの動向を追ってはシコシコ感想やレポを呟いている。

割れて壊れたティーカップ

リコ井
BL
執着執事×気弱少年。 貴族の生まれの四男のローシャは体が弱く後継者からも外れていた。そのため家族から浮いた存在でひとりぼっちだった。そんなローシャを幼い頃から面倒見てくれている執事アルベルトのことをローシャは好きだった。アルベルトもローシャが好きだったがその感情はローシャが思う以上のものだった。ある日、執事たちが裏切り謀反を起こした。アルベルトも共謀者だという。

片桐くんはただの幼馴染

ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。 藤白侑希 バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。 右成夕陽 バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。 片桐秀司 バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。 佐伯浩平 こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

病弱で病院生活の俺は、幼なじみの恋人と別れたい

しゅうじつ
BL
この先明るい未来のない俺から恋人を解放してあげたい受け×何があってもずっと一緒にいたい恋人 超短編、暗い話 1話完結です。

周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)

ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子 天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。 可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている 天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。 水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。 イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする 好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた 自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語

隣/同級生×同級生

ハタセ
BL
輪廻転生モノです。 美形側が結構病んでおりますので病んでる美形が好きな方には是非読んで頂けると有難いです。

処理中です...