幸福奇譚

安馬川 隠

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本編

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 手足を拘束され、自由もない。オナホールも外す事が出来ず重東の言葉もちゃんと理解するだけの脳が残っていない。

 宏臣は欲しい快楽を貰うために必要な言葉だけは重東の言葉からちゃんと抜き取る。
 お尻ではない、男の子は穴を使わない。重東はお嫁さんしか抱かない。
宏臣の思考回路は見えない暗闇で与えられる快楽によって極端にすり減った。元より薬のせいだからと自己暗示を掛けすぎた結果、気持ちいいことをしたいという欲求以外の恐怖やらは既に無いに等しい。


「…なりゅッッ……じゅ、じゅとさんのおよめしゃ、んッッ、およめしゃんッッなるか、らッッ、ヒロのお、お……まんこにッッ、おちんちんんッん…いれ、てッッ」


 何回もイかされて、あとはしたいことをはっきり言えばキスのように叶えてもらえる。甘い言葉で道を塞がれ、気付けば囲われている。

 重東はしっかりとその言葉を録音した上で、じゃあお掃除しないとだね。頑張ろっか。とオナホールだけは抜き取り、拘束はそのままに軽々と持ち上げお風呂場へと向かう。

 男同士の情事において、腸内洗浄が毎回必要なのは少し手間ではあるが重東は宏臣が洗浄なのに喘いで必死になっている様を見ていられる幸せな時間ではある。
汚物にまみれる、それさえも宏臣から出た宏臣の一部。食えと言われればスカトロ趣味でなくとも食える自信しかない。


「…ヒロ可愛いね。お掃除頑張ってくれて有難う。ベッドで俺のちんこいっぱいズポズポってして、気持ちいいとこゴシゴシしてあげるからね」


 淫語を隠さずはっきりと言えば宏臣は脳内から犯されることしか考えられなくなる。ただでさえ、気持ちいいことで頭がいっぱいなのに。
いまだに目隠しも拘束すら解いて貰えず苦しいはずなのに。


 身体も綺麗にしたうえで、もう一度ベッドに戻る。
ゆっくりとおろし、重東は拘束を解いた。目隠しも拘束も外せるものは全て。

 自由になって『逃げられる』という選択肢を与えた。

 呆気にとられて、オロオロとし出す宏臣の行動は『拘束され逃げられないから仕方ない』という妥協点を生み出している。
気持ちいいことをしたいのも、重東とのセックスを望むのも、拘束され薬がまだ残っているから気持ちよくなっても仕方ないと思い込んでいる。


 重東がそんな妥協を赦す筈がない。


「拘束痛かったよね、辛かったね。お嫁さんになってくれるって言って貰えて嬉しかったなぁ……たださ、拘束されて言わされていたんだと後で言われたら俺は悲しいんだよね。だから、拘束は外すし俺はヒロの言葉を強制したりしないからもう一回言って欲しいな」


 宏臣からすれば騙されたも同然の状況。言わなければ拘束も何もかも外しては貰えない。だが言ったのに、もう一度なんて。


「……え、ッッ……」


 躊躇っていては何も無いことは理解していたはずなのに羞恥も相まってどうにも言葉が出なくなったのは、先ほどまでの『理由付け』がどれも中途半端で何処かで必ず素面の宏臣の言葉を伝えなければならない。
 けれど、優しい表情で一線を引いたかのように触れない重東を見ていては疼く身体を慰める方法がもう一つのみで選択肢は用意されていないことを痛感する。


「……お、お嫁さんに……ッッ、じ、じゅとさんの……お嫁さんに……してくださ……ッッ…」


 必死だった。恥ずかしさで真っ赤に染まった顔を隠すようにギュッと瞳を閉じながら半ば叫ぶように言葉を伝える。先ほど言った言葉の後半は羞恥が勝って言えなかった。


「ヒロがお嫁さんになってくれるの嬉しいなぁ。恥ずかしいこと言うの大変だったよね。ありがとう、嬉しいなぁ。足を開いて、お尻慣らそうね」


 重東の表情と言葉から伝わる嬉しさに宏臣の中の羞恥が和らぎ、キュッと心を掴むようだった。
ローションを手に取り、自身の手の温かさで人肌の温度にした上で宏臣のお尻に優しく塗りつつ指を中に沈めていく。

 一本から二本、宏臣が小さく吐息と喘ぎ声を出している間に三本へと変わり、部屋にぐちゅぐちゅ、ぬぽぬぽという淫靡な音が響き興奮を誘った。

 重東は宏臣の痴態に興奮が止まらず反り立つそれをゆっくりと宏臣のお尻に宛がえば宏臣も限界になる。


「…じゅとさん、じゅぽ…じゅ、ぽしてぇ……」


 重東の理性がプツンと切れれば、ゆっくりと腰を沈めゆっくりと奥へ、奥に到達すればゆっくりと入り口へと引き抜く。
浅い所で抜き差しをすると、厭らしい音が露骨に響き宏臣の腰が無意識にヘコヘコと揺れる。


「…ん、ふぅ………ごめんね、ヒロ。後でちゃんと中綺麗に洗ってあげるから……孕んで、俺の種でヒロと俺の赤ちゃん孕んでね」


 何度も何度も、飽きることなく夜が更けても繋がり続け卑猥な音は止まなかった。
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