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2.再開期
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しおりを挟む……そのニュースが入ったのは、ラウリーが公国に入り一日が経った頃。
『テストルの原料となる花の輸入が完全停止した』というニュースの文面に人々は真偽を問うた。あまりの衝撃的なニュースにあわてふためいたセンガルからの連絡をアウスは日も昇らぬ内から受けたほど。
テストルは王国で作り、奴隷を弄ぶためだけに生まれたもの。海を挟み隣の大陸にある長は利益を最も重要視していた金の猛者だった。別の者に切り替わったということか。とアウス達は日が昇るまで推測に推測を重ねた。
センガルからすれば、多くの同士を失う原因で前回帰では来なかった『希望の連絡』誰がどのようにしてこの流通を止めたのかはわからないが、止まったことに涙が出るほど歓喜した。
日が昇ってからは、公国帝国の民たちが響かせる喜びの声をアウスやセンガルは忘れることは出来ないだろう。
ニュースに記載された内容が本当なのか、何重にも渡る調べで事実だとわかった。
なんでも隣の大陸は、大きな王国と回りに小さな集落のような村が転々とあるだけのアウスたちが暮らす大陸より遥かに平和なもの。貴族階級が王国内でしか存在せずガチガチに決められたルールはほとんどない。
テストルの原料となる花を扱うユスカと呼ばれる民族も、その王国を囲う集落の一つ。
そんなユスカの集落をまとめる者の娘と王国の新たに玉座に座った長が結婚するとなったのだが、娘からの唯一の条件がこの輸入を完全停止するというものだった。
会ったこともないユスカの娘にセンガルは帝国にある全てを捧げても恩は返しきれないと言った。
テストルが現在残っているものだけで終わるという事実に、王国だけでなく多くの国が項垂れた。
主に権力者達がテストルがあったからこそ成り立てたものもある。それが維持できなくなるとたった一日で暴動は起こり、テストルが生み出せないのなら怖くないと今も残る奴隷達が決起さえした。
「…荒れているな、ノルマンの方は暴動中か」
『まずこの連絡センガルにも繋がっているか』
『えぇ、聞こえてる……確かに荒れてるわね』
ニュースが入り約二十四時間、急きょ入った電報で王公帝の通信による会合が行われた。
理由は単純、ノルマンもデクドーと違い奴隷制度、奴隷を苦しめるテストルの存在は求めていない。一斉検挙のチャンスではある。
『出来る限り簡潔に言うが、テストルの原料が輸入完全停止による現行製造で締められる状態となった。既に工場はリストアップが終わっているが数ヶ所公国と帝国に近く、敷地が其方に入っている工場すらあった。叩き潰す協力を得たい』
「異論ないな、やれる」
『こちらも同じく。ただ一つ懸念点があるのだけど、今回のテストルの原料の輸出先の一覧にランブル聖国が入っていた。もしも王国やこちら側に位置するものと聖国が繋がっていたとしたら、残りの原料全て纏められてしまう可能性がある』
テストルの工場は大陸上全て合わせて二十八箇所。
半数以上が広大な王国で貴族の裏事業として展開され、別の物も作る工場の一角で作られていたりする。
王国以外で見つかった内の一つ、ランブル聖国はラッキーカードの一件以降流石に無視できない。
『国外に見つかった工場のほとんどは国内からの出兵を認めてくれた。我々が関与する以上は潰しきれるとは思うがランブル聖国はその申し出を断った。更に言えば「そのような物をつくる愚か者はいない」とテストルとの繋がりさえ否定した。嘘であっても否定されれば証拠が揃わぬ以上食い下がることは出来ない』
ランブル聖国は他国との繋がりがほとんど無い鎖国にさえ近く、中に誰かをスパイとして送り込むのも至難の技。手の打ちようがない。
「……その件だが、もし猶予が得られるのならもう少し泳がせることは可能か。裁判まで伸ばせれば共に叩ける気がするのだが」
『………ほぅ、彼女か』
『ねぇ、私のわからない話で勝手に納得するのやめてくれない?話すならある程度の情報を共有して』
ラウリーが来て約二日、アウスは仕事があると別れてすぐ緊急の仕事で家を空けることになった。
デフィーネから話をするようにと言われたのだが、それが叶うのには時間がかかることだけは理解できた。
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