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 アウスには納得が出来た。
ノルマンの言っていた『軌道修正が追い付いていない』『卒業パーティーをしなければいい』『あってはならないイレギュラーが存在し始めている』という点。

 前回、ノバは妖精の怒りを買い人間ではなくなった。が今回は命を落とす結果となり、デフィーネは片腕を落とす結果となった。
 それだけではない、思い返せばアウスが記憶を戻した戦争の際前回同様に裏切った者の他に突然気が狂ったように暴れ前回亡くなったもの達だけを襲うイレギュラーがあった。すぐに粛清がなされたが被害は確かにあった。


 イレギュラーは本筋から多少ずれたところで生じ、本筋を切って出来る限り元通りに進む為に多少手荒で手段を選ばなくなってきている。


 微かに違和感として考えていた事をまさかノルマンも言うとは思っていなかった。
 ノルマンの言っていたオズモンドがもしもマリアと結ばれる結果が生まれたとして、オズモンドとマリアの子がラウリーである可能性は限りなくゼロに近い。
しかもエトワール家の子供達は四人兄弟だ、全員が同じ状態でなんて確率は言わずもがなだろう。


 この物語自体が本編を維持できないほどに崩れてきているということ。
今回で完全に崩壊し三年後の卒業パーティーを行わないという決定打を打つことで回帰というループから抜けだせる可能性を見出だせたということ。アウスが求めていた理想的な道筋。


 ただ、そこまで壊れてきている物語なら本編の先が突然襲ってくる可能性や主要人物であるもの達にも影響やらが出る可能性がある。明日、全員が健康で顔を合わせ話が出来るとも限らない。
だからこそ、イレギュラーにラウリーが蝕まれる可能性を心配し龍化や暴走までしたのだ。

 イレギュラーが生まれすぎて本編を継続出来ないとなった場合にはもしかしたら物語自体がその形を維持できず崩落、そもそもアウスやノルマンしかり登場人物が消滅する可能性も無いとは限らない。


「………あと三年乗り切れば、勝ちか」









 王国に公国の主が来ていた。そのニュースは瞬く間に新聞にも大々的に書かれたこともあり広がっていった。

 しかもお忍びで来ていた際に黒龍は不吉だからと石を投げられたとあれば、読んでいる者たちの不安を煽るには十分であった。

 まさか、王宮でノルマンたちと談笑とはいかないものの話をしているなんて露知らず貴族の多くはアポイントを取らずに王宮へと向かっていった。
 『公主に我が子の失態を謝罪したい』
門前払いされ、腹を立てようとも謝り恩恵さえあれば一家の汚点が拭える。そう考えて。


「エトワール家御当主から謁見許可の申請が届きました」


 執務室の公国と王国の絶妙な空気感の中、勇気を振り絞って入ってきた従者はオズモンドがノルマンに会いたいとちゃんと正式な手順を踏んだことを告げた。
外の愚かな者達と違い、オズモンドはだから信用が出来る。とノルマンはくつくつと笑う。
 「オズモンドにおいでと伝えてくれ」ノルマンは机の上に置いてある書面に目を向けながら従者に伝えると、その場から早く立ち去りたい従者はわかりました。と頭を下げてそそくさと立ち去った。


「……マリア以外にも愛想は向けた方が良いと思うが」

「………必要あると思うのか、相手は案山子だぞ」

「……人間なはずなんだけどなぁ、ノルマンには案山子に見えるか」


 静かになった部屋で、アウスはノルマンをからかったが、ノルマンはそのからかいを一蹴しだからなんだと開き直った。
そうしている間に、執務室の外の人間達に動きがあることを、まるでチェスの盤を読むように脳内で想定しながら。
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