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2.再開期
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しおりを挟む医者はラウリーの治療の際、肩に今まで見たこともない痣を見つけたとマリアに伝えた。
すぐに確認をと見たマリアはアウスと何かで繋がっていた可能性を感じ、深刻化が懸念されない場合はそのままで経過観察ということでと判断した。
傷はどれも深くは無く、脳にも異常は見られないと医者は診断付け、ショックが強かったことで気絶しているのだろうと。落ち着くことができれぱ目が覚めるでしょうと言葉を続けた。
ランゼルが学院に来た時、学院は静けさで見知った世界とは姿が違うようであった。
教師が保健室へと案内をし、マリアとシェルヒナそしてベッドで横になり目を開かないラウリーと対面した。
学院は寮生活になるため年末や四季の休み以外で会うことはなくなる。
数ヶ月振りに会った妹は顔や見える範囲に傷を負い、起きる気配も無かった。
「……王妃様、妹は何故。なぜ虐げられたのか分かる範囲、我々に言える範囲で構いません。どうかご教授頂けますか」
言葉から伝わる殺意に似た怒り。前回、奴隷となり二年以上別れていたということも記憶にあるマリアとしてはその怒りが理解できてしまった。その怒りの対象の中にマリアやシェルヒナも含まれるということも。
マリアは言葉を選べる状況ながら選ばずに真実だけを伝えるという選択をした。前回の贖罪も含めた言葉で誠心誠意説明した。
ランゼルからしたら理解できなかったことだろう。
神から二つ目の名前を貰い国から認められた聖女が、学院にいた二つ目の名前も国からの認可も貰っていない者の戯れ言に惑わされた者に傷つけられ、更には『魔女』だと爵位も無視した侮辱と石を投げられ顔を切られるという暴行まで受けたのだ。怒らないわけがない。
「王妃様はこの件どうするおつもりですか」
ランゼルの問いは被害者の関係者にとってごもっともと言えるものばかり。一言でも回答を間違えれば、怒りは復讐へと姿を変える可能性もある。
マリアとて馬鹿ではない。慎重にかつ迅速に答えを出さなければならなかったがこの件は既に決めてあるも同然であった。
「既にノルマン……国王陛下の許可の下裁判を行うことは決定しています。罪状は『聖女暗殺未遂』と『公国の主への暴行』の二点。
関係者及び実行、傍観、主犯と人数があまりに多いことから順次事情聴取をし、ある程度纏まり次第執り行う予定でいます。
また、今回の件に関わった全ての者は現時点で全員勾留所に移動は済み、各家庭に連絡も済んでいます」
こちら側の慢心が生んだ事態ゆえ、なんとお詫びすれば良いか、と言い淀みながらも頭を下げたマリアに怒り心頭であったランゼルも段々と落ち着きを戻し王族が頭を下げているという非常事態に焦りの方が強くなった。
謝らないでください、王妃様のご尽力は聞き及んでおりますと今更ながらのお世辞もきっと無意味だったのだろう。
少しだけ無言の時間が続き、落ち着きもある程度戻った頃。ランゼルは疑問に頭を支配され、聞かざるを得なくなった。
「……何故、妹の件に公国の主が関わってくるのですか」
当たり前の疑問ではあると思う。
ランゼルからしたら聖女暗殺未遂と公主への暴行が同列に並ぶことすら可笑しい話。
公国の主が王国で暴力を受ける状態など想像もつかない。
マリアはラウリーとアウスの関係を上手く説明することは出来ないと思った。
前回既に会っていて匂いがわかるから、なんていう話をしたとてファンタジーのフィクションと捉えられて終わるなんて想像に難くない。
言える範囲でしか。
ラウリーはアウスの運命の番であること。アウスがラウリーに手紙を出していることは伏せ、アウスは運命の番であるラウリーが虐げられているのを血の匂いで感知し守っていたこと。
そんなアウスの鱗の事を見た生徒達は黒龍をアウスではなく魔女の使いの災いを呼ぶ魔物だと言い同じ様に石を投げたこと。
ランゼルにはどのように届いたのかわからない。突然隣国の長が彼女は運命の番だと妹を指定したと思うのかもわからない。
それでもマリアに言えることはアウスがラウリーを守ったこと、その理由は番を守る動物的本能が強かったことを伝えなければならないということ。
「……王宮に公主がいます。お話を望むのならお連れします」
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