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2.再開期
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しおりを挟むアウスは公国に帰還した後、手紙をシザー渡し託した。その間溜まっていた公主としての公務の為動き回っていた。
前回同様、奴隷売買を裏でしていた貴族達を一斉に切り捨てる様はさぞ恐ろしかったことだろう。
まだラウリーと出会う前の段階で、奴隷売買の基礎的なルートは完全に確立されていて、アウスも驚く程に貴族達の動きは音もなかったと知った。
その日、アウスはマルフォード卿の家に押し掛けるように向かった。流石に失礼だとは思っても公主を押し返せるほどの力は持ち合わせていなかった。
嫌々ながらに応接室に通して、茶を出したが早く帰れのアピールが強くなればなるほどにアウスは居座るアピールを強めた。
「…実はマルフォード、この国で奴隷売買が横行していた。奴隷売買がこの国でどれだけの悪行か知らぬわけでもないだろうに」
マルフォード卿は決してボロを出さない。前回の断罪でも変わらずではあったが、たった一つ。マルフォード卿が密文書を隠す本さえわかれば後は芋づる式で罪状は掘れることは把握済み。
前回の断罪と同じだとするならば。
話をしながら、そうなんですねと相槌をするマルフォード卿に話をしながらアウスは応接室の本棚に目を向けた。
「マルフォードが奴隷売買に関わっていることは知っている。その証拠となる文書も既に把握済みだが、面白い話だよな。童話に密文書を混ぜるなんて、悪趣味も良いとこだ」
マルフォード卿は流石に動揺し、滑らせ溢した言葉でアウスはマルフォード卿の動きを封じ国家公安に引き渡した。
ついでに国家公安の本部に向かい、部長であるアウスと同じ龍人族のエルメと対面した。
「こういうのはアポ取ってからなんですが、公主様ってのはそういうの知らんので?」
「……公国であってはならない奴隷売買を公安ともあろう者が見過ごしておいて随分偉そうな顔をしているんだな?」
アウスとエルメは同級の二十七。
互いに龍人という種族故の優秀さに出世は早かったが、悲しいことに共に性格には難が生まれ今も直る予兆すらない。
しかし互いに能力でいえば優れていることは誰もが肯定する。アウスの黒龍という種族がカーストでいえば最も希少で最も優れているが、エルメも青龍であり色がある龍人というだけで優秀さは約束されている。
「あ、そういえばさ。マルフォード卿の密文書に使われた本に挟まっていた付箋紙なんだけど、古代の呪いが混じってた。必ず恨みつらみは果たせるけど、人を呪わば穴二つで自分にも返ってくる呪いっていうので最近、賭場とか違法の裏世界で蔓延してる。公国も例外なく…公主として用心しといた方がいい」
雑談というの名の普通の者には伝わらない高難易度な会話。国政だの、裏社会の扱い方、話ながらアウスはエルメに「近い内に番を迎い入れる」とさらっと言った。あぁ、うん。と流したエルメだったが、タイムラグでマジかと大きな声を上げた。
エルメも同じ龍人族だからこそ番の大切さ、その存在については理解できているし他人事ではないが絶対に嫁を娶ることの無いと思っていた友人が結婚を示唆したことには流石に驚きを隠すことなど出来なかった。
そんな驚きと疑問に包まれた公安の一室に、るんるん気分で突撃してきたネスタ。スキップでもするかのように軽やかなステップで入ってきたが、エルメはネスタを見るなり攻撃を仕掛ける。向けられた銃口を笑顔で避けるように動くネスタにエルメは慣れた手付きで腕を伸ばし襟の後ろを掴む。
「リュドヴィクティーク、この奴隷商まだ捨ててないの?だめだと言っただろう?悪は抹殺しないと…」
「…………あっ、その資料ッ!!誰かまた呪われた?!」
真剣な眼差しで自分の命危ういところで、公安の部屋に置いてあった書類の文字をどうやってネスタは読んだのか全くタネがわからないことだが、ネスタはあっけらかんとした顔で、実は公主邸のメイド長も呪われて毒で腕失くなったばっかよ。と軽々しく言ってみせた。
アウスもだがエルメも驚いた様で呪いだという根拠は?どうして毒だと判断がついた?などとネスタに質問責めしたがネスタは動揺することなく、ノバというメイド長に退職を宣告されたメイドが部屋で息を引き取って、その部屋から古めかしい紙で『メイド長を消したい』と記入し誰かがそれを叶えた痕跡があったからと言い、毒に関してはデフィーネの出生等を知らぬエルメに視線を向け、我らが隊長が気付いたんだよね。とアウスにわかる言葉を選んで話をした。
「一時帰宅するが、エルメも来るか?」
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