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しおりを挟むギルティアは、ルドゥムーンから託された祝福の証をアウスをはじめとした四人に渡した。
「君たちの誰かが祝福により、軌道を変えてくれるかもしれない。これは私たちの我儘なのだが、リリアリーティ……彼女を幸せにしてくれ。助けてと彼女が手を伸ばせる存在に、君たちが」
アウスやセンガルたちは、理解が全て追い付いたかと聞かれれば半分も理解できていなかった。けれど、自分達が出来ることはここから先には無いことだけは強く理解できた。
「……ギルティア様、メイアの中にいる別の人はどうなるのです?元の世界に還ることは可能なのですか」
「…どうだろうね、彼女がどの世界から来てその世界でだうなったことで空白の魂になったのかもわからない。この世界ではウィリエールを早くから手駒とすることで主導権を握り、ラウリーが戻ってくる未来を消そうとしたり…ウィリエールに想いが強いことは見えていた…この世界を本として読んだことがあるのは確かだろうから、元に戻れれば僥倖だね」
訊ける時間は今しか無い、強くそう思えば頭をフル回転させて訊ける内にと焦りも生まれる。
『ラウリーはどうなりますか』『リリアリーティはもうこの世には居ないのですか』『ウィリエールは止められるんですか』『この世界のルールはなんですか』『何をすれば修正が入ろうとするのですか』……考え始めれば留まらず、声にならぬまま頭の中をグルグルとする。
「……もうそろそろ、強い眠気が来るだろうから身を任せればリセットが入る。物語上、誰がどう何時のタイミングで祝福で目覚めるかわからないし、本当に目覚められるかはわからない。けれど、誰かが変えてあげて。
……メイア、君は私と共に還るべきところへ行こう」
ギルティアの力はセンガル、アウスたちには理解できもしない非現実的であまりにも強すぎた。
メイアが嫌だと騒いで暴れようとした瞬間、意識を飛ばすように倒れるのだから、何をどうしたことでメイアがこうなったのか……訊けるような場でも無い。
ギルティアの願いは一つ一つ声として落ちる。
ノルマンにはマリアを幸せにしてあげてほしい。デクドーによって潰された本来あるべき未来を創り出すことは現実的に難しいと。それでもノルマンだけはマリアを見捨てることがないようにと。
マリアには諦めないでいてほしい。物語の性質上過去は一文程度、こうであったとしか語られずスタート地点からでしかギルティアたちも干渉が出来ない。だからこそ、今度だけはノルマンと手を取って笑ってほしいと。
センガルには決別してほしい。復讐心は悪ではない、それによって生きる糧になるものも多く居るからこそ否定はしないが、シシリア家そして王国を憎む心に侵食され周りを見れなくなってしまっては君をセンガルと呼ばぬ者たちに顔を向けられまい。次こそは彼らを見てあげてと。
アウスにはラウリーを託すと。リリアリーティとの過去はラウリーには何一つ関連性は無い。時があまりに流れすぎた、誰も何も保てぬほどに無情な時間が過ぎて今になっている。だけど、彼女は自己犠牲で他人の幸せを優先してしまう癖がある。これは昔から変わらない、だから……君がラウリーから「助けて」と言われる人であれと。
眠気が少しずつ、増えていく。
ふわふわと意識が遠退いていく気がする。
「……マリア、ノルマン、アウス。もし、誰が最初に目覚めるか、わからないのだとしたら……何かのマークでもスカビオサの花をモチーフにしてくれない?私が知ってる花がそれくらいだから……」
スカビオサの花、華奢な茎に繊細な花びら。 だけど芯は、とてもつよい。 スカビオサがもつやさしさと強さがあり花言葉は『再出発』
この花はセンガルが奴隷から抜け出し新しく帝国を作ると決めた時に夫たちが用意した花束にいた花。ここからもう一度と、心に決めた時必ずこの花をと決めていた。
マリアはノルマンに寄りかかるように端に座り瞳を閉じた。
センガルも既に眠っている夫の元へ行き眠り。
アウスは会場全体を見回して、全員の顔を確認する。
そしてギルティアに「また、会いましょう」と挨拶をし、深く沈むような眠気に身を任せた。
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