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しおりを挟むシザーが戻るまでの約一週間の間に起こったことといえば、ノバならびにノバの両親達の断罪がニュースなら一面を飾るような大きな事象。
ニュースにはならない事実としては、妖精をもを怒らせたノバは、木のように肌が硬く脆くなり割れては再生を繰り返し痛みで叫び声をあげ続けた。が、妖精たちの怒りは収まらずノバの両親達が公主の元へ駆け付け現状を目にしたのと同時にノバを叫ぶ木へと姿形を変えた。
正座をし痛みで上体を丸め叫ぶ姿は痛々しく、そして再度の再生は望めないものだった。
ノバの両親は娘から送られてきた金銭を一銭たりとも使っておらず、しっかりと全額を返納した。
そして、木となったノバの管理を公主家が責任を持って行う約束の上、ノバとの親子の縁を切るという書類に涙ながらに署名し謝罪した。男爵家はこの御慈悲を忘れることはない。と言いこの件は幕引きとなった。
しかし暴君と呼ばれる公主がたかだか一つの膿を出したから満足するわけがない。
ノバを地下にある収容監獄への投獄を命じ運ばせた後、アウスは使用人達に一つ質問をした。
「俺の番を一度でも貶める、侮辱するまたはそれに近しい発言をした者がいたらその場にて膝をつけ」
言葉の意味はノバを断罪したのとほぼ同じ。複数の使用人は自覚はあれど易々と膝をつけずにいた。
ノバほどの罪はない、だが怒りと殺意に満ちた空間で膝をつく行為は斬首に近いものを感じたからだといえば都合が良い。
そんな自分の命大切さに皆がたじろぐ中、一人。たった一人が突然膝をつき深々と頭を下げて床に額を押し付けた。周りの者が動揺し、立った方が良いと呟いてもその者は動かなかった。
アウスが「なんと言い彼女を貶めた?」と問えば応接間に響くほどの大きな声でその者は「ご飯を残すなんてあり得ないッ!」と言った。
流石のアウスも殺意が無くなる程に呆気に取られた。
「それは彼女は今日起きたばかりだからな」とアウスが悩ましげに言えば、あ、そうかッ!と不意を突かれたようにハッとした顔をしたが、すぐに「ですが、いつも一部食べてあったんです!」と続けて声をあげた。
これにアウスが反応し説明をと言えば、エリとムンヒが各々躊躇いながら「ノバが、食べていた」と告げた。
大きな溜め息を吐き、頭を下げる者へ「……と、そういうことらしい」と言えば「そうだったんですね、毎回残されてるのを見て、ずっと勿体無いって思ってたんですッ、だって……」
止まらない愚痴をその者の近くにいた同じ管轄の者が「やめなさい、公主様のお耳を汚さないの」と叱責する。
しかしながら、その者の懺悔と愚痴を聞いて周りの者が流されたのは事実。多くの者が殺意の薄れた空間にて、膝を付き懺悔する。
それでも膝を付かなかったものをアウスは妖精達の怒りを見ながら把握し、伝令を記載するメモ帳に名前をつけていく。
その日は解散となり、午前七時。呼び出されてから四時間で各自持ち場へと戻ることを許された。
ただ、午後六時。懺悔出来る唯一の場にて膝を付かなかった者を中心に、妖精が怒りを顕にした者に解雇を伝える伝令が下りその日の内に荷物を纏めよと行動を余儀なくされた。
「……解雇だけでお優しいことですねェ」
「キディ、本当にそう思うか?……解雇した者の再就職で使用人は出来ないようこの国の全貴族に一筆用意した。
二度と、顔を見ることが無いように。消せるものは全て消す。番を侮辱されて、誰が赦すと言った?」
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