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1.回帰
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しおりを挟むラスティート帝国。
元王国にて奴隷とされていた獣人達を多く囲い守る国。
長である皇帝は獣人の女性である。
昔国が二つに別れる時、帝国と公国は各々持った奴隷と呼ばれていたもの達を守る手段が違うことに反発が起き分裂が起き二国が出来た。
公国では奴隷だったもの達が日常生活を手に入れ、人間として扱われるようになる世界を。
帝国では奴隷という存在を抹消し、貴族位なんていう格差を出来る限りの排除した世界を。
各々が作ろうと足掻きもがいて今になる。
帝国では、皇帝という存在を作り上げたのは元奴隷達だった。
全てのカーストを平坦にという思想を持ってはいても、最終的な決定を誰かが決める必要性と、それらを能無き者がしては国が滅びるという懸念から当時最も優れていた者を皇帝とした。
現皇帝、センガル・メフィ=トスミート・アンテは非常に高い頭脳と行動力を有しているが七人の夫を持つ博愛主義者でありながら、男という存在をあまりよく思えずにいた。
元性的な奴隷であったという過去から、その思考へとなったがセンガルの七人の夫らは各々が同じ様に奴隷であったことから反発の声はあまり上がらなかった。
「…ニュースペーパーがこんなにも大々的に書いてくれるお陰で公国の膿が出てきたことを知れた。
公国で出たということは帝国内でも同じ様に繋がる馬鹿はいるだろうから…この件徹底的に調べるように」
…
アウスの番と呼ばれた奴隷の手術は想像以上に時間がかかり十二時間を優に越えてみせた。
が、それでも諦めなかったのは公主の番を無事に生かすことで貰える恩恵のためだろう。
ただ、心身ともに大きすぎるダメージを受けた奴隷は今も目覚めていない。
使用人の一人であるノバは奴隷の世話などしたくなかった。
共に働くエリにムンヒの真面目さを嘲りわらうようにノバは奴隷の為に公主が用意したものを横領した。
最初は小さなものから。今ではドレス一着。
吸った蜜の味を覚えたように繰り返していた。
半年と六日目。
静かに開いた瞼は状況を判断するには難し過ぎた。
しかも目覚めた時にその事実を見たものが物を横領している最中のノバという最悪の事態。
まずいと認識する前に動いたノバの身体はシーツごと掴んで窓に投げ捨てるという奇行に走ったのだ。
人間であればそれは不可能に近いが、龍人や動物種の人形もいる世界において奴隷となり痩せ細った女一人飛ばすことは容易い種族も多かった。
シーツごと三階の部屋より飛ばされたが、近くの木の枝にシーツが絡み落ちることは免れた。
ひどく痩せ細った手足、がシーツの隙間から抜けてしまう。
今外でこの光景を見たものは木の枝から垂れ下がる白い物体から手足が片方ずつ飛び出ているといったところだろう。
声も出せない、抜け出すだけの力がない。
踠いて誰かにここにいることを知らせる力もなにも残っていない。
白いシーツの布越しに光がいくつも見える。
月明かりが縫い目から漏れていると思っていたけれど、ふと、その光が右往左往に移動してはくるくると周りを飛んでいるように見えた。
その光に向かい心の声を無意味と思ってもかけてしまう。
「もし、貴方たちに聴こえるのなら誰かを呼んできて」
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