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1.回帰
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しおりを挟む○月×日
エトワール嬢が木陰でミルワール嬢、シェルヒナ嬢達複数人で本を読みながら談話する。
内容はいたってシンプル。
最近のサロンで流行り始めたドレスの話題、新たに出来た口紅の話題、そして恋愛事情。
ただ、談話の途中でエトワール嬢の使用人が走ってやってきて、ウィリエール様、詰まるところは皇太子殿下がお呼びだと血相を変えて言いに来た。
ミルワール嬢たち複数人はまたか、という顔をしてエトワール嬢を心配したが、当人は至って落ち着いて少し席を外しますと呼ばれた方へ向かっていった。
戻ってきたエトワール嬢は背中を庇いながら座って、また本を読み始めた。
他の嬢たちは何があったのかを知っているからこそ聞きもしなければただ隣で通常通りに振る舞うことしか出来なかった。
○月△日
エトワール嬢はティカ家のご子息と共に教員より頼まれた仕事をこなしていた。
仕事内容は単純で教室に運ぶ荷物を指名された人間が用具室より運ぶこと、というもの。
ティカ家は商いをしている為エトワール嬢に、荷物を軽く持つ裏技を教え、二人である程度の距離は保ちつつではあったが楽しい時間を過ごしていた。
要は雑用業務だが、二人は協力していたがそれを打ち壊すようにその日も使用人は走ってやってきた。
一旦教室に入り、置くものを置いたらエトワール嬢はティカ家の子息に詫びをいれ呼ばれた方へ向かっていった。
ティカ家の子息はひどく悲しげで無力を嘆くため息を吐いた。
帰ってきたエトワール嬢の足は赤く腫れ上がり見るからに痛々しいものだった。
クラスの人間全員がそれを見て、知っていても触れることが許されなかった。
○月□日
皇太子殿下は、エトワール嬢との婚姻があるにも関わらずアンヒス家の次女であるメイアという女性と関係があった。
それは正式に婚姻を発表した人間が最もやってはいけないことで、身体を許したメイアも国王陛下が知れば死罪は免れない大罪であった。
しかし二人はそれを知りながら、学院内は国王陛下の管轄外であることを良いように扱い王者のように振る舞った。
メイアは皇太子殿下の正妃だと自称し、気に入らない物や人を虐げた。
皇太子も同じようにした、そして名ばかりの婚約者であるエトワール嬢を悪役に仕立て罰則として暴力を振っては自分達は強者なのだと意気がった。
権力の下にいる人間にはそれを正すことがどうしても出来なかった。
×月○日
エトワール嬢が学院を退学にさせられたと聞いた。
国王陛下にも多少の話は行ったそうだが、皇太子が良いように話をねじ曲げた、ということだけは知っている。
その一部始終を見たシェルヒナ嬢は涙を溢しながら他の嬢たちに教えていた。
メイアを虐げ命を狙ったとして、貴族位剥奪の上、奴隷の紋を額に刻印されて国外追放されたのだ。
奴隷の紋は一般的に肩甲骨辺りに押される人間以下の証明。
貴族が余程大きな罪でも犯さない限り、刻印されることは無い。
しかもここまでの冤罪を重ねた状態ではなおのこと初めてであるはずなのに、国王陛下は何も知らない様子だった。
そして、その日から二年半。
皇太子殿下ならびに、メイアが学院四年生となり、卒業を控えた年となった。
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