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43 コボルト戦士団の精鋭
しおりを挟む「では皆さん、十分気をつけて、安全第一でお願いします」
「「はーい」」 トカ君&ロアさんが元気に応える。
「「「ハッ」」」 コボルトの戦士たちは緊張した面持ちで声をあげる。
俺達は石造りの古びれた城へ進入した。
ちなみに今日のロアさんは朝からずっと狼姿のままだ。人間状態よりも楽で気分がいいらしい。
彼女の探知術は相変わらずの高性能で、城内の様子はあらかた把握済みである。
朽ちかけた扉をこじ開けて中に入ると、その場所はエントランスホールの中2階。
すぐ下の階には巨大な扉が見える。そこが本来の城の出入り口だったと思われる。
「はい、骸骨騎士が動き出しますよ」
ロアさんが注意を促してすぐに、部屋中に散らばっていた骨の欠片たちがカタカタと揺れ始めた。
それはフロアに整然と配置されていた骸骨の騎士たち。立ち上がり、そして、いっせいに剣を抜く。
「ひゃっほーー、相手にとって不足は無いですね」
トカマル君が楽しそうに迎え撃つ、手にした大鎌で骸骨騎士の隊列をまとめて薙ぎ払った。
大鎌は新トカマル君の新武器である。これまで使っていた剣が大きく形を変え、なぜか巨大な鎌になった。よく死神とかが持っていそうなやつである。
というか、鑑定スキルで調べると実際に“死神の大鎌”という名称が表示される。
白銀の全身鎧を身につけて、死神の大鎌を振り回すトカマル君である。
魔界的センスの持ち主であるロアさんは、凄くかっこいい装備だねと言って喜んでいた。トカマル君も同意していた。あの2人はそのあたりのセンスが似ているのだ。2人とも俺が霧に変化するのをひどく喜んでいたし。
そんなトカマル君、少し距離の遠い敵には大鎌をブーメランのように投げつけて粉砕する。ヒュンヒュンと空中を旋回して戻ってくる大鎌。
大鎌に打ち倒された骸骨からは、ホワホワした仄かな光が抜け出して、それは少しの時間宙をさまよった後に大鎌やトカマル君に吸収されてゆく。残された骸骨騎士の骸は灰のようになって消滅するばかり。
本来、魔物の中で最上級のしぶとさを誇っているはずのアンデッドだが、トカマル君には関係ない。いつものように全て一撃で魂ごと刈り取られていく。
床には骸骨騎士たちの使っていた武具だけが残されてゆく。
武具を放置するのももったいないので、俺は拾って集めてインベントリへ収納してゆく。鑑定もしてみる。
ふうむ、どれも呪われてるな。
どの武具も酷いものだ。使い続けると身体が腐り落ちてきそうな代物ばかりである。もともとの性能は良い武具なのだろうが、かなり古くて状態も良くない。
これはあとで暇なときにトカマル君に再生成してもらうかな。
面白い物ができるかもしれないし、直して売るだけでも意外と良い値がつくかもしれない。
さて、そんな戦況の中、部屋の隅でもうひとつの激しい戦いが展開されていた。
コボルトの戦士団10名 VS 骸骨騎士1名 である。
「魔人エフィルア様の魔力を分け与えられ、加護を得た我らの力を見せるのだ! 進めッ~~~」
「「「ウォォォンンン」」」
元気いっぱい戦っているコボルト戦士団。
ちなみに、加護を得たなどと言っているが、ただ俺の作ったブースト肉を食べさせただけである。もちろんアレには俺の魔力も入っているから魔力を分け与えたというのは事実かもしれないが。
コボルト戦士団の皆はブースト肉を最大3回分まで食べる事ができた。全員がハルピュイア×3回を選び、速度の値が+68されている。
コボルトさん達は倍加した速度を楽しむように戦場を駆け回り、陣形を組んで格上の骸骨騎士と渡り合っていた。
俺とロアさんは1歩引いて状況を見守っている。
今くらいの敵の強さだと、俺達が戦うよりもトカマル君やコボルトさん達のレベル上げをしておいた方が良いと思うのだ。
しかしコボルト戦士団には少し荷の重い相手かもしれない。
10対1で戦っていてもギリギリだな。
一進一退の激しい攻防が繰り返されている。
隊長コボルトが苦労してようやく骸骨騎士の足の骨を粉砕。敵に肩膝をつかせたかと思った次の瞬間、今度は骸骨騎士の気合一発、頭蓋骨だけを飛ばして隊長さんの肩に噛み付いた。
皆で必死に頭蓋骨を取り押さえる。なんとか引き剥がしたかと思うと、砕いたはずの骸骨の足が元に戻っていて再び戦いの仕切りなおしとなる。
肩を弾ませて荒い呼吸をするコボルト軍団。
なるほどな。本来、アンデッドとの戦いとはこういうものなのかもしれない。非常に泥臭く面倒くさそうだ。
それでもコボルト戦士団の士気は高く、繰り返し繰り返し突撃を加える。そしてついに骸骨騎士は完全に動かなくなった。
「「「ウワォォォォン」」」
コボルトさん達の歓喜の雄たけびが城のエントランスに響き渡るのだった。
「わふぅ、レベルが上がったぞおぉ」
「俺もだ」「ワシもだ」「あたしも!」
10名全員のレベルが上昇した。コボルトさん達からすると骸骨騎士は完全に格上の相手。厳しいボス戦を攻略したようなものだった。
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