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31 ブースト肉とトカマル君
しおりを挟む俺はインベントリからステータス上昇食材を取り出し、トカマル君に食べておいてもらう。
まずは角ウサギのブースト肉から。これの効力は【速度】+5。
オーク肉には防御やHPが上昇する効果があり、百合根は魔力系が上昇。魔狼の肉はやや効果が弱いけれど、それでも攻撃力が少し上がる。
どれも上昇値は+3~6くらい。すべて食べるとトカマル君のステータス全体が15%ほど強化された。
普通だったらお腹いっぱいになってしまう量だがトカマル君は食いしん坊。たくさん食べられる体質なのだ。
そして再び戦い始めると―― ――
見事にレベルアップ。地下10階層を踏破する目前のことだった。
めでたいことである。
じつはこれ初めての事だよな? トカマル君が普通に魔物を倒してレベルアップするのってさ。
今までは必ず何か妙な物を食べてのレベルアップだった。
良かった。これはうれしい情報である。トカマル君も普通にレベルアップするのである。
今のダンジョンの魔物の強さが、トカマル君のレベル上げにはちょうど良かったのかもしれない。基本的には自分よりも少し強い相手と戦った方がレベルは上がりやすいらしいからな。
嬉しいことは重なるもので、さらにもう1つ朗報が舞い込む。
このステータス上昇食材の効果は、どうやら重ね掛けが可能なようなのだ。
つまり、たくさん食べるとそれだけステータス値が上がってゆく。
たとえば角ウサギのブースト肉の場合。
食べ進めると、ある量を食べきったところで1回目の速度上昇+5が発生するのだが、そこからさらに食べ続けると、またどこかのポイントで2回目の上昇がやってきて+10に。3回目も同じような感じなのだが、ここまでの2回よりも少しだけ効果が高く、合計で+16となった。
そこで打ち止め。これ以上は食べても効果なし。つまり最高で3回までは効果が重なるらしい。
はい、そして食べました。トカマル君はモリモリ食べました。
角ウサギ、オーク、魔狼を各3回分食べました。
そして効果が重なるのはここまでだった。このあとに百合根も食べたのだが、効果が現われなかったのだ。3種類までしか効かないのか、あるいは合計で9回までしか効かないのか。
結果。3種をMAXまで摂取して、合計効果はこんな具合になる。
【HP】+19 【攻撃力】+14 【防御力】+18 【速 度】+16
HP自然回復+12%
魔力とMPはもとのままだが、今のところトカマル君は戦闘用の魔法もスキルも使わないから問題なし。
他のステータス値は1.5倍くらいにまで強化されている。
こうなってくると同じようなレベル帯の魔物は余裕で倒せるようになってしまった。11階層までくると魔物のレベルがトカマル君を余裕で超えてくるのだが、そんな格上の敵とも1対1で倒せてしまう。
もちろんそれなりに怪我もするのだけれど、トカマル君は普段のおっとり具合に反して戦闘に対して激烈アグレッシブ。受けた傷口から流れ出る己の血液をペロリとなめると、不敵で凶悪な笑顔で敵に向かってゆく。
トカマル君。恐ろしい子。
HPの自然回復+12%という効果も優れもので、多少のダメージなら少し休めば回復。連戦できてしまう。
大きめのダメージを受ける場合もあるので、そのときは買い込んである回復薬を使っておく。安いやつでも1個1万ほどするが、魔石1つで元が取れるので余裕である。
格上の強敵相手に嬉々として戦いを挑み、連戦を連勝するトカマル君。
まるで青春の爽やかな汗を流すかのごとく、魔物を斬り屠るトカマル君。
基本的に周りが手を貸してしまうとレベル上げ効率は落ちてしまう。なので俺は見守るばかり。
がんばれトカマル君。強いぞトカマル君。
そして気がづけば、彼のレベルは38に至っていた。
UP 【LV】30→ 38
素晴らしい成果ではなかろうか。
「トカマル君。何か身体の調子がおかしくなったりはしてない?」
「そうだな、無理はするんじゃないぞ? ステータス上昇系のアイテムをそんなに多用したら、普通はどこかに不具合がでるはずだ」
ロアさんとダウィシエさんは時々、そんな感じでトカマル君の様子をうかがっていた。2人の話によると、この手のアイテムを普通の人間が大量摂取すると、必ず魔素中毒になるそうだ。食べてる途中で気分が悪くなり、むしろ弱体化してしまったりするらしい。
「えー、全然大丈夫ですよ。すごく元気です。モリモリです」
トカマル君は平然とした表情で、何か問題が起こりそうな兆候もなかった。
「僕はエフィルア様の眷属になってますからね。その魔力の影響を受けた食材だから相性が良いんじゃないかって思います。いくらでも食べられますよ?」
良く分からないが、そういう事らしい。
もし問題が起こったとしても、とりあえずは気持ち悪くなる程度みたいなので様子をみよう。
そんなこんなで数時間が過ぎた頃、俺達は16階層の手前まで降りてきていた。
ダウィシエさんとトカマル君が大暴れだったおかげで、俺はただの魔石拾い係だった。
ここから先、俺達の眼前には自然石を並べた急階段のような地形が迫っていた。
ロアさんの見立てでは地下16階層へと続く道のようだ。
「皆さんまだ余裕はあると思いますが、一度ここで小休止にするべきだと思います。ここから先の魔物は様子が少し違うんですよ」
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