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12 昇格してみたり
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「お疲れ様でしたエフィルアさん」
アンデッドの湧く荒地からギルドに帰ってくる。
今日も今日とて受付に出て来てくれたのはロアさんである。
他にも人はいるのだけれど、相変わらず彼女意外は俺から距離をとっている。
さて、今回の討伐報酬は1体あたり1,000ロゼだった。
もし俺1人だったら1日がかりで何体倒せただろうか? 動き回る骨を粉々になるまで叩き続ける作業。それで1体1000ロゼ。気が遠くなる。冒険者の世界ってのも大変なものだ。
けれども今回はトカマル君の能力が発揮されたからな。実際の手間はそれほどかからなかった。合計で81体倒せたので、8万1千ロゼの収入になってしまう。
ロアさんにギルドカードを渡し、討伐記録を確認してもらっていると、彼女の後ろから他の職員2名が覗き込んできた。何かをヒソヒソと話し込んでいる。
「半日でこれだけの量を?」
「そうみたいです」
「となると、まさか……」
ロアさんは気に止めない様子で手続きを進める。
「はい、エフィルアさん。討伐おつかれさまでした。今回はフィールドの完全制圧の可能性がございます。追加の特別報酬が支払われるかもしれませんが、そのお支払いは制圧の確認が取れ次第となります」
フィールドの完全制圧?
ロアさんの説明によると、あの荒地にいた魔物を全て掃滅したことで追加の報酬がでるのだそうだ。
最早あそこがアンデッドの発生ポイントではなくなった可能性があるという。
それがフィールドの完全制圧と呼ばれる現象らしい。
もともとあの場所は最近まで普通の林で、特に目だって魔物が湧いてくる場所ではなかったそうだ。それが、何かをきっかけにして特定の魔物が多発生するスポットへと変化したのだ。
こうしてひとたび魔物が湧き始めた場所には瘴気と呼ばれるモヤモヤが発生する。
瘴気が濃くなる事でさらに魔物が発生しやすくなり、それによってまた瘴気が濃くなる。
この循環は放っておくと手がつけられなくなるほど巨大化し、人の町も国も呑みこまれてしまう事すらあるそうだ。
巨大ダンジョンや人跡未踏の魔の森。そういった危険地帯も皆、元はこうして生まれてくるのだという。人間の力の及ばない秘境が常にすぐ傍にあり、その境界線で人間と魔物は戦っている。
もっとも今回のスポットは大きな問題になるような規模でも難易度でもなく、上位の冒険者や国軍が動けば簡単に潰せるような場所だったようではあるが。
どちらかというと、脅威度の低さの割りに面倒だったから、まだ誰も本腰を入れて対処していなかっただけの話である。
ただそれでもギルド職員にしてみれば、面倒な案件が1つ片付いたのだから喜ばしい事ではあるようだ。
ひと通りの手続きが終わった頃には、ロアさんが作成した報告書を数名のギルド職員が手にとって回し読みしていた。
「どんなもんだいって感じですね。ふふふー」
ロアさんはなんだか嬉しそうにしてくれていた。
それから彼女は一度奥に引っ込んで、別の書類を持って帰って来た。
「お待たせしました。今回の討伐依頼の成果により、エフィルアさんのギルドランクは1つ上昇いたします。GからFランクに上がる場合にはデメリットがありませんので、自動的に変更となります。ちなみにFランクになると職能も“見習い冒険者”から“冒険者”に変わりますよ」
これは朗報だった。
ランクが上がれば他の町や地域との行き来もしやすくなったり、一般人は立ち入り禁止のダンジョンなんかにも入れるようになるらしいのだ。
受けられる依頼のランクも上がり、難易度と報酬の高いものを受けられるようになる。
依頼のランクは、自分のギルドランクの1階級上か、1階級下のものまで。
今回はFランク冒険者に昇格したので、G、F、Eの依頼を受注できるようになったわけだ。
手続きを済ませてもカード自体の見た目は今までと何も変わらなかったが、俺のステータスにはちょっとした変化があった。職能という項目がクラスアップしていたのだ。
【職能】見習い冒険者→ 冒険者
職能には他にも沢山の種類がある。
戦士とか、魔法使い、僧侶、騎士、アサシンなどなど、そんな感じのやつである。
この世界には今でも地上に神様が沢山いて、様々な恩恵を人間にも与えてくれるようだなのだが、職能というのもその1つなのだ。
職能を貰うとステータスに補正が付いたり、特定のスキルを覚えられたりする。
見習い冒険者という職能には特にこういった恩恵はなかったのだが、これが“冒険者”になると、ギルドに幾らかの代金を支払う事によって、ちょっとしたスキルを習得することが出来る。
初級炎魔法とか、初級剣技とか、そういったものの中から自分の適性にあったスキルを選ぶ事になる。
俺は喜び勇んでスキル授与サービスを頼んでみる。
ふむふむ、一番安いものなら2万ロゼからか。これなら払えるが…… 俺には適正がないようだ。ではこちら…… ん? じゃあこれは? なるほど。
非常に残念な事に、適正のあるスキルが何ひとつなかった。
なんだそれは。あるだろうよ。俺にだって何かしら適正があるだろうよ。
もういい。自分で覚える。魔力が0な訳でもないのだし、地道に練習していくさ。
スキルや魔法というのは、別に神様に頼らずとも自力でも訓練によって習得できるはずなのだから。
俺は気を取り直して新たな依頼を受け、町の北東にある森を目指す。
今回受注したのは森の境界付近での木の伐採の任務だ。
アンデッドの湧く荒地からギルドに帰ってくる。
今日も今日とて受付に出て来てくれたのはロアさんである。
他にも人はいるのだけれど、相変わらず彼女意外は俺から距離をとっている。
さて、今回の討伐報酬は1体あたり1,000ロゼだった。
もし俺1人だったら1日がかりで何体倒せただろうか? 動き回る骨を粉々になるまで叩き続ける作業。それで1体1000ロゼ。気が遠くなる。冒険者の世界ってのも大変なものだ。
けれども今回はトカマル君の能力が発揮されたからな。実際の手間はそれほどかからなかった。合計で81体倒せたので、8万1千ロゼの収入になってしまう。
ロアさんにギルドカードを渡し、討伐記録を確認してもらっていると、彼女の後ろから他の職員2名が覗き込んできた。何かをヒソヒソと話し込んでいる。
「半日でこれだけの量を?」
「そうみたいです」
「となると、まさか……」
ロアさんは気に止めない様子で手続きを進める。
「はい、エフィルアさん。討伐おつかれさまでした。今回はフィールドの完全制圧の可能性がございます。追加の特別報酬が支払われるかもしれませんが、そのお支払いは制圧の確認が取れ次第となります」
フィールドの完全制圧?
ロアさんの説明によると、あの荒地にいた魔物を全て掃滅したことで追加の報酬がでるのだそうだ。
最早あそこがアンデッドの発生ポイントではなくなった可能性があるという。
それがフィールドの完全制圧と呼ばれる現象らしい。
もともとあの場所は最近まで普通の林で、特に目だって魔物が湧いてくる場所ではなかったそうだ。それが、何かをきっかけにして特定の魔物が多発生するスポットへと変化したのだ。
こうしてひとたび魔物が湧き始めた場所には瘴気と呼ばれるモヤモヤが発生する。
瘴気が濃くなる事でさらに魔物が発生しやすくなり、それによってまた瘴気が濃くなる。
この循環は放っておくと手がつけられなくなるほど巨大化し、人の町も国も呑みこまれてしまう事すらあるそうだ。
巨大ダンジョンや人跡未踏の魔の森。そういった危険地帯も皆、元はこうして生まれてくるのだという。人間の力の及ばない秘境が常にすぐ傍にあり、その境界線で人間と魔物は戦っている。
もっとも今回のスポットは大きな問題になるような規模でも難易度でもなく、上位の冒険者や国軍が動けば簡単に潰せるような場所だったようではあるが。
どちらかというと、脅威度の低さの割りに面倒だったから、まだ誰も本腰を入れて対処していなかっただけの話である。
ただそれでもギルド職員にしてみれば、面倒な案件が1つ片付いたのだから喜ばしい事ではあるようだ。
ひと通りの手続きが終わった頃には、ロアさんが作成した報告書を数名のギルド職員が手にとって回し読みしていた。
「どんなもんだいって感じですね。ふふふー」
ロアさんはなんだか嬉しそうにしてくれていた。
それから彼女は一度奥に引っ込んで、別の書類を持って帰って来た。
「お待たせしました。今回の討伐依頼の成果により、エフィルアさんのギルドランクは1つ上昇いたします。GからFランクに上がる場合にはデメリットがありませんので、自動的に変更となります。ちなみにFランクになると職能も“見習い冒険者”から“冒険者”に変わりますよ」
これは朗報だった。
ランクが上がれば他の町や地域との行き来もしやすくなったり、一般人は立ち入り禁止のダンジョンなんかにも入れるようになるらしいのだ。
受けられる依頼のランクも上がり、難易度と報酬の高いものを受けられるようになる。
依頼のランクは、自分のギルドランクの1階級上か、1階級下のものまで。
今回はFランク冒険者に昇格したので、G、F、Eの依頼を受注できるようになったわけだ。
手続きを済ませてもカード自体の見た目は今までと何も変わらなかったが、俺のステータスにはちょっとした変化があった。職能という項目がクラスアップしていたのだ。
【職能】見習い冒険者→ 冒険者
職能には他にも沢山の種類がある。
戦士とか、魔法使い、僧侶、騎士、アサシンなどなど、そんな感じのやつである。
この世界には今でも地上に神様が沢山いて、様々な恩恵を人間にも与えてくれるようだなのだが、職能というのもその1つなのだ。
職能を貰うとステータスに補正が付いたり、特定のスキルを覚えられたりする。
見習い冒険者という職能には特にこういった恩恵はなかったのだが、これが“冒険者”になると、ギルドに幾らかの代金を支払う事によって、ちょっとしたスキルを習得することが出来る。
初級炎魔法とか、初級剣技とか、そういったものの中から自分の適性にあったスキルを選ぶ事になる。
俺は喜び勇んでスキル授与サービスを頼んでみる。
ふむふむ、一番安いものなら2万ロゼからか。これなら払えるが…… 俺には適正がないようだ。ではこちら…… ん? じゃあこれは? なるほど。
非常に残念な事に、適正のあるスキルが何ひとつなかった。
なんだそれは。あるだろうよ。俺にだって何かしら適正があるだろうよ。
もういい。自分で覚える。魔力が0な訳でもないのだし、地道に練習していくさ。
スキルや魔法というのは、別に神様に頼らずとも自力でも訓練によって習得できるはずなのだから。
俺は気を取り直して新たな依頼を受け、町の北東にある森を目指す。
今回受注したのは森の境界付近での木の伐採の任務だ。
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