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10 ト、トカマル君
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古いアンデッドの霊魂を摂取したい。そんな猟奇的でクレイジーな希望を述べるトカマル君を連れて、俺たちは魔物の発生ポイントまでやってきた。
トカマル君は、あと霊魂だけ摂取すれば大きく進化できるような事を言っていた。いや、もしかしたら、ただただ食べたい物をリクエストしているだけかもしれないが。
「うっわ~~、エフィルア様! いっぱいいますね~」
現地に到着したトカマル君のテンションはますます上昇。
しかし、このまま荒地の中に突っ込んでいくのは危険だろう。
骨だけの姿になった魔狼がうようよしているし、半透明の人型ゴースト達は、すでにこちらに鋭い眼光を向けて集まって来ていたりする。
いったん離脱、離脱。荒地からいったん距離をとる。
爽やかな空気が充満している草原のほうへ移動する俺達。
こっちまで追いかけてくる魔物は…… 骸骨狼が2体と、ゴースト1体だ。
ギルド情報によると、骸骨狼というアンデッドモンスターは、魔狼よりも基本的なステータスは落ちているらしい。ただし1点だけ、しぶとさだけが異状進化しているという。
骨を砕いた程度では倒れず、全身を粉々に粉砕するか灰になるほど焼き尽くすくらいのダメージを与えないと討伐できないのだと。
ゴーストの方は、物理攻撃によるダメージを80%カットするという特性を持っているらしい。魔法で攻撃すれば100%通るからそのほうが効果的だが、俺には使える魔法がない。出来るのは錆び付いた硬い棒で殴ることだけ。
20%分しか攻撃が効かないのならば、頑張って5倍殴るのみである。
泥臭い戦いが始まった。向こうもタフなら俺もタフ。互いに頑丈さだけが獲り得なのだ。
長く続くかと思われた死闘だったのだが、しかしそれは予想していたよりも遥かにあっさり決着がついた。
トカマル君の参戦である。
俺がある程度ダメージを与えて倒れた骸骨狼の前に、トカマル君が踊り出たのだ。
彼はまだレベルも低いし身体も小さい。戦闘に参加してもらう予定ではなかったのだが。
「危ないよトカマル君」
「大丈夫です。いただきますっ」
トカマル君はちょろちょろと素早く草の中を駆け巡りながら、倒れた骸骨狼に飛び掛かる。
いや違うか。骸骨狼の周囲でフヨフヨと蠢いていた淡い光に飛び掛かったのだ。
それをモグモグゴクリと飲み込んだ。そして、そのまま骸骨狼は立ち上がらなくなった。
生身の骨はまだまだ余裕で形を残したままなのだが、もはや少しも動き出す気配はない。
その後も、俺が1度ノックダウンしたタイミングでトカマル君がモヤモヤをパクッと吸い込む。
どうやらアレがアンデッドの霊魂らしい。
意外と余裕の勝利であった。
しかも、今日も今日とて魔石は安定の100%ドロップ。
骸骨狼とゴーストの場合だと解体の必要もなく、ただただ倒した付近に転がっている魔石だけを回収して終了。
骸骨狼の魔石×2と、ゴーストの魔石を手に入れた。
ぱっと見では状態の良さそうな魔石だ。むしろ昨日の魔石よりも良く輝いているようにすら見える。
「ふあ~ぁ」
トカマル君はお腹をポンポンと叩いて、もう眠そう。
満腹になると眠くなるというのは人間と同じようだ。
俺の頭の上へと戻ってウトウトとするトカマル君だったが、突然クワッと起き上がった。彼の美しい色彩の鱗が、今までにも増して良く輝いている。
溢れんばかりのエネルギーが鱗に充満している。なにかそんなふうに見える。
おおこれは? まさか本当に何か大きな進化を見せてくれるのだろうか?
俺の胸が高鳴る。そしてトカマル君の口が力なく開く。何かをつぶやいているようだ。
「あと鉱石とか宝石とかが食べたいです。出来れば魔素がたっぷり乗ったやつ」
おおトカマル君よ、まだ食うのか。食うというのか。
その小さなお腹にこれ以上いったいどんな要素を詰め込めば気がすむのだろう。と思いながらも俺は町へ走って戻っていた。
行き先は大屋さんの店。あそこには多種多様な品物が置いてあったから、鉱石や宝石の1つや2つも置いていたっておかしくないだろう。
買えるかどうかは別問題だが。
結果! 買える物はなかった。加工した宝石をフンダンに使った武具や魔導具なんかは売られていたが、これは高くて買えない。
鉱石、鉱石か……。
俺は鱗を明滅させたまま眠り始めたトカマル君の口先に、オンボロ剣を近づけてみる。フリフリ、フリフリ。
この剣の素材だって元々は何かの鉱石だろう。鉄鉱石なのか銀鉱石なのかは知らないが、似たようなものではあるまいか?
フリフリ フリフリ、 クンクン クンクン、
食べ…… ない。食べない。剣は食べなかった。
しかし、その刀身に引っ付いた。
引っ付いたまま鱗の光がどんどんと強まっていき、ついには光の中に全身が消えた。
そして次の瞬間――
トカマル君は人間の少年姿に変わっていた。
身体の一部には綺麗な鱗が残っているが、それ以外はほとんど人間。
お股のところはツルンとしていて何もついてない。男子の印も女子の証もついていない。ただ鱗で覆われているだけ。精霊だから人間のような性別はないのかもしれない。
「エフィルア様。おはようございます」
相も変わらず眠たそうな目。ねぼすけ感はそのままに、すっかり美くしい少年姿になってしまったトカマル君だった。
【名前】トカマル
new【種族】冥界ジュエルサラマンダー (人型)
【職能】未設定
UP 【LV】12→ 21
------------------------
UP 【H P】12→ 24
UP 【M P】19→ 30
UP 【攻撃力】13→ 24
UP 【防御力】12→ 24
UP 【魔 力】21→ 32
UP 【速 度】15→ 24
------------------------
◆スキル一覧
new【鉱物練成】
◆特性・属性・耐性
【宝玉喰い】
【魂魄奉天】
トカマル君の成長は見た目だけではなかった。
レベルは21になって、もはや俺とほとんど変わらない水準。
魔力は相変わらずの高さだが、今回は今まで成長が鈍かったHPと防御力も良く伸びていた。やはりあれだろうか? 金属っぽいものを食べたおかげで硬くなったのだろうか?
全体的として非常にバランスの良いステータスである。
全ての数値が24を超えている。
俺なんて未だにMPが8で、魔力は6なのに。
HPの51と防御力の41を除けば、他は全てトカマル君の方が高いのである。
俺など最早ただの肉壁。そう言ってしまっても差し支えはないだろう。
ただしかし、そんな成長期のトカマル君なのだが、それはそれ、今の彼にもちょっとした問題が発生していた。
俺の頭の上に登れなくなってしまっていたのだ。定位置に戻れないのだ。
俺より身長は低いし、まだまだ子供っぽい姿。それでも頭の上に登るのはムリがあるだろう。
考え込むトカマル君。そして彼の下した決断は…… ミニトカゲの姿に戻る事だった。ああ、普通に戻れるのだね、もとの姿にも。
「はぁ。やっぱりこれが落ち着きますね」
基本的なステータスはあまり変わらないみたいだし、コンパクトで嵩張らないからミニトカゲサイズになっていても良いのだけども。
きっとキミは、俺の頭の上を巣か何かだと思っているに違いない。
トカマル君は、あと霊魂だけ摂取すれば大きく進化できるような事を言っていた。いや、もしかしたら、ただただ食べたい物をリクエストしているだけかもしれないが。
「うっわ~~、エフィルア様! いっぱいいますね~」
現地に到着したトカマル君のテンションはますます上昇。
しかし、このまま荒地の中に突っ込んでいくのは危険だろう。
骨だけの姿になった魔狼がうようよしているし、半透明の人型ゴースト達は、すでにこちらに鋭い眼光を向けて集まって来ていたりする。
いったん離脱、離脱。荒地からいったん距離をとる。
爽やかな空気が充満している草原のほうへ移動する俺達。
こっちまで追いかけてくる魔物は…… 骸骨狼が2体と、ゴースト1体だ。
ギルド情報によると、骸骨狼というアンデッドモンスターは、魔狼よりも基本的なステータスは落ちているらしい。ただし1点だけ、しぶとさだけが異状進化しているという。
骨を砕いた程度では倒れず、全身を粉々に粉砕するか灰になるほど焼き尽くすくらいのダメージを与えないと討伐できないのだと。
ゴーストの方は、物理攻撃によるダメージを80%カットするという特性を持っているらしい。魔法で攻撃すれば100%通るからそのほうが効果的だが、俺には使える魔法がない。出来るのは錆び付いた硬い棒で殴ることだけ。
20%分しか攻撃が効かないのならば、頑張って5倍殴るのみである。
泥臭い戦いが始まった。向こうもタフなら俺もタフ。互いに頑丈さだけが獲り得なのだ。
長く続くかと思われた死闘だったのだが、しかしそれは予想していたよりも遥かにあっさり決着がついた。
トカマル君の参戦である。
俺がある程度ダメージを与えて倒れた骸骨狼の前に、トカマル君が踊り出たのだ。
彼はまだレベルも低いし身体も小さい。戦闘に参加してもらう予定ではなかったのだが。
「危ないよトカマル君」
「大丈夫です。いただきますっ」
トカマル君はちょろちょろと素早く草の中を駆け巡りながら、倒れた骸骨狼に飛び掛かる。
いや違うか。骸骨狼の周囲でフヨフヨと蠢いていた淡い光に飛び掛かったのだ。
それをモグモグゴクリと飲み込んだ。そして、そのまま骸骨狼は立ち上がらなくなった。
生身の骨はまだまだ余裕で形を残したままなのだが、もはや少しも動き出す気配はない。
その後も、俺が1度ノックダウンしたタイミングでトカマル君がモヤモヤをパクッと吸い込む。
どうやらアレがアンデッドの霊魂らしい。
意外と余裕の勝利であった。
しかも、今日も今日とて魔石は安定の100%ドロップ。
骸骨狼とゴーストの場合だと解体の必要もなく、ただただ倒した付近に転がっている魔石だけを回収して終了。
骸骨狼の魔石×2と、ゴーストの魔石を手に入れた。
ぱっと見では状態の良さそうな魔石だ。むしろ昨日の魔石よりも良く輝いているようにすら見える。
「ふあ~ぁ」
トカマル君はお腹をポンポンと叩いて、もう眠そう。
満腹になると眠くなるというのは人間と同じようだ。
俺の頭の上へと戻ってウトウトとするトカマル君だったが、突然クワッと起き上がった。彼の美しい色彩の鱗が、今までにも増して良く輝いている。
溢れんばかりのエネルギーが鱗に充満している。なにかそんなふうに見える。
おおこれは? まさか本当に何か大きな進化を見せてくれるのだろうか?
俺の胸が高鳴る。そしてトカマル君の口が力なく開く。何かをつぶやいているようだ。
「あと鉱石とか宝石とかが食べたいです。出来れば魔素がたっぷり乗ったやつ」
おおトカマル君よ、まだ食うのか。食うというのか。
その小さなお腹にこれ以上いったいどんな要素を詰め込めば気がすむのだろう。と思いながらも俺は町へ走って戻っていた。
行き先は大屋さんの店。あそこには多種多様な品物が置いてあったから、鉱石や宝石の1つや2つも置いていたっておかしくないだろう。
買えるかどうかは別問題だが。
結果! 買える物はなかった。加工した宝石をフンダンに使った武具や魔導具なんかは売られていたが、これは高くて買えない。
鉱石、鉱石か……。
俺は鱗を明滅させたまま眠り始めたトカマル君の口先に、オンボロ剣を近づけてみる。フリフリ、フリフリ。
この剣の素材だって元々は何かの鉱石だろう。鉄鉱石なのか銀鉱石なのかは知らないが、似たようなものではあるまいか?
フリフリ フリフリ、 クンクン クンクン、
食べ…… ない。食べない。剣は食べなかった。
しかし、その刀身に引っ付いた。
引っ付いたまま鱗の光がどんどんと強まっていき、ついには光の中に全身が消えた。
そして次の瞬間――
トカマル君は人間の少年姿に変わっていた。
身体の一部には綺麗な鱗が残っているが、それ以外はほとんど人間。
お股のところはツルンとしていて何もついてない。男子の印も女子の証もついていない。ただ鱗で覆われているだけ。精霊だから人間のような性別はないのかもしれない。
「エフィルア様。おはようございます」
相も変わらず眠たそうな目。ねぼすけ感はそのままに、すっかり美くしい少年姿になってしまったトカマル君だった。
【名前】トカマル
new【種族】冥界ジュエルサラマンダー (人型)
【職能】未設定
UP 【LV】12→ 21
------------------------
UP 【H P】12→ 24
UP 【M P】19→ 30
UP 【攻撃力】13→ 24
UP 【防御力】12→ 24
UP 【魔 力】21→ 32
UP 【速 度】15→ 24
------------------------
◆スキル一覧
new【鉱物練成】
◆特性・属性・耐性
【宝玉喰い】
【魂魄奉天】
トカマル君の成長は見た目だけではなかった。
レベルは21になって、もはや俺とほとんど変わらない水準。
魔力は相変わらずの高さだが、今回は今まで成長が鈍かったHPと防御力も良く伸びていた。やはりあれだろうか? 金属っぽいものを食べたおかげで硬くなったのだろうか?
全体的として非常にバランスの良いステータスである。
全ての数値が24を超えている。
俺なんて未だにMPが8で、魔力は6なのに。
HPの51と防御力の41を除けば、他は全てトカマル君の方が高いのである。
俺など最早ただの肉壁。そう言ってしまっても差し支えはないだろう。
ただしかし、そんな成長期のトカマル君なのだが、それはそれ、今の彼にもちょっとした問題が発生していた。
俺の頭の上に登れなくなってしまっていたのだ。定位置に戻れないのだ。
俺より身長は低いし、まだまだ子供っぽい姿。それでも頭の上に登るのはムリがあるだろう。
考え込むトカマル君。そして彼の下した決断は…… ミニトカゲの姿に戻る事だった。ああ、普通に戻れるのだね、もとの姿にも。
「はぁ。やっぱりこれが落ち着きますね」
基本的なステータスはあまり変わらないみたいだし、コンパクトで嵩張らないからミニトカゲサイズになっていても良いのだけども。
きっとキミは、俺の頭の上を巣か何かだと思っているに違いない。
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