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冒険者ギルドのカウンターへと帰ってくる。
対応に出てきてくれたのは、またあの愛想の良い娘だった。
ロアという名前らしい。
「あれ? エフィルアさん今のって? もしかしてインベントリから出したんですか?」
俺がモリモリ草20株を取り出してカウンターに置くと、彼女は少し不思議そうな顔をして受け取った。インベントリなどという魔法を使う人はめったにいないようで、それが珍しかったらしい。
「はい。それでは確かに受け取りました。依頼達成ですね。しかも2回分ですか。やりますね~」
薬草採集の依頼は初級冒険者のために有るようなもの。誰にでも出来る仕事のはずだが、彼女は少しばかり大げさに喜んでくれた。
少し話を聞いてみると、若い新人冒険者たちの場合、薬草採取を馬鹿にして真面目にやらない者も多いらしい。
特に男子は血気盛んだ。魔物の討伐依頼ばかりをやりたがるから、それで危険な目に会う事も多いのだとか。
「エフィルアさんはなんだか落ち着いてますよね。成人したてくらいの若さに見えるんですけどね」
俺はこちらの世界に来てから自分の姿を確認できていない。どうやら15才くらいに見えるらしい。
ちょうど、このあたりでの成人年齢だそうだ。
15か。若いな。
実際のところ俺の実年齢は、もっと年をくっている。
本当は少しばかり疲れて、くたびれてきたくらいの年齢。落ち着いているというよりも疲れてきているお年頃。血気なんて盛んじゃなくて当然だ。のんびり行きたいものである。
さて、とりあえずモリモリ草は引き渡し完了。これで依頼達成である。
モリモリ草の採集依頼、2セット分での報酬を受け取る。
「はい、グリノナン銀貨2000ロゼになります。お確かめください」
報酬は銀貨で支払われた。
これは大陸共通の通貨で、単位はロゼというらしい。
1ロゼの価値は……
ギルドで販売している食品やナイフの価格から換算すると、かなり大雑把に言ってしまえば1ロゼ=1円くらいの価値になりそうだ。
となると、ほぼ1日かけてやった薬草採集で2000円か。ううむ。これは厳しいかもしれない? いやまてよ、それ以外に角ウサギも3羽獲ったのだ。これも幾らかのお金になるのでは。
「角ウサギは…… 解体手数料を差し引くと1羽で250ロゼですね」
え? 250ロゼ?
そんな安いの? 250円くらいだ?
「ええと、極低級の魔物素材というのは、どこへ行っても供給過多なんです。角のほうも武具として使えるほどではありませんし。特殊な状況を除けばそれくらいの価格になってしまいます」
なんという事でしょう。本当に250円のようです。
まあ考えてみればあの角だって、俺の身体に直撃してもたいしたダメージにはならなかったのだ。肉も食用になるとはいえ、人気のある食材ではないようだ。
「ああそうだ、もし魔物の体内から宝石のようなものが出てきたら多少は値段が上がりますよ。魔石って言います。低級モンスターだと確立は高くないのであまり気にするほどでもありませんけど、質の良い石が出てきたらちょっとしたお小遣いになります」
なるほどね。とりあえず今回はウサギ×3は売らないことにした。自分用の晩御飯といたします。俺ぐらいの貧乏駆け出し冒険者にとっては、良い食料にはなるらしい。
「エフィルアさん。それでも魔物退治は町とギルドへの貢献としては認められますし、経験値稼ぎにもなりますからね。がんばってくださいっ」
ギルドに登録したとき、俺は1枚の小さなカードを受け取っていた。ギルドカードという物だ。これにはどんな魔物と戦って倒したかという情報が自動的に記録されていくらしい。お金にはならないが貢献度は上がっていくのだという。
それから、契約精霊となったトカマル君の登録もスムーズに済ます事ができ、俺はカウンターを後にする。
「あ、ちょっと待ってくださいエフィルアさん。ギルドマスターがお呼びなんです。一通りの手続きが終わったら上に来るようにって」
受付嬢さんは軽い笑顔を見せながら、ツンツンと2階の部屋を指差して、それからバイバイ的な感じで手を振った。
なんとなく、数人の男たちから睨まれているような気がした。
いや、明らかに睨まれてるか。その中のひとりには見覚えがあった……
あれは聖女様らしき女と一緒にいた男だな。チンピラ系美男子で、ギャオとか呼ばれていたはずだ。
彼は俺がいなくなった後の受付に歩いていって、意気揚々と狩りの獲物をカウンターに乗せた。
俺のとなりのカウンターは、さっきからずっと空いていたのだから、わざわざ待っていたのは明らかだ。頑張れ若者。
つまらない事を考えながら階段を昇ると、ギルドマスターの部屋らしき場所があった。重厚な木の扉が俺を迎える。
対応に出てきてくれたのは、またあの愛想の良い娘だった。
ロアという名前らしい。
「あれ? エフィルアさん今のって? もしかしてインベントリから出したんですか?」
俺がモリモリ草20株を取り出してカウンターに置くと、彼女は少し不思議そうな顔をして受け取った。インベントリなどという魔法を使う人はめったにいないようで、それが珍しかったらしい。
「はい。それでは確かに受け取りました。依頼達成ですね。しかも2回分ですか。やりますね~」
薬草採集の依頼は初級冒険者のために有るようなもの。誰にでも出来る仕事のはずだが、彼女は少しばかり大げさに喜んでくれた。
少し話を聞いてみると、若い新人冒険者たちの場合、薬草採取を馬鹿にして真面目にやらない者も多いらしい。
特に男子は血気盛んだ。魔物の討伐依頼ばかりをやりたがるから、それで危険な目に会う事も多いのだとか。
「エフィルアさんはなんだか落ち着いてますよね。成人したてくらいの若さに見えるんですけどね」
俺はこちらの世界に来てから自分の姿を確認できていない。どうやら15才くらいに見えるらしい。
ちょうど、このあたりでの成人年齢だそうだ。
15か。若いな。
実際のところ俺の実年齢は、もっと年をくっている。
本当は少しばかり疲れて、くたびれてきたくらいの年齢。落ち着いているというよりも疲れてきているお年頃。血気なんて盛んじゃなくて当然だ。のんびり行きたいものである。
さて、とりあえずモリモリ草は引き渡し完了。これで依頼達成である。
モリモリ草の採集依頼、2セット分での報酬を受け取る。
「はい、グリノナン銀貨2000ロゼになります。お確かめください」
報酬は銀貨で支払われた。
これは大陸共通の通貨で、単位はロゼというらしい。
1ロゼの価値は……
ギルドで販売している食品やナイフの価格から換算すると、かなり大雑把に言ってしまえば1ロゼ=1円くらいの価値になりそうだ。
となると、ほぼ1日かけてやった薬草採集で2000円か。ううむ。これは厳しいかもしれない? いやまてよ、それ以外に角ウサギも3羽獲ったのだ。これも幾らかのお金になるのでは。
「角ウサギは…… 解体手数料を差し引くと1羽で250ロゼですね」
え? 250ロゼ?
そんな安いの? 250円くらいだ?
「ええと、極低級の魔物素材というのは、どこへ行っても供給過多なんです。角のほうも武具として使えるほどではありませんし。特殊な状況を除けばそれくらいの価格になってしまいます」
なんという事でしょう。本当に250円のようです。
まあ考えてみればあの角だって、俺の身体に直撃してもたいしたダメージにはならなかったのだ。肉も食用になるとはいえ、人気のある食材ではないようだ。
「ああそうだ、もし魔物の体内から宝石のようなものが出てきたら多少は値段が上がりますよ。魔石って言います。低級モンスターだと確立は高くないのであまり気にするほどでもありませんけど、質の良い石が出てきたらちょっとしたお小遣いになります」
なるほどね。とりあえず今回はウサギ×3は売らないことにした。自分用の晩御飯といたします。俺ぐらいの貧乏駆け出し冒険者にとっては、良い食料にはなるらしい。
「エフィルアさん。それでも魔物退治は町とギルドへの貢献としては認められますし、経験値稼ぎにもなりますからね。がんばってくださいっ」
ギルドに登録したとき、俺は1枚の小さなカードを受け取っていた。ギルドカードという物だ。これにはどんな魔物と戦って倒したかという情報が自動的に記録されていくらしい。お金にはならないが貢献度は上がっていくのだという。
それから、契約精霊となったトカマル君の登録もスムーズに済ます事ができ、俺はカウンターを後にする。
「あ、ちょっと待ってくださいエフィルアさん。ギルドマスターがお呼びなんです。一通りの手続きが終わったら上に来るようにって」
受付嬢さんは軽い笑顔を見せながら、ツンツンと2階の部屋を指差して、それからバイバイ的な感じで手を振った。
なんとなく、数人の男たちから睨まれているような気がした。
いや、明らかに睨まれてるか。その中のひとりには見覚えがあった……
あれは聖女様らしき女と一緒にいた男だな。チンピラ系美男子で、ギャオとか呼ばれていたはずだ。
彼は俺がいなくなった後の受付に歩いていって、意気揚々と狩りの獲物をカウンターに乗せた。
俺のとなりのカウンターは、さっきからずっと空いていたのだから、わざわざ待っていたのは明らかだ。頑張れ若者。
つまらない事を考えながら階段を昇ると、ギルドマスターの部屋らしき場所があった。重厚な木の扉が俺を迎える。
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